獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

『居場所を探して』を読む その15

2024-08-25 01:37:53 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

■第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
 □第1部「福祉との出合い」
 □第2部「司法と福祉のはざまで」
 □第3部「あるろうあ者の裁判」
 □第4部「塀の向こう側」
 □第5部「見放された人」
 □第6部「更生への道」
 ■第7部「課題」
□第2章 変わる
□おわりに 


第7部「課題」

=2012年6月12日~22日掲載=

(つづきです)

4)変わる検察(4)
  更生見極める「原点」へ

「刑務所の中は障害者だらけなんです」
8年前。東京・霞が関の法務省。
年に1度、全国の刑務所長らが集まる会議で講演したのは、元衆院議員の山本譲司(49)。秘書給与詐取事件で実刑判決を受けた後、獄中体験をつづった著書「獄窓記」で、累犯障害者の存在を世に知らしめた人物だ。
講演を企画したのは、当時、法務省矯正局総務課長だった林眞琴(54)。塀の中の実情を訴え、満場の拍手を浴びる山本の姿を、林は特別な思いで見詰めていた。「司法の人間も変わらなければならない」
林はもともと検事だが、この時期「花形」の刑事局ではなく、矯正局で刑務所改革に携わっていた。検察官の職務は本来、捜査や公判だけでなく、刑の執行の指揮まで刑事司法全体にわたる。しかし、とかく検察官は捜査・公判までしか関心を払ってこなかった。矯正局で林は、更生の現場を目の当たりにし、累犯障害者の存在を知った。一線の検事時代には目もくれなかった世界だった。
「被告の更生にとって、本当に大切なステージは『公判後』にあるのではないか」
そんな思いを強くした。
昨年4月、大阪地検特捜部の不祥事を機に、最高検に新設された検察改革推進室の室長に就任。今は総務部長として、検察改革を指揮する。社会福祉法人南高愛隣会理事長の田島良昭(57)が提案した「新長崎モデル」に深く理解を示したのも、林だった。長崎を舞台に始まった、検察捜査に福祉的な視点を取り入れるかつてない試みだ。
「林が中心にいたからこそ、累犯障害者の捜査改革はここまで進んだ」と関係者は口をそろえる。
だが、林のような考え方は検察内部では主流派ではない。
「障害者の事件は『小さな事件』」
「捜査や公判は検察の『専売特許』。外部の人間には踏み込まれたくない」
検察改革が動きだした今でさえ、現場からはこんな声も漏れる。「改革」は道半ばだ。
林は語る。
「検察はいつしか、『不起訴より起訴』『執行猶予より実刑』を求める存在として見られるようになった。検察官に認められている裁量権とは、厳罰を求めるだけでなく、被告にふさわしい更生の方法を見極め、それを科すことにもあったはずだ」
累犯障害者の問題に正面から向き合うことで、検察はいま一度「原点」に立ち戻れるはず―林はそう信じている。

(つづく)

 


解説

全国の刑務所長らが集まる会議で講演したのは、元衆院議員の山本譲司(49)。秘書給与詐取事件で実刑判決を受けた後、獄中体験をつづった著書「獄窓記」で、累犯障害者の存在を世に知らしめた人物だ。

私は別のところ(獅子風蓮の夏空ブログ)で、山本譲司氏の『獄窓記』を紹介していますが、この本がきっかけで、検察の改革が進んだのですね。

不思議な縁を感じます。

 

獅子風蓮