「日々これせっせとお薬作り」 -製薬会社新米研究員SIUの日常-

新薬の研究に営む毎日・・・のはず。製薬会社研究職の日常をつたない文章でつづります。

今年はありがとうございました(2005年の製薬業界を予想!その1)

2004年12月31日 | スペシャル
今年も残すところ、あと一日です。
昨夜は実家に帰るため、ほぼO/N*で車に乗っていた
SIUです。腰が痛い…

このblogを初めて2週間少しですが
最近、ほんの少しだけ閲覧数が増えてる(かも…)
何人か固定のお客さまがいる(のですか?)
たまたま、間違ってボタンを押した人がいるだけでは?
(まったくもって自信の無いワタシ)
もし定期的に見てくれる方がいるのなら
ありがとうござます。

見に来ていただけるとやる気が出ます!
出来る限り毎日更新、毎日洗練していますので
いつもとは申しません、週に一度は来てくださいませ(笑)

さて本日は大晦日特別として
SIUが大胆予想させていただきます。


……
………
…………曙vsホイス*はバックマウントからのチョークで
ホイスの勝ち…
ちがーう!!!

K-1の結果予想も自信がありますが、そうではなく
2005年の製薬業界です。
大胆予想行きます。

[巨人・アステラスの強さ(2005年の製薬業界を予想!その2)]に続く…



補足*

O/N*
「Over Night(オーバーナイト)」と読む
一晩中の意。
大学時代の研究室で良く使われていましたが
この分野で一般的かと、言われれば自信が無い…
使いますよね?

使用例1
実験プロトコルにて
「E.Coliを37℃,O/Nで培養した後
Plasmid prep.を行い…」

使用例2
明け方6時の研究室にて
「昨日は、ほぼO/Nでセミナーのレジュメを
作っていたんで、今から2-3時間寝てから、また来ます」

使用例3
ある恋人の小さな亀裂
「せっかく家で、ご飯作って待ってたんだぜ…
実験でO/Nだったからしょうがない? なんでお金も
貰ってないのに、そんな働かなきゃいけない訳?
おれ理解できないよ。もういい、とりあえず今日帰るわ」


曙vsホイス*
結果、オモプラッタでしたね。
オモプラッタって、柔道にも
実はある技なんですよね。
膝固めって技が「寝技で勝つ柔道」
に書いてありました。
・・・って、コメントしますが
このブログを読む人の
99%がオモプラッタを知らないと
思われ(笑)

巨人・アステラスの強さ(2005年の製薬業界を予想!その2)

2004年12月31日 | スペシャル
この前も製薬会社の再編について書きましたね。
最近の国内合併について、おさらいしましょう。

最近の内資の合併(予定も含む)
・住友製薬+大日本製薬→大日本製薬(新会社名?)
・グラレン製薬+帝国臓器→?(新会社名知りません)
[2005.1.25追加情報 新社名「あすか製薬」に決まったそうです]
・山之内製薬+藤沢薬品→アステラス製薬*
・ 大正製薬+富山化学→大正富山化学(出資会社名)


やはりこの中でインパクトがあったのは
「アステラス」でしょう。
(その2)では巨人アステラスの戦力分析をしたいと思います。

「泌尿器の山之内*」と「免疫抑制の藤沢*」という
国内で勝ち組と言われる、2社が組む事により
武田に続き、世界トップ10を狙える会社が出てきました。
この合併のメリットは、以下の3点ではないでしょうか
・販売力の強化(主に世界的な市場において)
・パイプラインの強化(研究・開発費増も含む)
・ 間接部門費の削減


販売力の強化について
合併によって、国内のMRさんが2700人体制になることが
メリットと評す場合もあるが、人件費の増加もおこるため
一概に多ければいいとは限らない。
(まあ、いまのファイザー日本支社を見てると
とにかく多いほうが良いようにも見えますが…)
それよりも、お互い北米市場と欧州市場という違う地域に
販売網をひいているため、今まで充分に売ることが出来なかった
市場において、自社製品を売れる体制が出来あがることになる。
これが合併における、販売力の面での一番の効果であると
SIUは考える。

・パイプラインの強化
単純に今フェーズに乗っている化合物が増える
導入品を入れるときにキャッシュフローに余裕があるので
導入しやすい。研究開発費が増えるためいい研究が出来る
(…と経営陣は思う)こんなことがメリットとしてあがるだろう。
良くいわれることは、藤沢が化合物(微生物由来)から薬を
作る事を得意とするのに対し
山之内はターゲット因子を狙って行く手法を得意と
するため、違ったアプローチが可能になる
ということだ。
正直に言うとSIUは、そうそう簡単に理屈どおりには
行かないと思っています。
古い日本的な考え方*のように思えるかも知れませんが
その理由としては、顔見知りじゃないと
仕事が進みにくということは、よくある話だからです。
一つの会社として混ざり合うのは、
想像以上に時間がかかるでしょう。恐らく年単位で…
ただし人材の交流がなされ、一体感が出てきたときには
スクリーニング法だけで無く、重点疾患領域も異なる2社ですので
とても腰のしっかりした(つまり薬の出せる)会社に
なるでしょう。
たとえば、心臓を狙っていたバイアグラが勃起不全薬になったように
結果として出来た薬が最初に狙っていた疾患ではなく
他の疾患に効く*ということはよくある事です。
しかし、循環薬を作ろうとして、結果として
免疫系に効く薬が出来たとしても、自社でその領域が
無ければ充分にフォローアップが出来ません。
この意味でも「アステラス製薬」というのは
強い会社といえるでしょう。
大きい事=強い事という構図は様々な所に現れます。

間接部門費の削減
SIUはこれが一番早く、結果が出てくると考えています。
社員が倍になっても間接部門は倍の人数要りません。
早々に早期退職制度を用いて、人件費の抑制が
行われるはずです。
どこの会社にも働き以上の給料を貰っている人が
いますよね?(あー、ゴメンナサイ私かも…)

以上、長々と書いてきましたが
2005年は必ずしもアステラス製薬にとって
良い年ではないかもしれません、ただ
SIUは短期的な不安はあるせよ、中・長期的には
「アステラス製薬」は世界と互角に闘える
非常に有望な日本発の企業
だと
考えております。がんばれ明日を照らしてくれ!
しがない新米研究員のためにも…(笑)

あー、つかれた。
年末に何やってるんでしょうね、ワタシ
仕事でもないのに…(笑)
でも続きます。

製薬業界の再編[国内](2005年の製薬業界を予想!その3)に続く

(2005年の製薬業界を予想!その2)の*補足

2004年12月31日 | スペシャル
泌尿器の山之内*
別名「おしっこの山之内」
別に山之内の社員が、よくおしっこに行く
という訳ではない。
ハルナール*(一般名:塩酸タムスロシン)という
排尿障害に対するお薬が、良く売れており
また最近、承認がおりたお薬に頻尿・尿失禁治療薬
Vesicare(ベシケア*)という大型化が望める製品を
有しているため、このような名称で呼ばれたりする。
というか社員が自分で言っているらしい(笑)
ひと昔前は、ピカ新ではなくゾロ新を多くそろえていたため
「まねのうち」とさげすまされていたが、今は豊富な
パイプラインを持つ。社長の竹中さんが研究畑を
歩んできただけあって(いまでも毎年・薬理学会は
欠かせないと、日経に書いていた)
ゲノム情報にもかなりのお金を落したようだ。
(有効に使えてるのかな?)
さあ、みんな
アステラス製薬になるまでの残された時間に
尊敬の念をこめて呼ぼう「おしっこの山之内」と…
(2004.12.31)(2005.1.7改定)

ハルナール*
製品名:Harnal(米ではFlomax)
[一般名:tamsulosin HCl(塩酸タムスロシン)]
山之内製の排尿障害に対するお薬。
この薬は軽症~中等度の前立腺肥大症等で
おしっこが出にくくなった人に使われたりする
(らしい)
このオクスリはα1受容体の拮抗作用を持ち
それにより薬効が発現している・・・
らしい(笑)
このオクスリは非常に良く売れていて
山之内のHPから2004.11.4の株主向け資料で
確認すると、ハルナールの売上は681億円/yearで
あると記されている、すごいね!
(2005.1.7)[Special Thanks:gumecchimanさん]

ベシケア*
製品名Vesicare(ベシケア)
[一般名:solifenacin succinate(コハク酸ソリフェナシン)]
山之内製の頻尿・尿失禁治療薬。
どんなオクスリかというと・・・
一般的に年をとると、そんなに尿が
たまっていないのにもかかわらず
頻繁におトイレに行きたくなる。
これが「頻尿」。頻尿は過活動膀胱等の原因によって
もたらされるが、Vesicareはこれに抗する作用を持つ
新薬。作用機序はムスカリン受容体拮抗によるもの。
米国FDAにより2004年11月に承認された
大型化が見込まれる製品である。
(2005.1.7)


免疫抑制の藤沢*
藤沢が国内で勝ち組と呼ばれる理由、それが…
免疫抑制剤 FK506(一般名:プログラフ)
臓器移植の際に欠かすことの出来ない、この薬の元は
筑波山の山中に住む微生物から見つけられた。
当時、筑波に研究所を持つ他社の研究本部長はみな
これを見つける事の出来なかったために
本社に呼び出され怒られたという、いかにも作り話っぽい
お話しが残っている。
なぜ、筑波の山中からこんなものが見つかったかというと
製薬業界において一時期、森林の色々なところをつついて
微生物を培養し、その中から有効な化合物の骨格を
見つけ出す事が流行った
(らしい、SIUは当時を知りませんので)
からである。
ちなみに、その当時、出張の際にはみんな竹串を渡され、
地面をつついて来るように言われた、らしい。
(ホントかなぁ…)
微生物由来の化合物のメリットは、思いもつかないような
変な骨格の化合物を作り出してくる事
(と化学屋さんが言っていた)
今ではこの分野にしぶとく力を入れているところは少ないが
成功体験がある藤沢は、やはり力を入れているようだ。
(2004.12.31)

古い日本的な考え方*
SIUは会社に入るまでは「仕事ではきっちり付き合うけど
プライベートでは別だぜ」って、アメリカンに考えていましたが
「趣味とか、全然仕事と関係無い分野で会社の人と仲いいと
仕事まで、うまく進むなぁ」というのが会社に入った後の感想。
自分でもこうなるとは意外。
まあ、自分の趣味が主で会社の付き合いはあんまり無いけど(笑)

最初に狙っていた疾患ではなく、他の疾患に効く*
現在、多くの会社において
重点疾患領域の絞込みが行われています。
経営において資本の選択の集中を行う必要性は
理解しますが、選択と集中が最終的にものを出すこと
(薬を上市すること)にプラスである、とは
断言できないことを、経営陣に覚えておいて
頂きたいと思います。
アリセプトにせよ、メバロチンにせよ社内で
必ずしも順調なプロジェクトでは無かった
ということが、一つの証であると思われます。
…ってこんなこと、マジにweb上に記して
どうする気だワタシ?(涙)

製薬業界の再編[国内](2005年の製薬業界を予想!その3)

2004年12月31日 | スペシャル
さて(その3)までたどり着きました、この章では…
ズバリ今年、合併する製薬会社(国内)を予想して見せます!
外れても石投げないで下さい。
ちなみに…
(諸注意)
ペーペーのワタシは当たり前ですがインサイダー情報などは
まったく持っていないので、推測の根拠になる情報は
全て新聞記事やプレスリリースから得た物です。
(これも当たり前ですが)
間違っても信じて株を買って儲けようとか思わないように。
合併が決まって、どっちの会社も下がる事だって
あるんだからね。

というわけで、ズバリ
2005年合併しそうな会社群は…
科研製薬*
田辺製薬*
第一製薬*
三菱ウェルファーマ*
持田製薬*
です、多いなぁ。
(あいうえお順ですから、順番に気を悪くしないでね)
この規模の会社は研究開発型のメーカーとしては
一社では生き残れないと十分考えていると思います。
そして、これがあればしばらく食べて行ける、という
強い商品を抱えているとはいい辛い状況です。
したがって、どの組み合わせかは断言できませんが
ここの中で合併が行われる確率は、かなり高いと
考えています。ただし、田辺製薬は大正との合併に
一度失敗しているので、その辺の事がどのように
今後の行く末にどのように影響を与えるのかは
判断しにくいですね。
[2005.1.19に過筆:第一の製品・クラビットを導入品だと
勘違いしてました・・・ 自社製品なのでお金は今のところ
SIUの思っていたよりも余裕があるはずです。したがって
「合併ややしたい企業」の方に移動させた方が良いと思われます]

上記の会社がホントは手を組みたい会社
三共*
エーザイ*

潤沢なキャッシュフローをもつ三共と
アリセプトを持つエーザイ。
どちらも当分は合併しなくても
自社で生きていける。
しかし生きていけるのと、合併の有無は
また別、どのように動くかは勿論わからないが
上記、合併したい組はこの2社のどちらかと合併できたら
「ばんばんざい」と考えているのではないでしょうか?
逆にこの2社にとっては、上記会社と合併することに
それ程メリットは見出せないかもしれない…
塩野義*はスタチンの行方が気になる所ですが
合併「やや」したい組だと思われ、
案外、三共かエーザイと手を組むのは「ややしたい組」かもしれません。

外資に買われそうな会社
小野薬品*
キリン*(今年はない?)
キッセイ薬品*
日本新薬*

プロスタグランジンの小野薬品。
小粒でもピリリと辛いキッセイ薬品。
2社ともけして大きいわけではないですが
独特の強い研究領域を持つため
外資には魅力的に、うつるのではないかと考えています。
これまでに書いた会社群に比べ、時価総額が低いのも魅力です。
日本新薬もほぼ同じ理由ですが狙われる気がしましたが
独特の技術というのが、RNAiに関する事なので、
これからRNAiがどのくらい有望な技術に
なってくるかによって買収の可能性が動くと思われます。
2005年の内は買われないかな?
キリンの医薬部門もカラーとして同じなのですが
キリン本体の考え方としては、酒部門のほかに
柱が欲しいと思われるので、本体から切り離すという戦略は
この一年は無いのではないか、と思います。

行く先読めないオーナー企業
大塚製薬*
三共*
大正*

これら企業はオーナー会社であり
会社の状態よりもトップの意見で決まる事が
予想されますので、予測困難です。

大胆予想
武田薬品*
国内向うとこ敵無しの武田薬品ですが
世間では「エーザイか三共を買うのでは」なんて
言われてるらしい…
しかし、あえてSIUは確率の低い予想をしてみます。
当たったら誰か誉めてください、誰も読んでなったら…
どうしよう…(涙)

武田がアボット社を買う、というのはいかがでしょう?
売上順位的にはアボットのほうが上ですが、
サノフィ+アベンティスの事例で小さい会社が
大きいほうを飲み込むことが、可能であることがわかりました。
武田は潤沢過ぎるほどキャッシュフローを持っており
(株主に、還元せよとのプレッシャーをかけられるほど)
不可能ではないと考えます。
では、なぜアボットなんでしょうか?
武田は北米市場においては、TAPという合弁会社を
アボットと作って薬を販売しています。
(TPNAという100%子会社もある)
武田の考えとしてはTAPを完全子会社化し
北米による利益率を上げたいはずである。
事実TAPの譲渡交渉が行われていたようだが
まとまりはしなかったようだ。
しかし、アボット本体ごと買収してしまえば
おのずとTAPもついてくる。
国内の中堅どころと、ちまちま手を組むよりも
よっぽど武田的な発想だと思うんですが、
いかがでしょうか?