獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

村木厚子『私は負けない』第一部第3章 その1

2023-05-04 01:30:16 | 冤罪

このたび、村木厚子さんの著書『私は負けない-「郵便不正事件」はこうして作られた』(中央公論新社、2013.10)を読み、検察のひどいやり方に激しい憤りを感じました。
是非、広く読んでほしい内容だと思い、著書の一部を紹介したいと思います。

(目次)
□はじめに
第一部
□第1章 まさかの逮捕と20日間の取り調べ
□第2章 164日間の勾留
■第3章 裁判で明らかにされた真相
□第4章 無罪判決、そして……
□終 章 信じられる司法制度を作るために
第二部
・第1章 支え合って進もう
  ◎夫・村木太郎インタビュー
・第2章 ウソの調書はこうして作られた
  ◎上村勉×村木厚子対談(進行…江川紹子)
・第3章 一人の無辜を罰するなかれ
  ◎周防正行監督インタビュー
・おわりに


■第3章 裁判で明らかにされた真相

 

堂々と闘いたい

2009年11月24日に保釈になってからは、家事をしながら、裁判の準備をしていました。公判で一人ひとりの証人にどういうことを弁護人から聞いてほしいか書き出してみたり、弁護団が作った質問項目に意見を言ったり、裁判の冒頭の意見陳述をどうしようか考えたり……。やることは、たくさんありました。
弁護団はプロの集団なので、それなりに自信があったようですが、私は、裁判は初めてなので、見通しはよく分かりませんでした。あれだけ、検察のストーリーに従った調書を取られた人たちが、公判でどういう証言をするのかも、皆目見当もつきませんでした。ただ、密室での取り調べと公判では、大きな違いがあることは分かりました。
密室での取り調べでは、検察と取り調べを受ける側の“勝負”は、検察の勝ちか、よくて引き分けにしかなりません。他の人の調書を元に誘導したり、身柄拘束すると脅かしたり、逆に早期の保釈をほのめかしたり、あらゆる手を使って検察のストーリーに合った調書にサインをさせようとします。そして、閉じられた密室なので、どんなやりとりがあったのかは本人たち以外誰にもわかりません。また、検事が原案を作るので、私の関与をしっかりと否定し続けてくれている職員の調書も、「彼女はやってないはずです」というものにはなりません。「他の人はやったと言っているかもしれないけれど、自分は見てません、知りません」という調書がせいぜいです。一方、裁判になれば、公開の場で公正に証言が行われますし、検察側の証人に対しても、主尋問の後に弁護側が反対尋問をするので、的確な弁護側の質問によって被告人にマイナスの証言もイーブンのところまで持ち直すこともできる、ということでした。
弁護団とは、裁判の内容だけでなく、いろいろなことを話し合いました。たとえば、裁判の冒頭に報道のカメラが入ります。その時、裁判官、検察官、弁護人はそれぞれの席に着いて映るわけですが、そこには被告人はいません。被告人が法廷に入る前に、撮影が行われるからです。そのため、世間は無意識のうちに、悪いことをしたやつは顔を隠したいのだ、と受け止めてしまいがちです。自分が映っても構わない、という被告人は、堂々と映ればいいではないか、と思います。その方が、世間の印象も変わっていくような気がします。
逮捕された時も、保釈された時も、私は顔を隠さないと決めていました。逮捕されて拘置所に移送される時には、同行した女性の職員がそっとマスクを渡してくれて、「お使いになるかならないかは、村木さんの判断で」と言ってくれました。幸い、このときはカーテンがあり外からは見えない車だったので使う場面はありませんでした。保釈の時には、弁護士が帽子やマスクを持ってきてくれました。でも、どちらも使いませんでした。できるだけ隠れないで堂々としていたいと思いました。検察は、マスコミを利用して「やっぱり役人って悪いことするよね」「官僚って悪いよね」というイメージを流布しようとしていたと思います。「逃げる」「隠れる」という行為はその印象を一層強めます。そこから何とか脱したかったのです。もちろん、テレビに映りたかったわけではありませんが。そういう私の思いを、弁護団は真正面から受け止めて、いつも一緒に考えてくれました。
結局、報道のカメラには、弁護団と一緒に裁判所の敷地に入っていくところを撮ってもらうことになりました。初公判を前にした記者会見もやりました。このようなマスコミへの情報提供については、慎重論もありましたが、検察も情報を流すだろうから、こちらもきちんと対応して、フェアな報道を求めていく方がよい、ということになりました。記者会見の翌日の新聞では、双方の言い分がしっかり書かれていました。それまでは、9対1くらいの割合で検察情報が多かったように思いますが、これからは5分5分で書かなければ、という意識は出てきていたように思います。

 


解説
裁判の冒頭に報道のカメラが入ります。その時、裁判官、検察官、弁護人はそれぞれの席に着いて映るわけですが、そこには被告人はいません。被告人が法廷に入る前に、撮影が行われるからです。そのため、世間は無意識のうちに、悪いことをしたやつは顔を隠したいのだ、と受け止めてしまいがちです。自分が映っても構わない、という被告人は、堂々と映ればいいではないか、と思います。その方が、世間の印象も変わっていくような気がします。
逮捕された時も、保釈された時も、私は顔を隠さないと決めていました。

心にやましいところがない人は、やはり行動にも筋が通っていますね。

獅子風蓮