※「小川未明まとめ」カテゴリー参照
2018年初版
小川未明さんのこの絵本シリーズはどれも味わい深い
古志野実
1949年〜2014年 島根県生まれ

月を描いてきた画家さんはたくさんいるけれども
とっても力強い筆でいろんな距離感、質感の月を
何ページにもわたって描いている
特に見開きの月は、私の好きな絵の具が盛り上がったタッチが
月面のクレーターみたいに立体化していて素晴らしい
一枚の絵として飾っておきたい
原画もそれなりに大きかったのでは?

あとがきがあって、小川英晴さん(詩人)や
小川和美さんって未明さんの親戚なんだろうか?
【あとがき 新たな旅の始まりに 小川英晴さん(詩人)】
魂で描いた作品には、自らの魂で応えなければなるまい
古志野さんの作品は、まさに全身全霊をもって未明の物語に応えた絵だと言える
雪深い高田(現在の上越市)で生まれた未明は
常に全身で事物と向き合い
人の力ではどうすることもできない
大自然の恐ろしさを目の当たりにしてきた
ここにあるのは始まりはあっても終わりのない物語
物語の続きは一人一人の読者の心が語ってくれる
小川未明原作の『月とあざらし』、『負傷した線路と月』、『殿さまの茶碗』の3編の絵本は
古志野さんのアニメ作品を絵本にしたいと願う
森下成一(スタジオトゥインクル)の熱い想いから始まった
その後、架空社の前野眞さんの協力を得てこれで10冊になる
暗い、不条理、死の匂いという負のイメージに新たな観点を指し示すべく
小川和美によって選ばれた30編の作品を中心に絵本化が始まった
てことは、あとまだ20冊出る予定なのかな
近所の図書館にまだない絵本もあるから
取り寄せて全部読んでみたい
宮沢賢治と同じく、原文はきっともっと古い仮名遣いで書かれているのではないだろうか
こうして短編を丁寧なイラストレーションと一緒に楽しめる絵本にしてくれるのは
とてもありがたい
【内容抜粋メモ】
ある日、汽車が重い荷物を載せて通った時に
レールに傷がついてしまい
痛みに耐えられず泣いていた

自分ほど不幸なものがあるだろうか
毎日毎日、重い機関車に頭を踏まれなければならない
機関車はそれを平気に思っている
太陽は身を焼くほど照らしつけるが
自分は自由に動くことができない
そばに咲いている薄紅色のなでしこの花が
「どうなさったのですか」と尋ねて慰めてくれる
事情を話すと
「あなたのような強い方がお泣きなさるのは
よくよくのことでございましょう」
と親切にしてくれて嬉しく思う
なでしこ:
私の命も長くありません
長いこと雨が降らないので弱っています
レールは自分の体が遠くまで続いているから
夕立がもうすぐやってくるのを教えてあげるととても喜ぶ
風も「もう少ししたら雨雲が来る」と教える
しばらくすると雨が降り、レールを冷やして
傷跡を洗いながら
「かわいそうに」と慰める

雨:
もうじき私たちはここを去らねばならなりません
その後にはきっと月が出るでありましょう
そのことを月にお話しなさい
決して悪いようにはしなかろうと思います
雲が晴れた後は夕空が美しく見える
このなんとも言えない空のグラデーションがとても美しい

自然にもそれぞれ魂があって
こんな風に静かに話しているかと思うと
胸が締め付けられる
月に事情を話すと
「そんなことをして知らぬ顔をしているとは冷酷な機関車だ
私が諭してあげるから」というと
レールは機関車の番号を教える
月は早速力の及ぶ限り機関車を探して歩くが
なかなか見つからない
レールは涼しい一夜を送って
昨日の苦痛をもう忘れていたけれども
月は約束を守って探し続ける

停車場にずっと休んでいる機関車がいて
「どうしてそんなに沈んでいるのだ」と聞くと
機関車:
私はどんなに疲れているかしれません
毎日毎日、遠い道を走らされるのです
昨日は重い荷物をつけさせられて
どこかでレールと触れ合って
一つの車輪を傷つけました
「どうぞお大事に」と言って
月は今度は船の上の箱の荷物に話しかける
箱の荷物:
私たちは故郷を出てから長い間汽車に乗せられました
この広々とした海の上をあてもなく漂っていると心細くなるのです

月は一体誰が悪いのかと考えました
そして今度は人間の様子を見ようと
2階の窓ガラスから覗くと
可愛らしい赤ん坊が月を見て喜んで笑っていたのであります


未明さんの話は、いつも唐突に終わってしまうけれども
これも読者にその後を委ねているのかな
善悪関係なくあらゆる物事が
あるがままなんだということを言っている気がして
やっぱり胸がぎゅっと締めつけられた
まんまるな赤ちゃんの顔と月が似てるね
2018年初版
小川未明さんのこの絵本シリーズはどれも味わい深い
古志野実
1949年〜2014年 島根県生まれ

月を描いてきた画家さんはたくさんいるけれども
とっても力強い筆でいろんな距離感、質感の月を
何ページにもわたって描いている
特に見開きの月は、私の好きな絵の具が盛り上がったタッチが
月面のクレーターみたいに立体化していて素晴らしい
一枚の絵として飾っておきたい
原画もそれなりに大きかったのでは?

あとがきがあって、小川英晴さん(詩人)や
小川和美さんって未明さんの親戚なんだろうか?
【あとがき 新たな旅の始まりに 小川英晴さん(詩人)】
魂で描いた作品には、自らの魂で応えなければなるまい
古志野さんの作品は、まさに全身全霊をもって未明の物語に応えた絵だと言える
雪深い高田(現在の上越市)で生まれた未明は
常に全身で事物と向き合い
人の力ではどうすることもできない
大自然の恐ろしさを目の当たりにしてきた
ここにあるのは始まりはあっても終わりのない物語
物語の続きは一人一人の読者の心が語ってくれる
小川未明原作の『月とあざらし』、『負傷した線路と月』、『殿さまの茶碗』の3編の絵本は
古志野さんのアニメ作品を絵本にしたいと願う
森下成一(スタジオトゥインクル)の熱い想いから始まった
その後、架空社の前野眞さんの協力を得てこれで10冊になる
暗い、不条理、死の匂いという負のイメージに新たな観点を指し示すべく
小川和美によって選ばれた30編の作品を中心に絵本化が始まった
てことは、あとまだ20冊出る予定なのかな
近所の図書館にまだない絵本もあるから
取り寄せて全部読んでみたい
宮沢賢治と同じく、原文はきっともっと古い仮名遣いで書かれているのではないだろうか
こうして短編を丁寧なイラストレーションと一緒に楽しめる絵本にしてくれるのは
とてもありがたい
【内容抜粋メモ】
ある日、汽車が重い荷物を載せて通った時に
レールに傷がついてしまい
痛みに耐えられず泣いていた

自分ほど不幸なものがあるだろうか
毎日毎日、重い機関車に頭を踏まれなければならない
機関車はそれを平気に思っている
太陽は身を焼くほど照らしつけるが
自分は自由に動くことができない
そばに咲いている薄紅色のなでしこの花が
「どうなさったのですか」と尋ねて慰めてくれる
事情を話すと
「あなたのような強い方がお泣きなさるのは
よくよくのことでございましょう」
と親切にしてくれて嬉しく思う
なでしこ:
私の命も長くありません
長いこと雨が降らないので弱っています
レールは自分の体が遠くまで続いているから
夕立がもうすぐやってくるのを教えてあげるととても喜ぶ
風も「もう少ししたら雨雲が来る」と教える
しばらくすると雨が降り、レールを冷やして
傷跡を洗いながら
「かわいそうに」と慰める

雨:
もうじき私たちはここを去らねばならなりません
その後にはきっと月が出るでありましょう
そのことを月にお話しなさい
決して悪いようにはしなかろうと思います
雲が晴れた後は夕空が美しく見える
このなんとも言えない空のグラデーションがとても美しい

自然にもそれぞれ魂があって
こんな風に静かに話しているかと思うと
胸が締め付けられる
月に事情を話すと
「そんなことをして知らぬ顔をしているとは冷酷な機関車だ
私が諭してあげるから」というと
レールは機関車の番号を教える
月は早速力の及ぶ限り機関車を探して歩くが
なかなか見つからない
レールは涼しい一夜を送って
昨日の苦痛をもう忘れていたけれども
月は約束を守って探し続ける

停車場にずっと休んでいる機関車がいて
「どうしてそんなに沈んでいるのだ」と聞くと
機関車:
私はどんなに疲れているかしれません
毎日毎日、遠い道を走らされるのです
昨日は重い荷物をつけさせられて
どこかでレールと触れ合って
一つの車輪を傷つけました
「どうぞお大事に」と言って
月は今度は船の上の箱の荷物に話しかける
箱の荷物:
私たちは故郷を出てから長い間汽車に乗せられました
この広々とした海の上をあてもなく漂っていると心細くなるのです

月は一体誰が悪いのかと考えました
そして今度は人間の様子を見ようと
2階の窓ガラスから覗くと
可愛らしい赤ん坊が月を見て喜んで笑っていたのであります


未明さんの話は、いつも唐突に終わってしまうけれども
これも読者にその後を委ねているのかな
善悪関係なくあらゆる物事が
あるがままなんだということを言っている気がして
やっぱり胸がぎゅっと締めつけられた
まんまるな赤ちゃんの顔と月が似てるね