メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『娘・妻・母』

2006-11-15 22:44:17 | 映画
『娘・妻・母』(1960年)

いままで観たくてもなかなか機会がなかった成瀬巳喜男作品を
TSUTAYAで何本も見つけて胸が躍った。
「7大スターの競演!」と予告編でうたっているように長女役に原節子、
長男役にはわたしの大好きな森雅之(『白痴』での共演がよみがえる!何を演じても
うまいし、やっぱり渋くてステキ!!!)をはじめ、長男の妻役に高峰秀子、
姑役に杉村春子とカンペキハマるキャスト。

ほかにも宝田明、団令子、草笛光子、淡路恵子、加東大介、上原謙、
ちらっとだけど笠智衆も出演して作品を締めている。
とにかくこんな豪華な共演はあとにも先にもないんじゃないかってくらい!
原節子と惹かれ合う年下の男性役に仲代達矢が若々しくて、大人の恋だなあ~
母親役の三益愛子さんは知らなかったけど、子を思う優しい母の複雑な心理を
見事に演じていて素晴らしい!
終わり方がやや唐突な感じがしたけど、もっとずぅっとこの家族を見ていたい気さえする。
なんともいえない静かで深い感動の余韻がじぃ~んと残る名作。
年老いた父母が独立して暮らす子どもたちを訪ねる『東京物語』にも通じる。

タイトルにもあるように、いろんな立場にある女性の悲喜こもごもがメインテーマ。
女性はひとりの人間である前に日常でいろんな立場を演じて生きている。
いや、女だけじゃないな。男も長男は長男らしく、次男は次男らしく、
会社では上司の立場、部下の立場で、先輩や後輩、それぞれが自らの
役割でもって考えるあまり、個としての考え方や生き方を忘れている。

加えて、経済成長期でめまぐるしく変化する当時の住宅事情や生活環境、
親との同居などに関する世代間の考え方の違いなども注目したい。
葬儀のお香典に関するシーンで「ウチは500円でいいんですよ。
お金のあるウチは3000円出せばいい」みたいな、現代との物価の差を
感じさせるセリフとかがいつも笑える

原が珍しそうに「これが掃除機なのね?」てうらやましそうに掃除をしたり、
姑さんにしきりに粉石鹸をセールスしたりするシーンなどなど、
昭和の映画はファッション、喋り方など、時代を感じさせる描写がとにかく面白くて好き。

「小津は2人もいらない」と言われたという成瀬監督のエピソードにも納得。
銃も派手なラブシーンもない代わりに日本の家族の姿を淡々と描いて
ハリウッドなんか目じゃない名作ばかり。

昭和の映画はやっぱいいねえ。
以前に小津作品をほぼ観てしまって寂しい思いをしていたけど、
これからまた成瀬作品をいろいろ観れるかと思うと楽しみだ。


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