メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『噂の女』

2007-03-31 19:51:28 | 映画
『噂の女』(1954)
監督:溝口健二 
出演:田中絹代、久我美子、大谷友右衛門、進藤英太郎、見明凡太朗 ほか

成瀬シリーズがひと段落してしまって、次に目に留まったのが溝口健二コーナー。
森雅之の出演した『雨月物語』と『楊貴妃』は見た記憶があったけど、
大好きな久我美子が出演している今作は記憶が曖昧だった。
観てみたらやっぱりだいぶ前に観たかもw

▼story
老舗遊郭・井筒屋のひとり娘・雪子は東京で音楽学校に通っていたが、恋破れて
自殺未遂をして、母に連れられて実家に戻ってくる。
太夫たちの修羅場を見るにつけ、家業を恥に思うが、医師・的場の言葉に勇気づけられる。
しかしその的場は母と関係があり、母は彼の開業の資金を苦労して工面している。
急速に親しくなってゆく娘と医師の様子に嫉妬と焦りを隠せない母親。

髪を結い上げた着物姿の太夫らに囲まれてひとりベリーショートのヘアスタイル、
モダンでシックなワンピースでシャンとした立ち姿の久我はまさに日本のオードリーだ
張りのあるあの独特な声質と喋り方もほんとステキ

病気の父を助けるために太夫になりたいとせがむ若い娘さんに
「そんなイージーな考え方はよくないわ。考え直しなさいよ」とキッパリ。
彼女のセリフでどんなモノクロの邦画も欧米のクラシック映画のように見えてくる。

母として娘の幸せを願うことと、女として医者の奥さんに落ち着く幸せの狭間に揺れる
心の葛藤、嫉妬を見事に演じている母役の田中と、母を想いつつ、遊郭の家の娘として
複雑な環境に苦しむ娘役の久我の競演もみどころ大。

久我と森雅之との共演作もいろいろあるけど、『挽歌』での芯のある女学生の役も
よかったなあ!
「わたしをただのアミ(愛人)にしておいて!」て名セリフも耳に残る。

コメント