メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『秋津温泉』

2008-11-03 18:11:08 | 映画
『秋津温泉』(1962)
製作:白井昌夫、岡田茉莉子 監督:吉田喜重 原作:藤原審爾
出演:岡田茉莉子、長門裕之、芳村真理、清川虹子、日高澄子、殿山泰司、宇野重吉、東野英治郎、山村聡 ほか

岡田茉莉子の「映画出演100本記念」作品。彼女のまさに最もキレイな姿を存分におさめた1本。

story
昭和二十年、太平洋戦争下の日本。東京の学生だった周作は、空襲で焼き出され、
貨物車で移動中出会った旅館の仲居に頼んで岡山県山中の秋津温泉に泊まる。
日本兵が血気盛んな酒盛りをしている晩、結核を発症。「これじゃお国の為にも働けない」と医師から薬すらもらえない。
秋津荘の一人娘、新子は生きる希望を失っていた周作を一人元気づけた。
終戦の玉音放送が流れた日、手放しで泣く新子を見て、生きようと決心する周作。
3年後、売れない作家として酒びたりの周作は再び秋津荘を訪れ、新子に想いを告げ、
「一緒に死んでくれ」とせがむが、河原まできて新子のあまりに健康な美しさ、無邪気さに触れ思いとどまる。
また数年後、周作が訪れ、新子の心は弾むが、すでに妻子がいることを知る。
「いつも見送ってた気がするわ」新子は帰る周作の後を追って発作的にバスに乗り込み、
2人は名もない旅館で一夜を過ごす。
翌日の駅で「今度は僕に見送らせてくれ」と新子を追い返す周作。
また10年が過ぎ、東京に転勤となった報せを持って周作が最後の別れを言いにくる。
経営的にも傾いた秋津荘を売りにだし、今度は新子から「一緒に死んでほしい」とせがむが。。

なぜもこんなに青年が自暴自棄なのかが理解できない。新子も同じだったろう。
生きる勇気がないから、せっかく両想いを確かめ合っても前に進もうとは考えない周作。
歳を経て、サラリーマンとなり、生死もどうでもよくなって惰性で生きる男と、
彼を恋焦がれて、待ちくたびれて、すっかり生気を失くしてしまった女が再会しても、
すでにその溝は深く、ありし日の情熱はない。

監督は、「松竹ヌーベルバーグの旗手」とのことで、以前観た「愛の不毛」を描き続けた
ミケランジェロ・アントニオーニ作品を観ているようだ。
ロケ地の岡山県奥津温泉の雪景色、桜吹雪、四季それぞれの風情が永遠に残されているのが素晴らしい。
こんなひなびた旅館に泊まってゆっくり露天風呂にでもつかりたいなあ!

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