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森の詞

元ゲームシナリオライター篠森京夜の小説、企画書、制作日記、コラム等

日々の生物(ナマモノ) 第8回

2008年11月15日 | 日々の生物(ナマモノ)

昆虫編-2


Q:「海岸にいるゴキブリみたいなのは何ですか?」
A:「フナムシです」

 フナムシは陸上に住んでいる甲殻類(エビやカニ)で、ダンゴムシの親戚です。水がなければ死んでしまいますが、泳げないという中途半端な生物です。ムシと名前にありますが、昆虫ではなく「エビが陸上を走り回っている」ような生物だと思ってください。
 動きがゴキブリに似ているのは、恐らく偶然です。


Q:「昆虫はどうして足が6本なんですか?」
A:「昔はもっと多かったのですが、だんだん減って6本になりました」

 昆虫の祖先はムカデのように体が長く、体節(殻で覆われた区分)ごとに足が生えている構造だったと考えられています。ただし、この祖先には今の昆虫に見られるような「触角」や「羽」はなかったようです。昆虫の進化の過程でたくさんあった足は退化、もしくは別の形に変わっていきました。現在の昆虫の「触角」や「羽」は足が変化したものです。その他、昆虫の口には「口吻」というキバみたいなものがありますが、あれも同じ由来です(蝶の口のストローみたいなのも)。
 他にも「尾の部分にある毛」(カゲロウとかありますよね)や「ハサミムシのハサミ」も原始的な足が変化したものです。



  
      カゲロウの尾の毛

 足が退化したことは、イモムシの足からわかります。イモムシの足はお腹の方にもありますが、蝶になると胸の6本以外はなくなります。イモムシのような足が、祖先種での足の付き方で、成虫が現在の昆虫での足の付き方になります。ですから、蝶はイモムシから成虫になる過程で進化の歴史を辿っている、ということになりますね。
 足の数が少なくなった理由は不明ですが、考えられる理由の1つとして、「足が多いと飛べないから」というのがあります。足の数が多いと、その分体重が重くなります。重いと飛ぶのが困難なので、飛べるようになるのと同時に足の数も減っていった、というわけです。
 ムカデとかゲジゲジは足の数が多いままなのですが、こいつら絶対に飛べそうにないですよね。

 ちなみに動物として陸上に初めて進出したのも、初めて空を飛んだのも昆虫(節足動物)と考えられています。昆虫をナメてはいけません。


今回の全く役に立たないトリビア
 蚊取り線香を作っている「キンチョー」の正式な社名は大日本除虫菊株式会社(だいにほんじょちゅうぎくかぶしきがいしゃ)。「金鳥=KINCHO(きんちょう)」は商標名であり、会社名ではない。

日々の生物(ナマモノ) 第7回

2008年11月14日 | 日々の生物(ナマモノ)

昆虫編-1

 私は農学部出身なんですが、実は昆虫の研究は農学の範疇です。実際には「害虫防除」のほうから研究している場合が多いですが(このテーマだと実用性が高い)、やっている人には虫好きが多いですね。虫への愛ゆえに防除できるのです。


Q:「蚊はどれくらいの量の血が吸えるんですか?」
A:「自分の体重とほぼ同じだけ吸えるらしいです」

 どこを探せばいいんだ、こんな情報………と思いましたが、「キンチョー」のHPにありました。さすがは大正時代から日本の害虫を殺しまくっている会社です。やはり害虫防除と虫への愛情は表裏一体ですね。蚊の体重は2~3mgだそうなので、1匹で約2~3mℓの血が吸えることになります。血を吸った蚊の動きが鈍くなるのも当然ですね。
 蚊は基本的に花の蜜や植物の汁を吸いますが、メスの蚊だけは卵を産むのに必要なタンパク質を摂取するために血を吸います。オスの蚊は一生、血を吸いません。
 ちなみに成人は約60%が水分です。私は体重が約60kgなので36ℓの水分があります。ですから12000~18000匹の蚊に一度に血を吸われると、体中の水分が全てなくなる計算になります。
 ……まあ、1万匹以上の蚊に襲われることを考えただけで死にそうですが。


Q:「以前、この紙(A4の1/4)より大きなガガンボを見ましたが、そんなことありうるの?
A:「ありえます。自分の目を信じてください」

 蚊によく似た足の長~い虫を見かけると思いますが、名前を「ガガンボ」と言います。「蚊の母」という意味だったのが、変化したらしいです。「カノハハ」→「ガノボ(母)」→「ガガンボ」ですかね?
 言っておきますが、本当に母ではありませんよ。よく似た別の種です。
 ガガンボには色々な種類がいますが、その中で最大クラスの「ミカドガガンボ(帝ガガンボ?)」と言う種は全長35~45mm(と言っても、ほとんど足ですが)らしいので、恐らくこれを見たのでしょう。ちなみに便所とか木の陰とかによくいます。
 ちなみにガガンボは蚊と違って血は吸いませんし、悪さもしないのですが、姿が気持ち悪いので害虫扱いされている可哀相な存在です。


Q:「昆虫の呼吸はどうやっているんですか?」
A:「体に開いている<気門>という穴から空気を取り込んでいます」

 昆虫は口から空気を吸っているのではなく、腹部に開いている小さな気門という穴から空気を取り入れています。この気門は腹部に体節ごとに存在しますので、昆虫を窒息させようと思ったら、口ではなく、お腹の部分をふさぐ必要があります。気門をふさぐ方法としては「合成洗剤を浴びせる」というものがあり、粘着性の液体が気門をふさいで窒息させるそうです。
 ちなみに、ゴキブリで実際に試してみたのですが、かなり効率的に何匹も退治できました。

 おまえの部屋はそんなにゴキブリがいるのか

 ……という疑問はナシの方向で。

日々の生物(ナマモノ) 第6回

2008年11月13日 | 日々の生物(ナマモノ)

畜産編-2


Q:「肉食動物は肉だけしか食べないけど、栄養が偏ったりしないんですか?」
A:「大丈夫です。草食動物を食べることで間接的にビタミンを取っています」

 まず言っておきますが、肉食による栄養補給は結構簡単です。動物の体を作る材料はどの種でもあまり差はありませんので、似た動物を頭から内臓まで全部食べれば、体を作るのに必要な材料はほぼそろいます。
 問題はビタミン類です。ビタミンとは「動物が自分の体では作り出せず、他の生物(主に植物)から取り入れなければならない微量成分」の総称です。草食動物は当然、草からビタミンを摂取します。肉食動物は草食動物の内臓を食べることで、ビタミンを補給しています。肉食動物はまず草食動物の内臓から食べ始めますが、これは草食動物の内臓にある消化された植物や栄養素を補給するためと考えられています。

 ちなみに、人間の体はビタミンCを作ることができません。理由はわかりません。ただ、人間にとってビタミンC不足は死につながります。
 日本の場合、冬場でのビタミンC源はミカンなどの果物が殆どでした。本当かは知りませんが、江戸幕府で紀州が御三家に入っているのはミカンが豊富に採れるからと聞いたことがあります。紀伊國屋文左衛門が必死にミカンを江戸まで売りに行ったのは、それだけ必需品だったから……なのだそうです。
 漫画「ワンピース」の主人公の船にミカンの木があるのも、長期の航海によるビタミン不足を防ぐためです。ところで、あの主人公はどんな傷を負っても肉食っていると治りますが、どんな仕組みで栄養補給をしているんでしょうね(まあ、ゴム人間だけど)。

・雑食動物
 肉も植物も食べる。
 ビタミン類は植物から取る。ただし、植物のセルロースは分解できない。

・草食動物 
 反芻動物の場合
  ①植物を食べる→②胃の中の微生物がセルロースを分解→
  ③微生物の分解によって出来た脂肪酸などを吸収
 ウマなどの場合
  盲腸が長く、そこに住む微生物がセルロースを分解

・肉食動物
  草食動物(特に内臓)を食べることでビタミン類を補給          


Q:「乳牛はどうして食べないんですか?」
A:「食べてもいいですが、食べると勿体ないので食べません」

 肉牛と乳牛は品種がハッキリと分かれています。で、乳牛を食べない理由は幾つかあります。

1)食べたらそれまでだが、生きていれば何年もミルクが取れる。
2)乳牛は牝牛なので、子牛も生まれる。
3)そんなこんなで年を取って、食用には適さなくなる。……こんな感じです。

 乳牛はミルクを出すのに適した体になるように品種改良されており、肉はかなりやせ細っています。動物は妊娠すると胎児や、それを育てるためのミルクに体の養分を集中させますが、乳牛はそれがさらに極端なのです。だから、肉は食えないわけではありませんが、肉を美味しくすることに特化して品種改良されている肉牛と比べると、とても売り物にはなりません。
 大学で一度、卵を産んでいるニワトリをさばいて食べたことがありましたが、肉は硬くて細かったです。恐らく、卵のほうに養分の殆どを取られているのでしょう。そう考えると人間は残酷なことをやっているなと思いますね。

日々の生物(ナマモノ) 第5回

2008年11月11日 | 日々の生物(ナマモノ)

畜産編-1

 私、農学部出身なんですが、農学には畜産も含まれますので、大学でウシとかに関する授業を受けてたりします。こんな所で役立つとは思いませんでした。


Q:「ラクダの口は臭いんですか?」
A:「臭いらしいです」

 まず、ラクダやウシは「反芻(はんすう)動物」といって、胃が複数あります。牛なんか4つもあります。何故、複数あるかというとセルロースを消化するためです。
 セルロースというのは植物細胞の細胞壁の材料で、紙とか、植物由来の繊維(綿、麻など)などは、これでできています。このセルロースは砂糖と同じ炭水化物で、植物から水分を取り除いた重さの1/3~1/2を占めているのですが、非常に頑丈な物質であり普通の動物では消化できません。
 勿論、人間も消化できないので、たとえばゴボウとかは食べても殆ど消化されずに出て行きます(便秘の解消にはいいんですがね)。しかし、草食動物はこのセルロースを消化できます。つまりは紙でも食べて栄養にできるのです。
 歌にもありますね。「黒ヤギさんたら読まずに食べた~」ヤギも草食動物なので紙が食えるわけです。

 ただ、実際は草食動物もセルロースを消化することはできません。ではどうやっているのかと言えば、消化器官の中に住んでいる微生物がセルロースを分解しているのです。
 ウシやラクダの場合、複数ある胃の1~2番目は微生物を繁殖させるための場所になっていて、歯ですり潰した植物を餌に微生物が増えます。この微生物がセルロースを分解してくれるので、反芻動物はその分解物(脂肪酸など)を吸収します。と言うか、微生物ごと消化してしまうわけです。

 話は変わりますが、微生物がセルロースを分解するとメタンガスが発生します。メタンガスというのはオナラの主成分ですから……ウシとかラクダのゲップは臭いんじゃないですかね。
 実際にラクダに乗った人の話を読むと、やたらと臭いらしいですね。特に口から吐き出すツバみたいなものが臭いらしいですが、恐らく胃の微生物のせいじゃないかと思います。
 同じ草食動物でもウマは腸の一部(盲腸らしいです)が特別に長くなっていて、ここに住んでいる微生物がセルロースを分解します。だから、ウマはウシに比べると口が臭くないんじゃないかと思います。

 ちなみに、反芻動物の出すメタンガスは、実は二酸化炭素と同じく温室効果の原因となる物質です。オーストラリアには反芻動物であるヒツジやウシが星の数ほどいるのですが、これらの出すメタンガスが地球温暖化につながると問題になっているそうです。
 ヒツジのゲップで環境破壊が起こっていると思うと、ちょっと笑えますが、人の数よりヒツジの数が多いオーストラリアにとっては深刻な問題です。

日々の生物(ナマモノ) 第4回

2008年11月10日 | 日々の生物(ナマモノ)

タコ・イカ編-2


Q:「タコが自分の足を食うって本当ですか?」
A:「食います。ただ、お腹が減って食うわけではありません」

 確かにタコが自分の足を食う場合がありますが、それはストレスを受けた場合に限られます。例えば、釣り上げられるなどのストレスを受けるとパニックになって自分の足を食べるそうです。そのため、人間から見ると頻繁に起こっているように見えますが、実際にはあまり起こりません。
「ジョジョの奇妙な冒険」の殺人鬼で追いつめられると爪をやたらと噛む奴がいましたが、そんな感じだと思ってください。

 ちなみにタコの足は切れても再生することができます。敵が足に食いつくと、自分で足を切り離して逃げることもあるそうです。ただ、自分で食った場合は、何故か再生しないそうです。
 タコもヒトもストレスは大敵ということです。


Q:「タコの足のうち1本は生殖器官らしいですが、他の足との見分け方はありますか?」
A:「生殖器官ではなく、交尾に使う足です。見分けることはできます」

 タコのオスは精莢というカプセルに精子を入れ、それをメスの体内に入れることで受精を行います。この時、精莢を運ぶ足は決まっていて、カプセルを持ちやすい形になっています。足で持つというのが、ちょっとアレですが、魚の場合、オスが卵の上に精子をまき散らして受精することを考えれば、はるかに機能的です。
 ちなみに、この生殖用の足の先端は他の足より平べったくて溝になっているそうです。水産学者なら見分けられるでしょう。ただ、種によって形が異なったり、普段は体内に隠れていたりするので一般人が見分けるのは難しいかもしれません。

 下が色々なタコの交尾用の腕の先端になります。がんばって見分けてください。


日々の生物(ナマモノ) 第3回

2008年11月09日 | 日々の生物(ナマモノ)

タコ・イカ編-1

 まとめると何故か、タコやイカに関する質問が多かった気がします。
 好きなのか? 丹後の高校生は軟体動物が好きなのか? 


Q:「なんでタコは足が8本で、イカは10本なの?」
A:「実は足の数は両方8本です」

 何故8本なのかはよくわかりませんが、イカの場合は「触腕」と呼ばれる他より長い足(専門的には腕らしい)があります。この触腕でイカは獲物を捕らえたりします。
 つまり、

  タコ→足が8本
  イカ→足が8本 + 触腕が2本

 ということになります。
 イカの方がタコよりも活動的(タコは基本的に海底にいるが、イカは泳ぎ回って獲物を捕らえる)なため、獲物を捕らえるための器官があるのかもしれません。
 イカやタコの祖先はもっと多くの足を持っていましたが、進化の過程で8~10本に落ち着きました。おそらく、これくらいが一番、機能的なのでしょう。


Q:「なんでタコは赤色なの?」
A:「加熱によって皮膚の色素が変化するためです」

 タコやイカは赤い印象がありますが、実際には日本で見られるものは殆ど赤くありません(赤っぽい茶色くらい)。赤くなるのは熱湯で茹でた結果です。タコでも寿司に使われるものは茹でてあるので赤いですが、生で食う場合は赤くないことが多いですね(タコワサとか)。
 赤くなるのは皮膚の色素が加熱によって変化して赤くなるためです。タコの皮膚には様々な色素があり、体の色を変えたりします。この色素のどれかが加熱によって変化して赤色になると考えられていますが、特定はされていません。イカやカニが赤くなる色素は判明しています。


Q:「タコの血は青いんですか?」
A:「青いです」

 ヒトを含めた動物の血は「ヘモグロビン」(授業でやりましたよね)という赤い色素が含まれるので赤いですが、タコ、イカ、貝などの軟体動物や昆虫は「ヘモシアニン」という色素を持っていて、これが空気に触れると青くなります。
 ただ、魚屋で売られている場合は血が抜かれていますし、茹でると色がなくなります。それに元々、はっきりとは見えにくいようです。

 わかりやすい例としては、エビやカニの卵が青色なのはヘモシアニンのためで、要は血の色です。イカの内臓も青みがかっていますね。

日々の生物(ナマモノ) 第2回

2008年11月08日 | 日々の生物(ナマモノ)

Q:「シマウマは何で白黒なんですか?」
A:「あれが一番、草むらで目立たないからです」

 シマウマの縞模様は草むらの中に入ると周囲の草に紛れて目立たなくなる効果があります。迷彩服は町中では目立つ服ですが、森の中では目立たない模様なのと同じです。
 第二に、人間以外の動物は色を識別することが得意ではありません。白黒ストライプは人間の目には目立つ配色ですが、シマウマや肉食動物の目には他の色と区別することができないようです。色(明度)のコントラストが強い縞模様なら何でもよいわけです。
 では、何故、白黒なのかと言いますと、ここからは想像が入りますが、動物の模様は複雑になると白黒になる傾向があるのではないかと思います。ウシのホルスタインや犬のポメラニアン、三毛猫など、斑模様の動物は白黒が多いことから考えても、極端に体毛のコントラストが強まると白黒になるのではないかと思います。


Q:「熊と白熊とパンダの祖先は一緒ですか?」  →  A:「同じです」
Q:「しっぽが黒いパンダっているんですか?」  →  A:「いません」

 クマ科にはクマ亜科とパンダ亜科があります。普通のクマも白熊もクマ亜科に入ります。パンダの分類は長らく論争が続いていましたが、クマに近縁だと最近ではなっています。白熊はヒグマに非常に近い種です。北極に共通の先祖が渡ったのでしょう。
 パンダ亜科は「ジャイアントパンダ属」と「レッサーパンダ属」(二足歩行で人に媚びを売ったりするアレ)の2つがあり、それぞれジャイアントパンダとレッサーパンダしか種がおりません。
 私も勘違いしていましたが、ジャイアントパンダの尻尾は白色なので、いわゆるパンダは全て尾が白いとなります。レッサーパンダの尻尾は縞模様ですね。


番外編
Q:「コックリさんは漢字でどう書く?」
A:「<狐狗狸さん>」
 
 つまり、キツネ、天狗、狸。日本における「人を化かすモノ」を並べたわけです(狗はイヌなので、もののけ姫に出てくる山イヌのようなものかも)。ただ、歴史は案外浅くて明治時代にヨーロッパから伝わった「ヴィジャボード」が原型です(やり方もほぼ同じ)。
 指をコインに乗せて、コインの動きで占うわけですが、これは無意識の筋肉の動きが指を動かしていると考えられています。私が小学生の頃にも流行りまして、「(正式な手順を踏まずに)途中で止めると死ぬ」とか噂になりました。ただ、霊に取り憑かれる、と思いこんでしまう(自己催眠)ケースもあるようです。

 ちなみに小学生の頃、私は触るなと言われたのに、コックリさんをやっている人やコインに触りまくったことがありますが、まだ生きています。

特別企画 -日々の生物(ナマモノ)-

2008年11月07日 | 日々の生物(ナマモノ)

 あまり長期間放置しておくのもどうかと思うので、特別企画を開催することにしました。
 6年前の日記【あるシナリオライターの日常】に登場する私の親友、海藤。現在は生物教師として丹後半島に生きる彼が、その溢れ出る情熱と才能を注ぎ込んで制作した授業用プリントを公開していきます。

 生物に興味のない方も、是非読んでみて下さい。
 新しい世界に目覚めるかもしれません。


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日々の生物(ナマモノ) 第1回

 どうしても教科書による授業では細かくて実生活から離れた内容になってしまうので、普段、感じた生物に関する疑問にこちらが(できる限り)答えることで、生物一般に関する興味を持ってもらおうという企画。
 質問を渡してもらえれば、その中から「一番、突拍子もないもの」を選んで答える予定。

 最初の質問は先週、実際に聞かれた質問より。


Q:「カタツムリの殻を外したら、ナメクジになりますか?」
A:「なりません。しかし、進化の過程でカタツムリから殻がなくなったのがナメクジです」

 カタツムリやナメクジは「貝類」に属する生物です。陸上生活ができる「巻き貝」をカタツムリと言います。カタツムリの「貝殻」がなくなった種が「ナメクジ」です。イカやタコも(広義には)貝類に含まれますが、これらの種も大昔は殻を持っていました。進化の過程で殻がなくなるのは、貝類によく見られる現象のようです。
 ちなみに貝殻は貝が体の外に炭酸カルシウムを分泌することで作られます。人間で言えば、髪や爪のようなものですから剥がすのはダメージを与えます……と言うより、剥がされるカタツムリの気分になって考えてください。



 アンモナイト    イカ タコ           →貝殻がなくなる→


Q:「アメフラシの正式名称は?」
A:「…………………………アメフラシ」

 意外ですが、Web辞書(Wikipedia)によると
「アメフラシ(雨虎、雨降)は、腹足綱 後鰓目 無楯亜目(旧分類 腹足綱 後鰓亜綱 無楯目)に属する軟体動物の総称。狭義には、アメフラシ科に属するアメフラシ(学名 Aplysia kurodai (Baba, 1937))を指す」
 ……とのこと。
 英語ではsea hare(海のウサギ)。頭の突起がウサギっぽいらしい。
 ちなみに上のカタツムリとも近い仲間で貝殻がなくなった貝類の一種(ウミウシに近い)。

 名前の由来は攻撃されると紫色の液を水中に出して、それが雲に見えるため。アメフラシが雨を呼ぶということはない(大体、海中の生物にとって雨が降ろうが関係ないはず)。
 アメフラシの卵は「海そうめん」と言い、食べる地方もある……と「美味しんぼ」に書いてありました。

 ところで、丹後では「運動会前に運動嫌いな子が雨にするためにアメフラシを殺す」ってのは本当ですか?