メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

角田光代とトト@ネコメンタリー 猫も、杓子も

2020-04-24 13:56:33 | テレビ・動画配信
「ドラマのマイベスト」カテゴリー内「角田光代さん作品まとめ」に追加します

この番組は可愛い猫が見られるのはもちろん
自分が好きな作家さんの自宅
どう物を書いているかが垣間見れるのも貴重


【内容抜粋メモ】

トト 7歳 メス アメリカンショートヘア

西荻窪

夜中に帰ってくると、玄関まで鳴いて迎えに来てくれた!
角田:ただいまトト来てくれたの?

角田さんにとって人生で初めて一緒に暮らす猫です
夫との二人暮らしにトトが来てから
食卓のマットが1枚増えました

角田:
トトが来る前は猫を飼ったことが全くなかったので
ただの概念だったんですよね
ツバメみたいな
猫っていったら顔もみんな一緒だし
猫っていうだけだと思ってた

でも実際、猫が来て飼ってみると
顔も違えば性格も違うし
コミュニケーションが取れるっていうことも分かってきて
もうちょっと身近な存在として存在しているようになりました


家の中で一人でお留守しているトト
家のいろんなところにカメラを置いたのかな
テーブルの上に乗ったりしてる
毎日こうしてお利口さんにして角田さんを待っているのかな

帰ってくるとまた玄関に迎えに来てくれてる

角田:
ミルク飲む、これ?
お待たせしましたどうぞ




なんか震えてる 寒かった?
震えながら飲んでる
そんな寒い思いして飲まなくてもいいよ
ミルク美味しかった?


「任務十八年」
朗読:戸田恵梨香




さて 任務が終わったので還ることとなった

借りていた衣を脱いで
元いた場所に還る
この衣をすっかり脱いでしまったら
私達は人間界とは無関係になる


(とっても甘えん坊さんなんだ
 膝の上でジャラシで上手に遊んでくれてる







角田さんは毎朝近くの仕事場へ出勤します
トトはお留守番

(キャットタワーの一番上でくつろいでる





作家としてデビューして27年
人間の心の奥底に潜む情念をリアルに描いてきました




角田:
フィクションは作り事なんだけれども
ルールを作らないと物がガタガタになると思っていて
小説家としてデビューした最初から
私はもう決めているんです
人は安易に殺さないというのを

一人いなくなるという嘘をつくためには
全部本当で固めないといけないから
安易な方法じゃなくて近道以外の道を探すっていうのが
私の中でズルをしないということなんですよね





朗読
本来私は時間という概念を持たないから
今より先のことを考えたりしないのだけれど

私達の派遣先である人間は
今より先のこと、今より昔のことを
繰り返し繰り返し考える生き物だ

今起きていないことや存在していないものを
思い描いては怖がったり不安になったりしている

ずっと前にあったことや起きたことを思い出しては
後悔したり落ち込んだりする


先のことも前の事も考えなければいいのに
それはどうしてもできないみたいだ

だからきっと私の任務先であった人間さくらさんも
私がやってきた当初から
私がいなくなることを思い描いていた

私の帰還後は、きっと愚かにも
後悔したり泣いたりするのに違いない







私たちはそれぞれ任務を受けて
衣を借りて担当の人間のところに向かう


一人で行くこともあれば
きょうだいや親子で行くこともある

目が合って念を送ると
狙い通り人間は私たちをいともたやすく家に招き入れる

そうして私たちはそれぞれ定められた任務期間
その人間と暮らし、定められた情報謀略活動を行う

情報は報告書を提出すること
謀略はともかく自分の力では何もしないこと
なんでも人間にやってもらうこと(w

情報とか謀略とか言葉は悪いが
私達が基本的に行っているのは平和的活動

その証拠に私たちを迎え入れた人間は
9割方、平和的行動をするようになる

善良な人間になるわけではないが
小さな生き物に対してだけは
平和的な心になる

私たちが気体から発する睡眠誘発剤を無自覚に吸って
すやすや眠り込むだけで人間の心は平和になるのだ










2016年12月31日
家の中をガサガサ片付けている夫・丈洋さん




この日、トトには一大イベントが待ち受けていました
大晦日は年に一度、夫がトトをお風呂に入れる日です

タケヒロさん:洗ってきます
角田:頑張ってねトト

お風呂場ですごい鳴いてる(苦笑

ビショビショのまま風呂場から飛び出てきたw




角田:
偉かったねトト
拭かれるの嫌だね

タオルで拭くと飛んで逃げて
ビショビショの体を舐めてる


角田:
猫が来る前だったら、私はやっぱり私中心の暮らしだし
仕事がすごく大事なので
仕事優先で「私が、私が」って暮らしてたと思う

やっぱりそこはどこか辛くて
何か自分以外のことに心を持っていけるものが来て
すごく良かったんだなと思います







朗読
任務は3年のこともあるし、20年以上にわたることもある
(トトが何匹も増えてく映像!

私の場合は18年だった
18年いろいろあった

と言いたいところだけれど
私には今より前のことを考えることができないから覚えていない

私を迎えた時のさくらさんはおばさんだったけれど
この任務期間におばあさんになった
すっかり平和的なおばあさんだ

(トトは角田さんをなぜさくらさんって呼ぶの?
 ヒトがネコに勝手に名前をつけるように
 ネコもヒトに好きな名前をつけてくれてるのかな


還ったら私は功績を称えられて表彰されるだろう
それではさくらさん さようなら
さよなら ありがとう

衣を脱いで還っていく間
背を丸めて私の脱いだ衣を抱きかかえて
「ワオンワオン」と吠えるように泣きながら
私の名を呼ぶさくらさんの声が聞こえていた

案の定私は18年の功績を評価されて
表彰されご褒美に休暇をもらうこととなった

私は少し考えたのだけれど
休暇を返上し、任務の結果を視察したいと願い出た

平和的なおばあさんになったさくらさんは
私がいなくなって凶悪なおばあさんになっていないか視察したい

本来ならば任務を離れたばかりの人間の元に戻ることは許可されないけれども
多分私の功績が認められ、その視察目的も納得いくものだったのだろう
許可が下りた
1日だけ

灰色の汚れた外用の衣を借りて
私は再び住み慣れた街へと降りていき
赤い屋根の小さなお家の前にたどり着く
見つかったらいけない
あくまで視察なのだ

しばらくするとドアが開いておばあさんが出てきた
さくらさん
買い物に行くのだ

前より背中を丸めてしょんぼりとして足取りも重い
なんだか凶悪になっている気がする

収集前のゴミを蹴ったり
小さな生き物に石を投げつけたりするのではないか
そうしたら私の18年もの任務がパーだ

見つからないようにこっそり後をつける
公園を通り過ぎたところで、さくらさんが足を止める
じっと何かを見る

知っている
電信柱の下にずっと前から付着しているペンキが
私か、私の仲間に見えるのだ


全く同じ場所なのに
さくらさんは何度でも見間違いをして足を止める

そして間違いに気づいて
「なんだペンキか」と笑って立ち去るのだ

でもこの時は立ち去らず、その電信柱に近づいていく
私でも私の仲間でもないただのペンキの汚れだと
分かっているのに近づいてしゃがむ

蹴るのか? 唾を吐くのか?

注視していると、さくらさんはそっと手を伸ばし
ただのペンキ跡を優しく撫でる

ピクリとする
その手の感触がじかに触られたかと思うくらいはっきり分かったから

丸くて、分厚くて、乾いていて、温かい手のひら
背中を、耳の後ろを、額を、顎を包むように行き来する手のひら

私は今撫でられているかのように
さくらさんの手のひらの感じを思い出す







驚いたことにそれを合図のようにして
次々といろんなことが溢れ出してくる

小さな小さな私を包んだ両手
頭を持たせかけて眠ったふわふわのお腹

嫌いだったシャンプーの音
柔らかいシャワーのお湯

テーブルに乗り損ねて床に落ちて
それを見て弾けるように笑う声

毎日用意されるご飯と
「美味しいね」という声

暖かい日差しの中での居眠り
混じり合う私たちの寝息

今、ただのペンキ跡を撫でているさくらさんも
同じことを思い出しているのが私にはわかる

私を失ってあなたは凶悪になんかなっていない
何も恨んでも怒ってもいない

ただ自分を満たすものを繰り返し確認している
あくまで平和に

ねえねえ きっといつかまた別の衣をまとって
あなたのところへ派遣されるから待っていてよ

と物影から私は言いそうになる

でも言わないのは
同じことをさくらさんもまた思っていることが分かるから

さくらさんもいつかまた私が
自分のところに戻ってくると確信していることが分かるから

あれ?
私、今より前のことも先のことも分からないはずなのに

なのに
思い出しているし、いつかわからない先のことを考えている

あ、そうか
私は人間を視察したかったのではなくて
本当はこのことを知りたかったのだ

時間の概念がない私にも
今を作ってきた今までがあり
今が作るこの先があると
その事を確かめたかったのだ

さくらさんはペンキ跡を撫でていた手をふと止めて振り返る
私はとっさに物陰に隠れる

見つからなかったはずだけれど
さくらさんは18年ずっと私に向けていたのと同じ顔でニーッと笑う

立ち上がり、青空の下 歩いて行く



テーブルの下を覗いてもトトはいない
呼ぶとゆっくり歩いてくる
別に用事もなくそのまま通り過ぎる





野良猫さんが顔を出した
みんな誰かの生まれ変わりかもしれないね
早く暖かいお家に帰れるといいね














「家族になったよ」
家族になった保護犬、保護猫たち
笑顔溢れる日々を紹介します








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