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メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『猫の事務所』 宮沢賢治

2010-08-21 09:23:43 | 
宮沢賢治の絵本も他館にまだあるようなので予約して借りてみた。
全集より、やっぱり童話は絵本にしたほうが子どもたちが手にしやすいし、
賢治が伝えたかったエッセンスがより豊かに伝わる気がする。
それぞれのイラストレーターの描き方、風合いの違いも重要な楽しみ方のひとつ。


猫の事務所 宮沢賢治/作 黒井健/絵 偕成社

猫の歴史と地理を調べる「猫の第六事務所」には4人の職員がいて、欠員が出るとみなが入りたがる名誉ある役職だ。
その中にかま猫(寒いのが苦手でいつも竈で寝るため、煤で黒い)がいて、優秀だがみなから蔑まれ、意地悪をされている。
ある日、かま猫はひどい風邪をひいて1日休んだ。翌日出勤すると、自分の原簿は別の人が使っていて、
仕事を奪われてしまっただけでなく、みなから無視されて居た堪れなくなって泣いてしまう。
そこに獅子が現れて、そんなことをしてるくらいならやめてしまえと、解散を申し付けるというお話。

これがニンゲン社会なら本当に陰険で大人気ないイジメだけれども、猫のためどこかほのぼのとしてしまうw
お弁当やペンを机から落ちて拾うのも、手が短いためにイスから浮いてしまったりして
動物の姿を借りて、世の中の不条理を描き出す賢治の優しいココロがひしひしと伝わってくる。


虔十公園林 宮沢賢治/作 伊藤亘/絵 偕成社

虔十はいつも樹を見てははあはあと笑ってばかりいたので、近所の子どもにまでバカにされていた。
ある日、突然「杉苗700本買って呉ろ」と親に頼む。これまで一度きりのお願いだからと親は買ってあげる。
虔十は喜んで庭に植え、「そんな土では成長しない」とか「ウチに日陰を作るな」とか言われても、これだけは譲らない。
杉は並木のようになり、子どもたちが夢中で遊ぶ校庭のようになる。
虔十がチフスであっけなく死んで、その後、村には鉄道が走り、開発され、すっかり見違えてしまっても、
残っていた杉林に、外国帰りの博士となった男は「ここはすっかり元の通りだ」と懐かしがる。
今や立派な杉林となったその場所に「虔十公園林」と名付け、いつまでも残すよう碑も建てた。

「全く、全く、この公園林の杉の黒い立派な緑、さわやかな匂い、夏のすずしい陰、
 月光色の芝生が、これから何千人の人たちに、本当のさいわいが何だかを教えるか、数えられませんでした」

素朴な地方訛り、豊かな擬音の使い方は、まさに賢治の童話の最大の魅力。
虔十の見る楽園のような景色に思わずじぃーんと胸が熱くなる。



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