メランコリア

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世界の名作推理全集 8 ジュニア版 『グリーン家殺人事件』 バン・ダイン/原作

2022-08-27 19:04:56 | 
昭和58年 初版 平成2年 再版 中島河太郎/訳 秋田書店
表紙デザイン:岩尾収蔵 表紙・口絵・挿絵:斎藤寿夫

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します



『黄色いへやの秘密』同様、表紙が怖すぎるから、またカバーをつけた
攻めてるなあ・・・/汗
平成2年 再版でもコレって秋田書店さん、さすがです/礼

いろいろ推理小説を読んで
あとがきなどにバン・ダインという名前が出てきて気になっていた
全集にも入るくらいだから、推理小説界では有名なんだな

私はコレが初見だから期待でワクワクする

「ジュニア版 世界の名作推理全集」は全16巻






【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください


今作では、警察とともに捜査するのが探偵ではなく犯罪研究家で
彼の友人であり、語り手が作者バン・ダインなのが面白い
後で知ったが、ペンネームなのか

最も犯人らしくない者が真犯人の法則からいくと
養女アダ、彼女の唯一の味方の家政婦との関係は
なんとなく最初から分かる感じ

夫人が子どもが殺されても悲しまないどころか
自分を虐待した罰だみたいに言っていて
本当は歩ける説も信じかけたけど・・・

それにしても、この時代の推理小説は本当に
財産家の相続問題が多いな



【内容抜粋メモ】

■はじめに
難しい謎、証拠に基づき、意外な真相にたどりつく作風を「本格推理小説」と呼ぶ
(普通の推理小説との違いが分からないな
ルパンやホームズは、じっくりした味わいに乏しいと思います(そうか?

アメリカは有力な作家に恵まれず、イギリス、フランスで成長した
1930年代のアメリカに突然現れたのがバン・ダイン



【内容抜粋メモ】






■第1章

●バン・ダイン
グリーン家の事件は、表面だけしか報道されなかったが
私(バン・ダイン)が書く記録は、最初で完全、未発表のもの
と丁寧なことわりがある

●バンス
人種学・心理学の研究者 バン・ダインが顧問弁護士
様々な難解な事件を解決して、小説として発表して有名になった


●雪の日の事件
名家で財産家のグリーン家の長女ジュリアが背中を撃たれて殺され
養女で末娘アダは肩を撃たれて気絶していた








長男チェスターがマーカム検事に捜査を依頼
チェスター:今、防がないと、とんでもない恐ろしいことが起きそうな気がする

30年も勤める忠実な執事のスプルートの証言を聞く

ジュリアは前から撃たれて、驚愕の表情をしていた
なぜか2人の部屋には明かりがついたまま

玄関の雪に男の足跡がある

2人とも32口径のピストルの弾丸が使われた
後にチェスターがなくした今では製造されていない
スミス・アンド・ウェッスンだと分かる


先代トビアス・グリーンの遺言
自分の死後25年間は屋敷を保存し、そこに住み続けることが相続の条件
書斎は死後12年間もカギをかけたまま、夫人が開けるのを禁じている

夫人は手足が不自由で歩けず、隣りのアダの部屋と行き来でき
世話をしてもらっている

口が悪く、子どもが殺されても、自分の愚痴ばかりで
みんな辟易する

ドイツ人の女性コック ゲルトルード・マンハイムの証言
13年前に夫を亡くし、昔夫と先代がなにか商売をしていた縁で奉公している

女中ヘミングの証言
信仰心が篤く、グリーン家は信仰心がない悪人ばかり

かかりつけの医師フォン・ブロンの証言
先代からのおかかえ医者

次男レックスはなにか引きずるような音を聞いた


次女シベラ:
グリーン家は変わり者ぞろい
アダが犯人です!
この女は私たちを憎んでいる
アダがチェスターの部屋で銃のある机にしゃがんでいるのを見た


強盗説を押すヒース警部に反論するバンス
念入りに計画された犯行と推理する


●第2章
チェスターがすぐ近くから同じピストルで心臓を撃たれて殺された
その顔も驚愕しており、よく知る人物だったと分かる






前回同様、玄関に積もった雪に足跡がある
それはオーバーシューズと分かる

シベラ:アダを好きなのは、コックのマンハイムだけ

女中バートン 辞める前の証言
アダは大人しそうに見えるが悪魔のようになる時がある
シベラはチェスターと事件についてコソコソ話していた
家族も召使もみんな変わり者ばかり

レックス:
あんたがうちに来るのはシベラがいるからだ
彼女を騙して、財産を手に入れようとしている

ブロン医師:
彼は脳神経症でしょっちゅう興奮する
夫人は一種の神経痛

夫人:
捜査がうるさくて眠れない
長年、虐待されてきた復讐をされたんだ


●ドライヴ
ブロン医師はシベラとアダをドライヴに誘い
シベラはバンスとバン・ダインも誘う

ハドスン川の絶壁に沿った危険な道で車を停め
美しい景色を見ながら、ここから車ごと落とせば
事故に見せかけて人殺しができると豪語するシベラ




■第3章





アダは階段の後ろで紙切れを拾ったと話す
オウムと3つの石などの絵は
ドイツやオーストリアの泥棒の使う暗号だと興奮するヒース警部

家の秘密の郵便箱に入ってるからレックスに持ってこさせると電話する
その数分後に、レックスが死体で発見された






●レックスの殺害
同じピストル、足跡はバルコニーについていた
そのオーバーシューズは2階の押し入れから見つかる

表情は意外なほど自然(なにかのトリックか?

屋敷には室内電話がいくつかあり、どこからでも盗み聞きが可能(コワイな/汗
アダの言う紙は見つからなかった

バンス:
犯人はたぶん、この家にいるでしょう
外から来たと思わせるために、わざとつけた


●毒薬
ブロン医師のカバンから劇薬が盗まれた
ストリキニーネ(この時代の推理小説によく出てくるな/汗
モルヒネ、カフェイン(劇薬の一種なの?!

婦人警官オブライエンが看護婦としてアダを警護する
屋敷にも万全な警備がある

バンスはすぐ手当てすれば助かるから
医師とクスリを準備しておくよう命じる


相続の遺言内容
先代の死後25年過ぎたら、遺産はどう処分してもよい
旅行は3か月以内まで

アダは結婚したら、どこに住んでも相続権利は有効

スプルートはいつ辞めても十分にもらえる
マンハイムは25年後に一生分もらえる

夫人が亡くなれば、子ども全員に等分に分けられる
1人死ぬごとに、他の子どもが余計にもらえる

全員死ねば、娘に夫があれば夫のもの
独身なら国家のものになると思われる

フシギなのは、25年後に先代の図書をNYの警視庁に寄付するという遺言



●図書室の謎
図書室のカギは夫人の宝石箱の中だが、誰でもすぐに合鍵が作れる






夫人の猛反対を押し切って入ると、厚く積もったホコリの部屋で
ドアノブとロウソクだけは最近誰かが使ったことが分かる

ここにオーバーシューズが隠されていた

あらゆる犯罪学の図書の宝庫!
最近読まれたのは、ハンス・グロス教授著『裁判官のための犯罪学入門』
毒薬の本もある

誰かが広間で立ち聞きしていたが誰かは分からない

アダ:
昨夜、真夜中に図書室の前に母がいた!
マッチをすったから顔も見た







両脚が本当に麻痺しているか、ほかの医師に診せることに同意するブロン医師



●毒殺
夫人はストリキニーネ入りの炭酸水を飲まされて殺されていた
苦味が誤魔化されて気づかなかった






アダはスープにモルヒネを盛られたが
バンスの用意した医師のお蔭で胃から吐き出させ、人工呼吸で助かった
シベラの子犬の歯に糸がひっかかって、ベルが鳴り、執事が気づいた
(これもなにかのトリックだね

シベラはついに耐えられず、アトランティック・シティの友人宅に泊まりに出かける
警官に尾行させる

女中ヘミングも辞めて
グリーン家に残ったのは、アダ、スプルート、マンハイムだけになる

バンス:
そうだ この事件は恐ろしいほど粘り強い元気、残忍さ
大胆、野心、冒険に満ちた若者でなければできない

死体解剖の結果、夫人の足はボロボロで歩くのは不可能と分かる

バンスはこれまでの事実を日付順に並べた書類を読みふける
後にこれのお蔭で事件が解決する


●牧師からの手紙
新聞で事件を知った牧師からの手紙で
シベラとブロン医師が秘密裏に結婚したことを明かす


●マンハイムの証言
夫を亡くしたのは13年前
先代に会って、アダが養女にされたのは14年前
アダはマンハイムと先代の子だと明かす

きょうだいは皆ドイツ語が分かる








●シベラの帰宅
バンスは大体の真相が分かったと言って
急に8日間の旅行に出かけて帰った

シベラがブロン医師、アダとともにドライヴに出たと知り
バンスは警部らとともに車を運転し、ものすごいスピードを出して
例のハドソン川を見下ろす崖に向かう

ブロン医師の車を追いこし、車を停めると
医師は途中で往診のために降りて
シベラは殴打されて意識不明状態

バンスはアダの両手を抑えるが、野獣のように怒り狂い
信じられないような罵り声を上げる

バンスはシベラを病院に連れて行くから
アダには手錠をかけて検事局に連れて行く途中、注意するよう言うが
以前から万一のために用意していたシアン化カリを飲んで自殺

シベラは軽い打撲だけで済んだ



●犯行手口
バンスはこれまでの事件を順番に明かしていく

アダはハンス・グロス博士の著書をメインに
計画、方法を細かい点まですっかり真似していたと分かる

マンハイムの夫は、犯罪性精神障害のために入院していた
ドイツの有名な犯罪者で、殺人罪で死刑宣告を受けたが脱獄してアメリカに来た
それには先代が関わったと思われる

アダにはその性格が遺伝した

動機は遺産だけではなく、14年間、家族から見下され、こき使われてきた憎しみと
ブロン医師を愛していて、彼はシベラを愛していると知り
家族全員を殺し、遺産と医師を自分のものにしようとした

図書室の合鍵をつくり、犯罪学を学び
まずは家事を切り回していたジュリアを殺した

自分も撃たれれば犯人から外される
ピストルはヒモで結び、窓の外に落ちて、後で回収したため
雪に埋もれて見つけられなかった
(ホームズの事件にもそんなトリックなかったっけ?

オーバーシューズの足跡もアダがつけた

夫人を犯人に仕立てるつもりが、事件の最初にシベラに指摘されたため
チェスターに変更した

レックスの部屋とアダの部屋とは暖炉でつながっていた
そこを秘密の郵便箱にしていて、ピストルを仕掛け
開けた途端に発射される仕掛けにした

広間で紙きれを拾った話はウソ

図書室で立ち聞きしていたのもアダ
夫人が歩いていた話もウソ

モルヒネを飲み、シベラの犬にヒモをつけて助けてもらう細工をした
その後、夫人に毒の炭酸水を飲ませた

シベラ殺しの方法は、シベラ自身が言った言葉をヒントにした
すべての犯行は雪の日に行われた


高等裁判所で遺言は変更され、25年間住む条件は無効になり
全財産はシベラとブロン夫婦のものとなる

屋敷は壊され、土地は売られ、マンハイムは故郷のドイツに帰った
夫婦はウイーンに住み、長男が生まれたとしらせが届く








解説 中島河太郎
バン・ダインが最初の長編『ベンスン殺人事件』を出版したのは1926年
名の知れぬ新人の作品にもかかわらず初版が1週間で売り切れた

2作目『カナリヤ殺人事件』は翌年刊行
これまでの推理小説のあらゆる記録を破り
日本含め、12か国語に訳された

バン・ダインはペンネーム
本名はウィラード・ハンチントン・ライト 1888年生まれ

15年間、頭を酷使する仕事で神経を害して、病院で療養生活を送る
少年時代に楽しんだホームズ(!)を思い出し、推理小説をむさぼり読んだ

古書店から過去70年間の作品を探させ、2000冊を集めた
自分ならもっとうまく書けると思い
当時、出版社をやっていた大学時代の友人に作品を見せると
「これこそ社で望んでいた本だ」と言われて発売された

バン・ダインは誰か、探偵的な方法で明らかにする試みがされ
自身も候補にされていた(w

教授にバン・ダインとして手紙を書き
友人に本名で書いたところ、同じ便せんだったためバレた

名前を隠していた2年間で、本屋から自分の作品をすすめられて
仕方なく買ったエピソードもあるw

3作目が本書
次の『僧正殺人事件』とともに古典的名作となる


「1人の作家に6つ以上はいい作品は書けないから、自分は6冊でやめる」
と言ったが12の長編を書いた

『真冬の殺人事件』を刊行した1939年、51歳で亡くなった(早いな
活躍はわずか13年だが、アメリカを代表する世界的な作家となる



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