『武揚伝』『くろふね』に続く、幕臣三部作。開国か戦争か。いち早く「黒船来航」を予見、未曽有の国難に立ち向かった伊豆韮山代官・江川太郎左衛門英龍(1801-1855)。領地の伊豆韮山では徹底して質素・倹約を貫き、有事には蜀江錦の野袴に陣羽織姿で銃士達を率い、英国船と交渉、それを退けた。
「黒船来航」をはるか前から予見。自ら蘭学、西洋砲術を学び、海防強化を訴え、反射炉造築、江戸湾の台場築城を指揮した。誰よりも早く、誰よりも遠くまで時代を見据え、近代日本の礎となった希有の名代官の一代記。黒船ショックをよく目にする維新のヒーロー達とはまた違った観点から丹念に描いている感動物語でした。
2018年1月毎日新聞出版刊