メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

新編少女世界名作選 16 母のいのり プローティー/原作 偕成社

2024-04-05 18:10:08 | 
1973年初版 1985年 第16刷 1990年改装1刷
山本藤枝/編訳 高田美苗/カバーデザイン 山中冬児/カバー絵・口絵・挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


映画化されるのも分かる
読むと映像が目に浮かび、ほろっと泣ける母と娘の物語

女性が働くより、金持ちと結婚してプラプラ遊んでいるほうが素晴らしいと思われていた時代
労働者と上流社会の差も感じる

新編のほうで追加された作品はあるだろうか?






【内容抜粋メモ】


登場人物
ステラ・ダラス 派手好きな母親 娘ローレルをとても愛している
ローレル
スチブン・ダラス ローレルの父 ニューヨークで暮らす
ヘレン・モリソン 夫は亡く、3人の息子を育てている



●その朝
夏休みになり、海に近い一流ホテルに泊まるローレル12歳と母ステラ







ローレルは8歳の頃から1年に一度、父の暮らすニューヨークで
1か月一緒に過ごす約束になっているが
どうして父母が別居しているか理由は知らない

ホテルで同じ年ごろの少女と遊んでいると、母親たちがひそひそと噂をして
ローレルを仲間外れにしてしまう
学校でも女友だちからいじめられている



●悲しい思い出
スチブンの父も弁護士で、たくさんの銀行の重役をしていたが
銀行が倒産しかけて、全財産使い果たして自殺してしまった

銀行の金も使い込んだという悪い噂もたち
当時、ヘレンという婚約者がいたが、別れてしまった

スチブンはマサチューセッツ州の工場で働き
女子工員のステラと結婚

ステラは貧しい家に生まれた美しい娘で派手好きなため
近所から「サーカスの芸人みたいだ」と噂されて注意しても聞かない







ローレルが産まれると、子どもの育て方で争うようになる

レストランで友人と食事をしていた時
派手な妻から声をかけられて恥ずかしい思いをして家に帰らなくなった








●優しいおばさま
ローレルは、父のはからいでモリソン夫人宅で1週間過ごす









モリソン夫人はかつてのスチブンの婚約者ヘレン
モリソンと結婚し、その後、夫を亡くし
3人の息子がいる コルネリウス、デーン、フレデリック
娘もいたが、幼くして亡くした

なぜお化粧しないかと訊ねると

モリソン:
役者みたいにこってり塗ったら、本当の美しさがなくなってしまうでしょ
ニセモノの真珠には、本当の美しさはないのよ

スチブンはモリソン夫人にローレルの教育を頼みたいが
ローレル:おばさまは立派だけど、世界中で一番立派なのはお母さんだもの







●古い友だち
ボストン駅でローレルを見送り、泣いていると
女子工員時代の親友エフィーと再会して
お茶を飲みながら、娘のことを相談する







ステラ:
スチブンは悪い人ではないけど、ひどくお上品ぶりたいのよ
あの人は金持ちのぼっちゃんで、私は貧乏で教育がない

エフィーはローレルがいない間、自分が住むベルチャーの浜に来ればいいと誘う







そこは、船乗りや工員が住む安宿がある場所で
ステラが酒に酔って歩いていると
ローレルが通う学校の役員をしているホーランド夫人が見てしまう

ホーランド夫人:大切な娘の通っている学校に、あんなだらしない母親を持つ娘がいていいものか

学校を変わってもらうよう校長に報告する
学校は生徒の親からたくさんの寄付をもらって成り立っているため反対できず
校長は、来学期から他の学校に移って欲しいと手紙を出す







●三つの手紙
アパートの家主からは、部屋を倍の値段で借りたい人がいるから、すぐ出て行って欲しいという手紙
スチブンからは、はっきり別れて、ローレルを引き取るから弁護士と相談してほしいと手紙が届く







ローレルからモリソン夫人のことを聞いて
スチブンは彼女と再婚して娘を奪うつもりだと思い
ローレルは渡すものかと決心する



●二度目の別れ
弁護士に会い、ローレルは渡さないと言って去る







ステラがモリソン夫人を誤解していることを知って
スチブンはもう会わないようにしようと言い渡す



●花と本の贈り物
母と娘はボストンに引っ越し、ローレルは15歳になった

夏休みに湖のホテルに来たが、母が熱を出して寝込んでしまう
1人で食事をしているローレルにアダムス夫人が声をかけて
娘ケティー、友だちミッチェルを紹介し、すぐに仲良くなる







友だちの夫人から花や本の見舞いを贈られて感激するステラ
これまで意地悪をされてきたローレルも、親しい友情を嬉しく思う



●ピクニック
友だちとピクニックに行き、人気のあるリチャードはローレルをボートに誘い
明日、母と一緒にランチしようと約束する
ローレルがモリソン夫人の知り合いと分かり、なおさら好きになる夫人たち








「お化けみたいな服を着た変な人が来る」と噂しているのが母と分かり
ローレルは時計をなくしたとウソをついて、探してもらう










●慌ただしい出発
ローレルは宿泊代を払い、朝一番の汽車で発つ
ステラはローレルがリチャードとケンカしたと思い込む
ステラ:家柄のいいあの人たちと仲良くしておけば、どれだけためになるかしれないのに







寝台車がすれ違う時に、2人の噂をする声が聞こえてくる

「あの人が、あのかわいい娘さんの母親なんですって
 いくらいい娘さんでも、母親をひと目見ればイヤになりますわね ほんとに可哀想」







2人は互いに寝ているフリをする

ステラ:
私はなんてバカな母親だったろう
私のすることなすことローレルの邪魔になることばかりだって知らずにいたなんて



●母の決心
ステラはモリソン夫人を訪ねる
スチブンとはもう3年も会っていないが、今も愛していることを確かめて
スチブンと再婚して、ローレルを立派に育てて欲しいと泣いて頼む







ステラ:
私はあの子を幸せにする自信がありません
私のような母親がついていては、あの子が可哀想です

モリソン夫人も泣いて承知する

スチブンとヘレンは再婚し、立派な家に住み、ローレルを呼ぶ
家族として暮らそうと言うと、きっぱり断るローレル
ローレル:お母さんを一人ぼっちにするなんてとてもできません

母親の希望なのだと説得すると、きっとあの噂話を聞いたのだと思い同情する



●死をこえて
母に説得されても、断固断るローレル

ローレル:
苦しみを一緒に味わってきたお母さんを見捨てるなんてできない
私は、タイピストになって会社へお勤めするわ
働かないで遊んでばかりいる人こそ恥ずかしいわ

ステラ:
女の子が働くのは、この上もなく恥ずかしい卑しいこと
あんたがタイピストになるくらいなら死んでしまったほうがいい

ローレルを納得させるために死のうと決心するが
スチブンの父も自殺したため、自殺者の子と言われるのも不憫になる



●置手紙
エフィーに相談に行くと

エフィー:
ローレルに愛想をつかされるようなことをすればいい
たとえばお酒を飲んで、だらしない暮らしをするの

エフィーは家に訪ねてきて、2人でお酒を飲んで騒ぐのを見て
ローレルは悩み、げっそり瘠せてしまう

ある日、母の置手紙があり、エフィーの世話で出会った人と再婚し
南アメリカに行くのに、あんたがいると困るから家を出ると書いてある



●母なればこそ
ローレルはモリソン夫人を訪ねて、自分を置いてほしいと頼む
ローレル:私、お母さんに捨てられました やっぱり私がバカでした









母の置手紙を見せると、モリソン夫人はステラの事情が分かる
スチブン:まったくバカな女だ

モリソン夫人:
ステラさんはローレルのために心を鬼にしてなさったことです
同じ母親の私にはよくわかります



●花のように
塀の影にステラらしき人影を見て、南アメリカに行ったのはウソだと分かるモリソン夫人
新聞に社交界デビューしたローレルの美しい写真を載せ
夜になっても外から家の中がよく見えるようカーテンをひかずにいるのを
フシギがるスチブン

ステラはニューヨークのシャツ工場で働いている







ダラス家でお茶会が開かれると新聞で知り、影から見ていると
真っ白いドレスを着て、真珠のネックレスをしたローレルを見て喜ぶ
ステラ:なにもかもちゃんと私の願い通りになった









リチャードがローレルをダンスに誘うのを見ていると
警官がステラを追い立てる
ステラ:すみません あのお嬢様があんまり美しいので、つい見惚れてしまって









解説

オリーブ・ヒギンス・ブローティー
1882年 アメリカ生まれ
25歳で結婚し、4人の母となる

本作を書いたのは、40歳の時で、たちまち評判になり
映画、劇、ラジオなどで取り上げられる

ステラは子どもに派手な服を着せ、立派な家に住まわせれば幸せと考え
浅はかさに気づかず、夫に見放される

ローレルはこうした両親の狭間に立ち、気づかい、苦しむ

人生のほんとうの幸福とはなにかを問い
ステラの愚かなればこそ、一途に燃える愛の姿を描いた


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