SFファンタジー。元子役出身の映画監督・小松亘氏は週刊誌のインタビューで、かつて自分が主人公として出演したドラマ「たんぽぽ団地の秘密」のロケ地だった「つぐみ台三丁目団地」の取り壊しと、団地に最後の一花を咲かせるために「たんぽぽプロジェクト」なるものが立ち上がったことを知る。そしてその代表者は初恋の相手、成瀬由美子だった・・・。少年ドラマ、ガリ版、片思い・・・昭和の子どもたちの人生は、やり直せるのか、視聴率低迷のために不本意に終わらされたドラマの41年後を描く続編の制作を企画する「僕らの団地がなくなる前に、映画を撮ろう」運命と奇跡のクランクイン、あの頃を信じる思いが、奇跡を起こす。
仕掛けが複雑でタイムスリップなど設定はご都合主義だし、SFは矛盾だらけで論理的でないためいつものように重松ワールードはあまり楽しめなかった。今の小学生の子のいじめの複雑さに吃驚、思春期の子や子育て中の親目線が面白かった。「正面からこっちに歩いてこられると、ずうっと向き合っている格好になって、待ち受けるほうは間が持たない。いまさら気づかないふりをして横をむくわけにもいかないし」(p.71)、など心理の細やかな描写等は流石。
2015年12月新潮社刊
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