メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

少年少女サスペンス推理 5 恐怖の第22次航海 レオン・ウェア/著 学研

2023-07-06 19:37:20 | 
昭和51年初版 高橋泰邦/訳 山野辺進/絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください







あとがきにあったように、本格的な航海の旅が楽しめる1冊だった
15歳で初めての一人で長い船旅は相当勇気がいるなあ

養父母と別れるシーンは、私が初めて一人暮らしをする時
引っ越しを手伝ってくれた両親との別れ
毎回、帰省時に特急を見送ってくれた母のことを思い出した

事件が起きるのは、半分まで来てようやく!

それまで航海のいろんな出来事を通じて
乗客の性格、関係を描いて、誰が怪しいかを当てさせるのは巧な展開
一番怪しくない人が犯人だとすると、ソーン氏あたりか?

今の私には飛行機も電車も船旅もムリだけど
こうした物語を読むと、船上の旅もワクワクするだろうなあ

ベンおじさんが言った、旅の終わりにはいろんな価値観が変わるだろう、て言葉も深い


商船ホーンビル号の航路





ホーンビル号見取り図






【内容抜粋メモ】

登場人物
トム・キャメロン
ベンおじさん、ベスおばさん 養父母

乗客
ベルニーニ夫妻 ポール ルース
エバン・ソーン
カートライト夫人
ジャクソン夫妻 フレッド
コンラッド夫妻 ドイツ人

商船ホーンビル号
船長アルトマン
一等航海士 ホルガー
主任ボーイ シュルツ
二等ボーイ エディ


●東行き第二十二次航海 アメリカ西海岸~パナマ運河~カリブ海~イギリス
15歳のトムは、幼い頃に母を亡くし、ベンおじさん、ベスおばさんに育てられる
教授をしている父のいるイギリスに渡るために23日間の船旅に出る





なれっこになってしまうものがいろいろあるが
母がいないことを人に話さなければならない時
大事なものを持ちそこなった不満と
ないものねだりをしたい気持ちが高ぶり
押しつぶしそうになることがある

科学的には説明のつかない感能力、霊感があることを知っていて
さっきから自分にはたらきかけているものは、母からの霊感だと感じる

トムの部屋は3階の右舷側
1人用ベッド、長椅子、鏡台、衣類だんす、浴室がある

隣室のベルニーニ氏が2度も部屋を覗きに来てイヤな感じがする






●船酔い
冬のこの航路は荒れることが多く、初日から船が大きく揺れて
トムは船酔い薬を飲んでも戻してしまう
(↓↓↓ 船はすぐ逃げられないものなあ!






●密航者
古いセーター、スリッパを履いた不愛想なアルトマン船長に驚く
乗組員からも嫌われている







最初の港エンセナダに着き、ジャクソン夫妻に誘われて船を降りるが
おしゃべり好きで、買い物好きな2人に辟易する

カートライト夫人:人生修行で一番難しいことの1つは、ノーと言えるようになること

貧しい身なりの少年に会い、片言のスペイン語で話す
ホセ:あの船に乗りたいなあ

その後、船の煙突にホセが隠れているのに気づく
脱水症になりかけていて、水と果物を運んであげる





密航者は最初の寄港地でおろされ、投獄されるかもしれないと思い
ほかの人には秘密にする

アルトマン船長は、密航者はかまわず海へ投げこめという考え

若い船員は、トムと同じ15~23歳と知って驚く
航海訓練所に行き、士官になる前に見習いとして働いている

船客はシャッフルボードで遊ぶ
トムが部屋に戻ると、ベルニーニ氏がまた部屋を覗いている

ホセを助けるために船の構造を見ておこうと
機関長に機関室を案内してもらう

しかし、ホセは発見されてしまう







トム:自分の国から出たいばかりに、監獄に入れられる危険を冒すなんて恐ろしい

ソーン:どんなに恵まれているか、誰も心から分かっていない

中国人の新人が盲腸になり、洗濯が出来ないと聞き
閉じ込められた洗濯室でぜんぶ洗濯するんだ、とアイデアを伝える

ホセの機転を聞いて
カートライト夫人:進取の気性の現れね と褒めて、アイロンがけを教えてあげる


●ラ・リベルタ
中国人は担架に乗せられ、運び出される
船には手術の用意も医者もいないから、それがベストという判断

トムも船長に誘われて降りることにする
大きく揺れるタグボートに乗り移るのは、タイミングとコツが必要







小さな店があるが、どれも陳列ケースは1つだけで棚はからっぽ
歩道に女性が座り、商品を並べているが、オレンジ6個だけというのもある

どこも腐った野菜、ほこり、焼け焦げた臭いがしている
あまりの蒸し暑さで早く動けない

ホテルで船長を待っていると、見知らぬ男が声をかける
ベルニーニ氏について聞く

後にベルニーニ氏は、同じ男からトムに挨拶してくれと頼まれたと話す


●なぞのフィルム
鏡台の上の蛍光灯のガラス張りの中に四角い箱を見つける
好奇心で開けると、フィルムが出てくる
なにかの秘密文書かもしれない







ベルニーニ氏はこれを探しているのかもしれない
空いている7号室のガラス張りの所にフィルムを隠す

誰かに相談したい気持ちにな駆られるたび
誰もよく知らないし、用心したほうがいいと止める

船長はホセを働き手として置くことに決める
みんなが言うほどイヤな人ではないことが分かる

エディ:
以前、3人の客を乗せた時、1人、足をくじいて
病院に運ばれる間に墜落死した
その男はこの部屋を使っていた

その飛行機が燃えなかったことで
ベルニーニ氏はフィルムがまだここにあると知り、探していたのだ

エディの給料は月200マルク
1か月に1人あたり10ドルのチップがないと生活できないとこぼす

手紙で父に知らせることもできるが、誰に読まれるとも分からないから
書かずに、港に必ず迎えに来てと頼み、あえて、ボーイに投函を頼む


●パナマ運河
日本での旅興行を終えたサーカス団が乗る船とすれ違う際
檻からサルが逃げ出し、1匹がホーンビル号に乗ってしまう
ホセは器用に帆に登り、サルと会話をして!、肩に乗せて降りる

上陸許可証のカードをもらって甲板に出る
コロンの町もどこも汚く、建物は荒れ放題で喫茶店で飲み物を頼む

そこにベルニーニ氏が小太りの男マギルを連れて、スペイン語で話している
トムにはスペイン語は全然話せないと言ったのに







その後、マギルもホーンビル号の船客となるが
ベルニーニ氏とは初対面のフリをしている
マギルは7号室に泊まる


●嵐の真夜中
ホーンビル号は無線方向探知機の誤差をチェックするために一時停止する

今度は、マギルがトムの部屋に入ってきて
部屋を交換しないかとしつこく頼むが断る







甲板員:大しけが近づいている

窓を閉めても海水が入るって!!

不安になったトムはソーンとラミー(トランプゲーム)をやる
そこにまたベルニーニ氏が入ってきて、ソーンに気づくと誤魔化して去る

料理も皿からこぼれるし、船が大きく揺れて、食事どころじゃなくなる

夜の1時にノックで起きて、ベルニーニ氏とマギルが入ってくる

マギル:
お遊びは終わりだ どこにあるか知っているなら喋ってしまえ
こんな嵐なら腕を折ることもある
大波にさらわれて、、、

ボーイを呼ぶボタンを押すと船長が来てくれて、2人はウソを言って逃げる


●火事
燃え盛るノルウェーの貨物船が右舷に浮かぶのが発見され
乗組員、客は後ろに逃げているため、総出で助けに行く

ソーン:積荷はテレビン油、綿、硫黄 まるで海に浮かぶ爆弾だ









ホルガーは荒れる船で腕を骨折してしまい
本来なら船を離れてはいけない船長がボートを漕ぐ

全員を乗せて帰る頃には、ボートは焼け
ほとんどが火傷、怪我を負っている悲惨な情景

ソーンやトムも客を助ける
船長は髪が焦げ、頬をざっくり切っていたが、指示をやめない

船客は自分の部屋をけが人に譲り
夫人らは包帯を巻いたり、臨時の看護婦となる(強いなあ!

アメリカ海軍の駆逐艦が見えた時、トムは思わずノドがつまり
無意識に叫んで手を振る

52名のうち、29名救助したが、船長、乗客7名が行方不明
ホーンビル号は怪我人を早く病院に運ぶために前進
捜索は他の船に任せる


●罠
急に船客が増えたため、食事はビュッフェとなる

客の手当を終えた軍医に、ホルガーと船長も怪我をしたと伝えるトム
どんなに重傷を負っても、客を優先させる気概が凄いなあ







ベルニーニ夫妻とマギルはなにも手伝わず、食事のラウンジに来たため
みんなからキツく叱られる

船長は怪我人をサウサンプトン(イギリス南部の都市)に送ると言うと
アントワープに行くはずなのに、急に航路を変えるのはルール違反だと
いきなり激怒するベルニーニ氏

通信室にソーンといっしょに泊るトムは
ベルニーニ氏に最初からつきまとわれていたわけを聞かれてついに事情を話す







ソーンはFBI捜査官!でベルニーニを追っているが
現行犯でないと逮捕できないと説明する

船での重要な出来事は船長が知らなければならないと、船長にも話す

ロンドンの官庁から重要な機密文書が盗まれ
マイクロフィルムに撮られたと考えられる

トムは1人でラウンジで読書をしているフリをして
ソーンらが影で見守ると、ベルニーニとマギルが脅しに来る

7号室にあると明かすと、ベルニーニが取りに行き、見つけ出したところを
ソーンと船長が捕まえる







●別れ
船長:レーベヴォール(さようなら)
トム:アオフ・ヴィーデルゼーヘン(さようなら)

船長:
それは、また会いましょうという意味だ
君のようなヨナ(仕事に不幸をもたらす不吉な人)は二度とごめんだよ
と冗談を言ってウインクして去る

迎えに来た父に
トム:これからは、人を見かけでどうこう考えることはしないよ!



訳者あとがき
私は外国の優れた海洋小説や記録ものの翻訳紹介を続けてきた
この小説は航海記としてもよく書けている

アメリカ推理作家協会から「青少年向き年間(1965年度)最優秀作品」に選定された

私の父は外国航路の船の船長だった
母は「見聞を広めるためなら学校を休んでもいい」という方針で
船で探検して歩いた

商船大学を受験する直前に仮性近視にならなかったら今ごろは船長だった
わずか0.2だけ視力が足りずに、大きく一生の道が違ってしまった

ホーンビル号に乗りこんで、トムといっしょに船出してください
きっと忘れられない航海になるでしょう











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