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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

塔山郁(とうやま・かおる)著『毒殺魔の教室』

2009-03-15 | た行
2009年第7回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞作
写真に掛けられたモザイクが一つずつ剥がされる様に真実に近づいていく
犯罪サスペンス。
那由多小学校児童毒殺事件・・・
男子児童が、クラスメイトの男子児童を教室内で毒殺し、加害児童は
三日後に同じ毒により服毒自殺を遂げて動機がはっきりとしないままに
事件は幕を閉じた。
30年前に「6年6組」で起きたこの児童毒殺事件の真相を、ある人物が当時の
事件関係者たちを訪ね歩き始める。
当時のクラスメイトの証言や手紙・事件を題材にした小説などを通してあぶり出していくというストーリー展開です。
証言者によって、まったく異なった印象をもつこの事件。
取材者が情報を見聞きするたびに、事件は思いもよらない面を現します。
事件の詳細は、微妙にズレている様子だ。
やがて、隠されていた悪意の存在が露わになり始め、思いもよらない事実と
驚きの真実が明かされていく過程はぐいぐい引き込まれて一気に読めました。
女性心理が細かく書かれていてリアル感もあり面白く読めました。
『世界のどこを探したって、女の気持ちがわかる男なんていやしないわよ。 ・・・女の話を聞かない男と聞く男。女の話を聞かない男は問題外よ。
でも、女から聞いた話しを覚えている男と、覚えていない男の種類しかいないのよ。・・・自分の話をちゃんと聞いてくれるパートナーを探しなさい。
そうすればもっと充実した人生を送れるわ』(349ページ)
2009年2月 宝島社 刊

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津川晋一著「月給12万のヒーロー」  

2009-03-06 | た行
副題「がんばれ!!侍ベアーズー」 ヒューマンドラマ
ゴジラ松井やイチロー以外に野球に夢を諦めない奴らがいた。
2005年、アメリカの独立リーグに誕生した日本人のみのプロ野球チーム「サムライ・ベアーズ」。
わずか1シーズン限りで消滅することになったチームの奮闘記。
人生にいろんな生き方があっていいのではないかと思わせてくれる。
夢を「捨てられない」人間たちの、ほろ苦くて、熱い物語に思わず貰い泣きしました。
夢は絶対に諦めない!」自己の心を奮い立たせてくれる感動の本です
夢を『かなえる』物語ではない。夢を『捨てられない』ことを描いた、
ほろ苦くて、カッコ悪くて、熱い物語の記録です。

2006年   竹書房 刊
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戸梶圭太著  「もっとも虚しい仕事」

2009-03-02 | た行
売れっ子俳優の自宅に押し込み強盗計画がきっかけで、過去の
仕事仲間の不始末に気付いた裏社会の一匹狼ギャング「鉤崎」は、
破滅の憂いを無くす為一円にもならない虚しい仕事とわかりつつ
長い夜の街を駈けずり回ることに。荒唐無稽なギャングライフの物語。
2006年 光文社 刊 
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徳永健生 著「たまゆらの海 火縄銃悲歌 」

2009-02-27 | た行
種子島出身の著者が、鉄砲伝来以後鉄砲がその後の時代を大きく変えて行った
華やかな歴史の影に、美濃の出身の島の刀鍛冶・八坂金兵衛と娘・わかさの哀しい運命あった。
天文12(1543)年種子島に漂着した明船のポルトガル人からの鉄砲伝来を
描いた感動歴史小説。
西洋文明の受容と新たな創造、領主種子島時尭から模作を命じられてから
2年の歳月を経て後国産火縄銃「種子島」が完成。
その影には愛娘を異国に手放すという悲劇を必要とした。
愛と苦悩のドラマを涙なしには読めませんでした。
2006年 リブリオ出版 刊


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日明恩(たちもり・めぐみ)著『ギフト』

2009-02-05 | た行
『バタフライ・エフェクト=南半球のどこかで蝶が羽ばたけば、北半球のどこかでハリケーンがおこる。
・・・小さなきっかけが思わぬ結果をもたらす。』
怨みではなく、伝えたい思いが強くあるためにこの世に残る幽霊たちのさ迷える死者を見ることができ声も聞こえる能力を持つ中学生の明生と、追跡中に犯人を死なせてしまった過去を持ちながら刑事の習性が忘れられない元刑事の須賀原。
そんな2人がレンタルビデオショップで出会うところから始まります。
明生に触れることで死者とコミュニケーションがとれるようになった須賀原が遭遇するのは、交差点で交通事故死した老婦人、虐待されて殺された犬、19年間もさまよっている7歳の少女、狂言自殺のはてに本当に死んでしまった自己中女など、さまざまな思いを抱える死者たち。
2人が彼らの死の謎を解き明かし、魂を救おうとする物語です。
それは、中学生の明生と須賀原それぞれの成長と再生の物語でもあります。
望んでもいないのに授けられた能力に苦悩し続けてきた明生は、須賀原や死者たちと触れ合うことによって自分の能力と向き合い、自己を肯定するようになる。
また過去の罪悪感から生きる喜びを封印し隠遁生活のような生き方の須賀原は、
明生によって、今の自分を縛る過去のあの事件に立ち向かうことになる・・・。
『自分自身を騙し続けているうちは、他人など騙せない・・・願うことが、望むことがあるならばこそ、実現するために、他の誰でもない自分自身の能力や適性を冷静に見据え、そのうえで考えて行動するしかない。
・・・できないことがあると判るからこそ、できることが何かも判るはずだ。』(本分より)
映画「シックスセンス」をキーワードに哀しくも優しいストーリーにミステリーを絡ませた日本版ホラーファンタジー。
罪と罰、救いと再生、運命に立ち向かう勇気・・・最後まで読むと
表題の「ギフト」の意味が読めてくる。

2008年6月 双葉社刊・1680円
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高橋直樹著「天皇の刺客」

2009-01-26 | た行
歴史小説。日本三大仇討ちの一つ曾我兄弟の仇討ちは、「後鳥羽天皇の命を
受けた源頼朝暗殺のクーデターだった」と仮説の上にすすめられる歴史小説。
兄十郎22歳、弟五郎20歳。歌舞伎などで悲劇として語り継がれる曾我兄弟の
討ち入りには、苦節17年もの壮絶な裏策略があったのだ。
その関係図式は曽我兄弟→京の小次郎(異母兄弟・高倉家人)→源範頼
(頼朝の弟・小次郎の主人)→高倉範季(範頼の養父・公家・天皇の養父)→
後鳥羽天皇。
せつない仇討ちに秘められた歴史ロマン。
2006年 文藝春秋 刊
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天童 荒太著「悼む人」

2009-01-22 | た行
今年度直木賞受賞作。心の作家天童荒太の人間そのものの愛を丁寧に、丁寧に、祈るように綴られた7年という歳月を掛け向き合った渾身の物語です。主人公は死者を悼む放浪の旅を続ける男坂築静人。
事件、事故、自殺、災害・・・理由を問わず、人の死んだ場所を訪れては死者の話しを聞いて回る、故人を知る人に「その人は、誰に愛されたのでしょうか。
誰を愛していたのでしょう。どんなことをして、人に感謝されたことがあったでしょうか」と訪ね歩き故人を忘れないよう胸に刻み込み、死者を「悼む人」の旅路を行く坂築静人を縦糸に、彼の帰りを待つ家族・母親坂築巡子のがん闘病生活を
横糸に物語は彼と関わる人のフリーライターの男蒔野や、夫殺しの刑を終えて静人と同行する奈義倖世の視点で淡々と進んでいきます。
何故全国を回り悼む旅を続けているのか何処へたどり着こうとしているのか?間に合うのか母の死の前に会うことが・・・とか興味を持って読み続けました。また末期がん患者の最期を迎える心理や感情、環境に至るまで仔細に書かれていて、特に死を迎える数日の描写がリアルでした。興味を持ったのは自ら妻に殺されることを願って殺された男の言葉
『人間の生きる理由は、愛も夢も関係ない。細胞の貧欲な生命力だ。・・・欲しいものは奪うか、奪われないように先に攻撃するか、・・・生をもっともらしく語り死を飾る。・・・自分の死が無意味だということの真実が怖いのだ。死とは細胞の再生が尽きることだ。』(本文より) と
これに対して作者は静人の物語を通じてそうじゃないことを解く。
『ほとんどの人が、自分が感謝された経験でなく、みずからの感謝の思いを口にした。今まで生きてこられたこと、いまここにいられること、これまで支えてくれた人たちへ・・・ありがとうございましたと』(本文より)
『誰かの死を、忘れても仕方がないものにしてしまうなら、結局は、あらゆる人の死が、忘れられても仕方のないことになってしまうんじゃないか、と』
『誰かのためににね、その人のためなら、自分が少しくらい損をしてもいいって思えたら・・・それはもう、愛でいいのよ』(本文より)
人生を生き方を考えさせる物語でした。
読み終わって自分に問う『どんな人を愛し、どんな人に愛され、どんなことをして相手から感謝されてきたか』を・・・。 
  2008年11月文藝春秋刊
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高村 薫著「地を這う虫 」

2009-01-17 | た行
めざすは密やかな達成感、やむにやまれぬ事情から離職したが社会を底辺から
見上げる愚直な主人公(元刑事たち)の姿に哀愁が漂う。
克明な観察メモから連続空き巣事件の真相に迫る守衛の奮戦記「地を這う虫 」の
表題作ほか、元刑事で今は代議士のお抱え運転手の「父が来た道」、
元刑事のサラ金の取り立て屋の物語「巡り逢う人々」、
元警視庁で今は警備会社勤務の男が主人公の「愁訴の花」。
日陰にありながら矜持を保ち続ける男たちの、敗れざる物語です。
どれも読み終わった後に深い余韻が残る優れた短編です。

1999 年 文春文庫刊
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高杉良 著「ザ・外資 」

2008-12-12 | た行
日本経済を蹂躙(じゅうりん)する強大な力の正体!
面白い経済小説です。巻末に、「この作品はフィクションです。万一、現実の事件
ないし状態に類似することがあったとしても、まったくの偶然に過ぎません。」と断り書きがあるが、破綻した東長銀を舞台に大統合した三行、日本産業銀行、朝日中央BK芙蓉BKそして住之江BK、光陵BK東邦水産、セントラル自動車、外資系グレ-ス証券潰れた山三証券、破綻した流通大手「そうごう」、チュリッヒに本部を置くスイス・ファーストBK等々、新聞によく似た社名の記事が載ったことで記憶にあり容易に実際に見当がつく名前だ。横文字の経済用語の意味が難しい難点があるが日本の金融ビックバ-ンや公的資金注入の裏側、外資系企業等に喰物にされる日本経済の実態が明らかにされ、日本政府の無能さには怒りを忘れて情けなくなる。

2002年講談社刊 講談社文庫
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高杉 良著「ザ・ゼネコン 」

2008-12-11 | た行
小説の舞台は1987年、バブル前夜。
大洋銀行企画本部調査役の山本泰世は、準大手ゼネコン東和建設への出向を命ぜられる。
東和建設は,社長和田征一郎のワンマン企業で次期総理大臣呼び声が高い
竹*銘柄企業といわれていた。
政管との癒着、消えぬ談合体質、闇社会との関わり、日本の総労働人口10%を
抱える建設業界の暗部に鋭く迫ったビジネス小説。
日本の政治と経済の暗部に切り込み、組織と個人のあり方にも問題提起。
実際の企業、人、出来事は架空の名前に全てなっているがなるほどあの事かと
思い当る内容になっている。
2003年 ダイアモンド社 刊    角川文庫


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辻原 登著「ジャスミン 」

2008-11-13 | た行
中国古代史を扱った小説が多いがこの本は天安門事件後の中国と日本を舞台に書かれている。
日本人の脇彬彦は3歳の時、父が中国に渡り消息不明になったと聞かされていたが
中国で生きているのではという疑問を持ち、父が航跡を辿っり上海までを
神戸から船で行くことにして旅立つ。
上海で父の友人だった「謝寒」という映画監督を尋ねそこで「李杏」と言う
女性と恋に落ちる。
中国の公安や反政府運動の組織や華僑が複雑に関係する中、阪神大震災を
はさんで二人の恋の行方は、父の消息は・・・
国家の政治と経済、歴史に翻弄された人間の生きる姿が描かれた物語です。
2004年 文藝春秋刊
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天童荒太著「永遠の仔」

2008-10-30 | た行
著者は、1960年愛媛生まれ。1996年「家族狩り」で第9回山本周五郎賞受賞。
2000年度「このミステリーが凄い」第1位作品。
17年前一人の12歳の少女「久坂優希」と2人の少年は、四国の霊峰の頂上に登り
「神に清められた自分達は救われる」と信じ下山途中同行していた優希の父親を
何かに憑れたようにして殺害する。
17年後、運命に導かれたように看護婦、弁護士、刑事として再会を果す3人。
その直後、優希が秘密にしていた過去を探ろうとする弟の動きと、周囲に起き
た殺人事件によって、優希のいままでの平穏だった日々は終りを告げて
最後の審判への序曲が始った。
作者は、後半部分で主人公優希を通じて「私達は、辛い出来事がある
たびに、秘密や嘘ばかりで応じたためにさらに悲しい結果をまねいてしまったように思います。
真実を明かす事が周囲をつらくさせる場合にも、秘密や嘘に逃げないこと・・・。
真実を明かしたことで起るいっそうの悲劇や悪でさえも受け止めてゆこうとする
態度こそが成長と呼ばれるものに結びつくかも知れません。」と語る。
17年前「聖なる事件」その霧に包まれた霊峰に潜んだ真実とは?」
過去の思い出とと現代が交錯するように進む展開にワクワクミステリー。
2000年 幻冬社 刊
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高田 侑著「裂けた瞳」

2008-10-26 | た行
著者は、1965年群馬県生まれ。
この作品(「奇跡の夜」改題)2003年第4回ホラーサスペンス大賞受賞作。
過去の経験や他人のみたことを脳にテレパシーとして感じることが出来る
特異体質の主人公「神野亮司」は幼い頃から癲癇体質の人間として通院生活を
送っていたが、最近家の近所にカラスの死骸が庭に放り込まるかたちの
悪戯が頻発するようになる。
やがて、モノクロの幻視幻覚を見た発作のあとに取引先の嶋技研の社長が
プレス機に頭をはさまれた姿を発見する・・・。
じんわりと怖いホラー小説でした。
2004年 幻冬社刊
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高村 薫 著「李 歐 」

2008-10-05 | た行
美貌の殺し屋中国人「李歐」と22歳の平凡なアルバイト学生「吉田一彰」が
出会いやがて、2人は互いにはるかに広がる大陸に夢を持ちて再会を誓ったが・・・・
15年の歳月が2人の再会を阻む。
中国、インドネシア、台湾、香港、シンガポ-ル等壮大な地域にまたがる物語。
丁寧な心理描写、精密機械製造工場等の取材を通じてリアリティ-ある話運び、
中国、香港マフイァ、ヤクザ、公安警察、CIA等がからみ
ハ-ドボイルドな小説です。
この作品は「わが手に拳銃を」を下敷きにしてあらたに書き下ろされた。
1999年 講談社刊
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日明 恩 著「 そして,警官は奔る」

2008-10-01 | た行
「それでも、警官は微笑う」の続編。
鬼畜こと武本正純が国際組織犯罪特別捜査隊から警視庁蒲田署刑事課の
強行犯係に移動してきた。今回のテーマは児童買春、児童買春等目的人身売買、
監禁、外国人不法滞在、無国籍児童、棄子問題・・・警察小説の数ある中で
実直で無骨な武本刑事の活躍するこのシリーズはリアル感ある
ストーリーで今回も警察官とは犯罪とは何かを問う内容になっており考えさせる
展開です。元同僚の潮崎も再登場で武本刑事の活躍が楽しめる。
2004年 講談社刊

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