【 Photo by Kenji Oouchi 】
もう
50年も前の
あの家の
大きなガラス窓が
ガタガタと
風で鳴る音を
覚えている
その
ガラス窓から
差し込む陽の
暖かさを
覚えている
それと
焼きたての鮭の匂いと
沸き立ての風呂の湯気と
1週間だけいた雑種の犬の鳴き声と
おばあちゃん得意の煮付けの味だって
覚えている
でも
記憶の家には
音も
言葉も
ないまま
時が
眠っている
帰りたいのではなく
忘れたいのでもなく
ただ
さみしい
気持ちだけが
ボクを
見ている
誰もいない
記憶の家の屋根を越えて
鳥かごから逃げたインコが
飛んでいく
振り返ったら
そこには
無言で
春が
咲いていた
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