メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

福音館古典童話シリーズ 12 宝さがしの子どもたち E・ネズビット/作 福音館書店

2024-03-29 10:07:13 | 
1974年初版 1978年 第6刷 吉田新一/訳 スーザン・アインツィヒ/画

「作家別」カテゴリー内に追加しました



タイトルからして、スティーブンソンが書くような
島に行った海賊たちの話かと思っていたら全然違った

以前も読んだ『砂の妖精』の作者で
子ども目線で書くのがほんとうに上手いなと思う

父親を助けたいという動機が純粋でブレないから
巻き込まれる大人も怒れない

もっと言えば、なんでもお金で回るような世界を作ったのは大人で
新聞の広告や、お酒を売る商売なども
そうした大人たちが考えた商売だってことを
子どもたちが体現してくれていると思った

文章内である通り、これを書いているのが誰かを当てる楽しみもある

最初は、6人それぞれで書いているかと思ったけれども
途中から長男が書いていることが分かる
話の前後からも分かるし、やたらと自分だけ褒め上げているからw



【内容抜粋メモ】

登場人物
バスタブル家
父 ディック
母 亡
長女 ドラ
長男 オズワルド
ディッキー
アリス 双子 10歳
ノエル 双子 10歳 詩人
ホレス・オクテイビアス 通称H・O 8歳
女中エライザ
愛犬ピンチャー

アルバート・モリソン 隣りの家の少年 父は亡い
おじさん アルバートの叔父 売れない小説家









●財産をつくる相談
由緒あるバスタブル家のきょうだいの古い家は、ロンドンのルイシャム通りにある
母が亡くなり、父が病気中、いっしょに仕事をしていた人が
スペインに行ってしまい財産がなくなったため
子どもたちは学校に行くお金もない状態

なんとか父を助けようと、きょうだいで案を出し合い、1つずつ試してみることになる








●宝を掘る
ドラの提案で、庭に穴を掘り始める
隣りのアルバートも仲間に入れるが、臆病でトンネルに足から入ると
土が崩れて埋まり、叔父が掘りだす

穴から半クラウン銀貨が出てきて驚き、1人4ペンスずつに分ける



●探偵になる
シャーロック・ホームズを愛読しているきょうだいは、探偵になってみたいと思う
隣りの家族は避暑でスカーバラへ行っているはずなのに、窓に明かりを見たアリス

にせ金作りをしているに違いないと思い
夜中によろい戸の穴から覗くと
その家の娘2人が飲食しているのを見て大きな音を立ててしまう

アルバートのおじさんから紳士じゃないと叱られて謝ると

婦人:
私たちがスカーバラなんかに行かないで、家にいるって知ってもらうために
これからよろい戸を開けることにするわ



●「がんばってね!」
詩人のノエルは自作の詩を売るという案を出し
数編を直接新聞社に持っていく

尊敬するキプリングの『ジャングル・ブック』の中の言葉
「がんばってね!」と言って見送る
(実際に読んだけど「いい狩りを」のことかな?

汽車の中で詩人のレズリー夫人に会い、少年についてうたった詩を聞かせてくれて
シリング銀貨2枚と名詞をくれる








●詩人と編集長
『デイリー・レコーダー』紙の編集長に会い、事情を説明すると

編集長:
これは君の最初の1ギニーだ
また10年ぐらいしたら、もっとたくさん詩を持ってきてくれたまえ

有名な人を知らないかと聞かれて、頑固な保護貿易論者のトテナム卿が
毎日午後3時にブラックヒースの原を散歩して
独り言を言ってから、紙製のえりのカラーをつけかえる話をする



●ノエルのお姫さま
グリニッジ公園でごっこ遊びをしていると、フシギな少女に会い
ノエルが王子だと自己紹介すると、「私はお姫さまです」と答える







ものすごい長い名前があり、ビクトリア女王の5番目のいとこだと言い
感激したノエルは即座に結婚式を挙げる

厳しい家庭教師が2人来て「殿下、すぐ家の中へお入りなさい!」と命令
お姫さま:ふつうの子がいいの! と泣き叫んで連れて行かれる

ドラ:まさかこんな所に本当のお姫さまがいるなんて思わなかった!



●山賊になる
手持ちのお金は、ガイ・フォークスのお祭りの花火でほぼなくなる
H・Oの提案で山賊になって村人を襲うことにする

通りかかったのは、風邪をひいたアルバート
彼をしょっぴいて、地下牢という名の子ども部屋で丁寧にもてなしたのに泣き叫ぶ







H・Oが指を針で刺して流した血で身代金を要求する手紙を書いて
隣りのモリソン家に持って行くと、おじさんが8ペンス払う

おじさん:君たちが楽しく遊んでいるのを見るのが大好きだ



●新聞の編集をする
アルバートのおじさんは、新聞をつくってみてはどうかと提案
名前を『ルイシャム・レコーダー』として、ドラが編集長をつとめ
きょうだいから原稿を集めるが、みな勝手に書くのでまとまらない

「ネコの学校(教養記事)」
生徒は学びたくないことは学ばなくてもよいことにします
先生を置く代わりに、ときどきネコを先生に雇います
ネコの先生:みんないっしょに、ごろごろごろ(素晴らしいな!

子どもって、教えられなくても覚えるものです アリス

新聞は1部1シリング
おじさんが2シリングくれるが、全然足りない



●「めぐさん」
ディッキーが新聞記事にある「個人金融 銀行支店長ローゼンバウム」を読み
お金を貸してもらおうと提案

「おめぐみぶかい人」略称「めぐさん」wを訪ねて事情を話す







めぐさん:
広告にはペテンが多いのじゃ
今日はあいにく100ポンドの持ちあわせがないが、1ポンドは貸してあげられる
21歳になったら返すんじゃよ と言って、15シリングと香水の瓶をくれる

父の名詞を出したため、ローゼンバウム氏から手紙が届く

父:
お前たちの遊びにとやかく言うのは嫌いだ
けれども、仕事についてはお父さんに相談するんだよ
みんなをこうして放っておいているのがとても辛いんだ



●トテナム卿
オズワルドは、困っている老紳士を助けると
すごい大金持ちで、少年を跡継ぎにするはずと思い
愛犬ピンチャーにテトナム卿を襲わせて、助けるという芝居をする

トテナム卿はお礼に半ポンドくれるが、ピンチャーが嬉しそうになついているのを見てバレるw
とても後悔して謝ると、子どもたちを紳士淑女扱いしてくれる



●カスチリアン・アモロソ
ディッキーの提案で新聞に載っている週に2ポンド儲けられる
「見本と説明書」を取り寄せてみると、シェリー酒の瓶が1本入っている

名前はカスチリアン・アモロソ
周りの人に試飲させて、1ダース売れるごとに2シリング儲かる

子どもたちは味見してみると辛すぎて、砂糖をたくさん入れる(w
請求書を持ってきた肉屋さんにあげると、同情して

肉屋:
シェリーは好物ですが、これはわしの口に合いません
けど、おじに半ダースほどクリスマスプレゼントしましょうかな

孤児院への寄付を頼みに来た女性にもすすめると怒りだす
婦人:なんてイタズラな子なの! お母さんに手紙でいいつけますからね
アリス:お母さんに手紙が来ると、お父さんが寂しがりますから と泣き出す
事情を知った婦人は素直に謝る

謝らなければいけない時に、ちゃんとごめんなさいと言える人は尊敬します

別の教区の牧師さんが教会の日曜学校に誘い
日曜は父と過ごす大切な時間だから断るついでにお酒を持っていく







マロウ牧師:
イギリスの家庭の半分は、お酒のせいで不幸な子どもたちと
惨めな親であふれているのを知らないのかね?

ドラ:
私たちがお説教をしても誰も聞いてくれない
マロウさんのように、本から写して説教をこしらえてもしょうがないんです

ドラはきょうだいから「いつも大人ぶって」と責められて、とうとう泣き出す

ドラ:
お母さんが亡くなる時、“どうか他の子たちの面倒をみてやってね”ておっしゃったから
一生懸命やってるのに

きょうだいはドラを許す
牧師の女中ジェインが来て、父に手紙を渡す

父は砂糖入りのまずいシェリーに大笑いする
ずっと暗かった父を陽気にできて良かったと思う子どもたち



●オズワルドのりっぱさ

ディッキー:
毎年、何万本のクスリが売れている
僕らのクスリを発明したら売れるだろう
(たしかに製薬会社はぼろ儲けしてるよね

「バスタブルのかぜの特効薬」をつくるのに、ノエルが風邪をひき
いろんな材料から煎じ薬をつくる
(ミョウバンとか甘草とか、実際成分に入ってそうな薬草を使うのがスゴイ

アリスはノエルが心配でアルバートのおじさんに電報を打つと
すぐに来てくれる

おじさん:
元気な体は、君たちの一番たいせつな持ち物だ
それをわざわざ壊すようなバカなことをしちゃいけない


アリスは電報を打つのにお金が足りずに、おもちゃの6ペンス銅貨を出したと告白
オズワルドは妹が警察に捕まる前に、用意しなきゃと焦り
偶然会ったレズリー夫人がノエルのお見舞いにくれた花を売って、電報局に返すと
「正直は最良の策」と褒められて、教会の献金箱に入れることになる



●どろぼうとこそどろ
玄関の軒に積もった雪を、集金のおじさんの頭に落とした罰で
全員、寝室に閉じこめられる

子どもたちだけで留守番をしていて、どろぼうに入られたらどうする?と話していたら
ほんとうに階下から物音がして驚く

たぶんネコだろうと言って、おもちゃのピストルを持っていき
「降参しろ!」と部屋に入ると、本当にどろぼうがいて驚く







手にしていたモノを落として、ポケットにも大したモノもなく
どろぼうに同情すると、どろぼうは子どもたちの勇気を褒める

以前は海賊もしていたが、すっかり落ちぶれたと嘆いていると
またもや台所で音がしていくと、こそどろがいる

こそどろ:
あっしを逃がしておくんなせえ
うちにゃあ坊ちゃんと同じくれえのガキどもがおりますんで

こそどろは家に何もないと分かると、窓から逃げてしまう
父が帰り、どろぼうさんは大学時代の親友フォークス氏と分かる

その後、フォークス氏と息子のデニー、娘デイジーとも仲良くなる



●うらないづえ
久しぶりの客が来るから、じゅうたんをはいで掃除してたら3ペンス銅貨が出て来る

子どもたちがケンカになると、ノエルが詩をつくる

ケンカは身の毒 腹の毒
人生のコップが苦くなる
入った苦みを抜くのには
長い時間がかかります


(ジョンも“ケンカするほど人生は長くない”って歌ったよね

アリスは占い杖を試そうと古い傘を持って家中を歩き回る
ダウジングのように傘が落ちた所を探すと、偶然半ポンド金貨を見つける

子どもたちは、豪勢なごちそうを食べようと、買い出しに行き
引き出しに入れて、指一本触れない約束をする



●「見よ、貧しいインデアンを!」
父が母の叔父でインデアンのおじさんが来ると言い
「見よ、貧しいインデアンを!」という言葉から
きっと貧しいのだと決めつける子どもたち

エライザの料理があまりに不味かったので、子どもたちのご馳走に招待してあげると
「こんなに楽しい食事はしたことがない」と言って喜ぶ

持ち金のうち、1シリング3ペンスをあげると、3ペンス銀貨だけを受け取り
次は自分がご馳走させてほしいと約束する



●宝さがしの最後

“みなさん、ときおり、こんな日がありませんか
 これから死ぬまでこういう退屈な日をずっと過ごすよりしょうがないんだと思う日が
 そういう日は雨降りの日が多いですね
 でも、意外なことが起こらないとは限らないんです”


貧しいインデアンのおじさんが訪ねてきて
“インドに住むイギリス人”だと分かる

日本の絵が書いてある本など、珍しいプレゼントを山ほどくれて
クリスマスパーティーに招待してくれる







ブラックヒースにある大きな家に住む大金持ちで、父の仕事の協力者だと分かり
またクリスマスプレゼントをたくさんもらい
一緒にこの家に住んで欲しいと提案する

ゲストに、これまで関わったレズリー夫人、トテナム卿
アルバートのおじさん、フォークス氏と子どもたちを呼び楽しい時間を過ごす

その後、家族は引っ越し、オズワルドらはまた学校に通い始める




訳者あとがき

ネズビットの略歴は前出

バスタブル・ブックス3冊
『宝さがしの子どもたち』
『よい子連盟』
『新・宝さがしの子どもたち』
短編集『オズワルド・バスタブルとその他』内の4編

5人の子どもの物語
『5人の子どもたちとサミアド』(砂の妖精
『不死鳥とじゅうたん』
『お守り物語』

アーデン・ブックス2冊
『アーデンの家』
『ハーディングの幸運』

『鉄道の子どもたち』(若草の祈り
『まほうの城』

短編集4冊
『竜の本』
『九つのありそうもない話』
『まほうの世界』

『まほうの町』
『すばらしい庭』
『ぬれたまほう』
『わたしたち五人 とマドレーヌ』
『きみのいきたいところ』学研


ボヘミアン・タイプの女性で、断髪、タバコをふかし、強いジンを飲み
因襲的な良俗に反抗してみせた

バスタブル家と同じ6人きょうだい
家事、育児、病人の世話などしながら書いていた

兄アルフレッドが亡くなり、兄ヘンリーはオーストラリアに行ったきり帰らない
息子は15歳で急死

暗い、苦しい生活でも、明るい、ユーモアあふれる作品を書いた

ネズビット:
慈しみをもって思い出した自分の中の子どもを楽しませ
喜ばせるために書いた

(インナーチャイルドのことかな


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