メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

世界探偵小説全集1 薔薇荘にて A.E.W.メイスン 国書刊行会

2023-01-22 16:09:50 | 
1995年初版 富塚由美/訳

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します

【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください



とてもそそられるタイトルと
私の好きなハードカバーで
探偵もののだから借りてみた

国書刊行会てしかめつらしい名前だな

アガサの『スリーピング・マーダー』の後に読んだから
単純な探偵ものみたいな冒頭で
事件が始まるのも早い印象を感じた

<半分読んだ考察>
事件自体はシンプルと思ったら
宝石は盗まれなかったという意外な転換

私が思うに、一番怪しい女性はシロとして
探偵と行動する2人が怪しい?
とくにウェザミル

犯人逮捕が真ん中過ぎ
その後は延々と裁判の証言に基づく
事件の回想が続くって珍しいな


【内容抜粋メモ】

登場人物
カミーユ・ドヴレー夫人 薔薇荘の女主人
シーリア・ハーランド 降霊術をする女性
エレーヌ・ヴォキエ メイド
アルフォンス・セルヴェッタ 運転手

ハリー・ウェザミル 青年発明家

アデル・ロシニョール夫人
ジャンヌ・タセ ロシニョール家の召使
イッポリット・タセ ジャンヌの息子

マルト・ゴバン ジュネーヴに住む婦人

アノー パリ警視庁の探偵
ジュリアス・リカード 引退した実業家




温泉保養地エクス・レ・パンへ旅行に来るのが習慣のリカード
50歳ほどでやもめ

「花の館のバカラルーム」
ハンサムな発明家ウェザミルとボヘミアン(芸術家社会の人間)シーリアは親し気
明日会いたいと言うウェザミルに「明日は別の予定がある」と言うのが聞こえる

「マジェスティック・ホテル」
薔薇荘で女主人ドヴレー夫人が絞殺されて
事件の夜、恋人のシーリアが失踪して疑われているから
助けてくれとすがりつくウェザミル

「フランスの探偵で一番の腕利き、アノー」
リカードはアノーと知り合い
休暇中の彼を訪ねて事件を担当してほしいと頼む
アノーはがっしりした体格、丸顔

「運転手セルヴェッタ」
シーリアはセルヴェッタに休暇をとって
両親のもとを訪れたほうがいいとすすめたことが分かる

「メイドのエレーヌ」
ドヴレー夫人と親友のような仲
クロロホルムを嗅がされて縛られて発見された

夫人は宝石収集が趣味 そして迷信深い
それを聞いて、リカードはシーリアを降霊術の興行で見かけたことを思い出す

「第一発見者はペリシェ巡査」
夜9時半に薔薇荘を通りかかり、門が開いているのに気づいて不審に思う
閉めてから戻るとまた開いていたため、中を確かめると夫人が倒れていた

薔薇荘を調べるアノー
シーリアの足跡と「私には分からない」と書かれたメモが見つかる
クッションには血のシミ

ウェザミルがシーリアに贈ったイヤリングはいつも入れている箱にない
シーリアはドヴレー夫人を絞殺したと思われるヒモを買っていた

リカードはシーリアの犯行だと確信する

「エレーヌの証言」

エレーヌ:
私はシーリアに嫉妬していた 憎んでいました!
レストランで夕食を乞うている時に同情したドヴレー夫人が拾った
その後、高価なドレスを揃えて、自分は世話を言いつかった

奥さまは占いなどが大好きでいかさま師に騙されていた
シーリアは死者の霊魂を呼び出すショーでイギリス各地を巡業していた
奥さまはすっかり信じきっていた

事件の夜も降霊術をしていた
そこにはもう1人女性がいた 黒い髪でアデルと呼ばれていた

その日、シーリアはいつもの黒いドレスではなく
まるで恋人に会いに行くような格好だった

奥さまは宝石を寝室の金庫に入れていた

「宝石のありか」
ドヴレー夫人の部屋は荒れ放題
犯人らは宝石を探しまくったが見つからなかった様子

シーリアの部屋からはコールドクリームの小瓶がなくなっていた

「船長」

アノー:
海の上では毎日正午になると、現在地を特定するために3人の船員が意見を出し合う
船長、一等航海士、二等航海士
3人のうち誰か間違えれば比較検討する
船長は自分の意見を見せない 自分も間違える可能性があるため
だから、私は自分の考えを述べることをしません

この事件は計画的です
屋敷内に共犯者がおそらく2人いたのは確か

ウェザミル:シーリアと僕は今週中にも結婚するはずでした!

心痛な面持ちのウェザミルに同情するリカード

アノーは赤い毛を見つけて、アデルのものと断定し、ジュネーヴに向かう

「ドヴレー夫人のクルマ」
事件の夜からなくなっていたクルマが、さほど離れていない空き家から見つかる
そこにシーリアが着ていたドレスの切れ端がついている

なくなったガソリンの量からして、ジュネーヴに行って戻ってきたと推理

アノー:犯人は非常に頭がよく、大胆不敵です

「マルト・ゴバン」
ジュネーヴから電報が来て、マルト・ゴバンと名乗る夫人が
事件の夜、シーリアがクルマから降りたところを見たから
それについて話したいとのこと

だが、ホテルに向かう途中、馬車の中で金串で刺されて殺されていた

アノー:明らかに私の不注意です 私が予測すべきだった

リカードの机の上にマルト・ゴバンからの手紙を見つける

手紙:
夫の看病で夜遅くまで起きていて
真向かいに住む赤毛のアデル・ロシニョール夫人の様子を時々垣間見ていた

召使いは女主人を呼び捨てにしている
イッポリットという下男がいて、召使いの息子と思われる

事件のあった夜、シーリアと思われる女性が
クルマから降りて屋敷に入るのを見た

夕刊にアノーが宝石を床下から発見したことが載り、時間がないと焦るアノー

ジュネーヴの湖のほとりにあるロシニョール夫人の屋敷に向かう
召使いが見張っていたのはシーリア!

イッポリットとジャンヌは逮捕される
シーリアは誰も信用できず、アノーの袖を掴んで離さない

シーリア:なんだか大きなニューファンドランド犬に見守られているような気がしますわ

犯人らはシーリアから宝石のありかを聞き出すために監禁していた

アノー:
ウェザミルは逮捕されました 私が電話で命じたのです
マルト・ゴバン、ドヴレー夫人の殺害容疑です

「ホテルの死角」
馬車が坂をゆっくりのぼる最中に、ウェザミルはマルト・ゴバンを刺し殺したが
ホテルからは死角で見えない

ウェザミルを疑っていたアノーは、彼が仲間に連絡できないよう
つねにそばに置いて見張っていた

アノー:
彼は主犯ではない 彼も道具の1つにすぎなかった
残酷で横柄で執拗なエレーヌ・ヴォキエがすべて牛耳っていたが
薔薇荘から留置所へ送られた

コールドクリームの瓶には、シーリアのイヤリングが隠してあった
持ち去ったのはエレーヌ

「シーリアの証言」
幼い頃、母を亡くし、父は娘を降霊術者にしたてて興行した
その父も失い、マネキンの仕事もなくなり
お腹を空かせていた時にドヴレー夫人が救ってくれた

占いが大好きな夫人に恩返しのつもりで降霊術を見せたら、すっかり信じ込んでしまった
それまでいかさま師から手数料をもらっていたエレーヌはシーリアを憎むようになる

ウェザミルと知り合い、恋に落ちたシーリア

だが、ウェザミルは多額の借金があり
エレーヌはそこにつけこみ、ドヴレー夫人の宝石の話を持ちかける

カジノの案内係アドルフ・ルエルは
ウェザミルがエレーヌに「金が必要なんだ!」と話す声を聴いた

タセ一家は窃盗が仕事

アデルは降霊術など信じないとドヴレー夫人をたきつけて
シーリアは嫌々、降霊術を見せることに同意するが
暗い中で黒いドレスを着たりすることなどをことごとく禁じられる

音をたてないスエード靴も禁止
しかも手足をしっかり縛って、縄抜けの得意なシーリアの動きを完全に封じた

味方だと思っていたエレーヌが口にハンカチを押し込み
彼女がずっと自分を憎んでいたと初めて分かる

薔薇荘にウェザミルが忍びこみ、ようやく助かったと思うと
彼は縛ったヒモをさらにきつく縛り直した

ドヴレー夫人の首を絞めて殺したウェザミル
だが、肝心の宝石コレクションは見つからない

焦った彼らは、別の計画を立てる
シーリアから宝石のありかを白状させる間
殺人の罪を着せて監禁した

硫酸を入れたフラスクで脅したため、言いなりになるしかない

エレーヌはクロロホルムを嗅いで寝たが、部屋の明かりを消し忘れる
ウェザミルはシーリアとアデルをジュネーヴまで送って戻る

シーリアを湖に沈めて殺そうとしていたところをアノーに見つかる

「アノーの説明」

アノー:
リカードがウェザミルを連れて来た時
彼が金に困っていると話したことを知っていたため
最初から疑っていた
休暇を返上してあの若者と対決してみたくなった

エレーヌは明かりを消し忘れたため、計画より早く巡査に見つかった

ほかの足跡は消されているのにシーリアのだけ残っているのも不自然
クッションのくぼみと血のシミから、シーリアが縛られていたと推理
そこでエレーヌが共犯と見抜いた

シーリアのドレスに油のシミがあり、コールドクリームだと分かる
エレーヌは縛ったシーリアのイヤリングを盗んだが
隠す時間がなかったため瓶に隠した

アデルが黒髪だとウソをついたこと
シーリアのドレスを着せたのに
イヤリングをしていたか答えられないのはおかしい
留置所で身体検査をしたら瓶とイヤリングが出てきた

クルマを持たないウェザミルがジュネーヴまでの地図を買ったのはおかしい

女たちは終身刑 ウェザミルはギロチンかニューカレドニア送りかもしれません
(流刑地だったのか?!




解説 塚田よしと
イギリスで興った長編探偵小説のブームはアメリカに飛び火した

『トレント最後の事件』
『赤い拇指紋』のソーンダイク博士

本書はメイスンが初めて手をそめた探偵小説



アルフレッド・エドワード・ウッドリ・メイスン
1865年生 ドイルより6歳下
大学卒業後、俳優になるも大成せず、小説家となる
多趣味 ヨット、ライフル射撃、ゴルフ、クリケット、旅行、登山、、、

アノーは実在したパリ警視庁長官2人のイメージをもとにした
本書の事件もフランスで起きた事件がもと

リカード氏 イギリス人ディレッタント ワトソン的立場

後半を事件の再現ドラマに移行したのは評価のわかれるところ

ガボリオの代表作『ルコック探偵』を最高と考えていたメイスン

黄金時代の傑作に匹敵すると称揚するのはムリだが魅力的な作品


その他
『セミラミス・ホテル事件』夢判断をベースにした解明
『矢の家』名実ともに代表作
『オパールの囚人』
『Gineer King』「ワン・アイデア・ストーリー」の軽さをカバーし楽しめる小品佳作
アノーの“最後の挨拶”







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