獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

山崎浩子『愛が偽りに終わるとき』第2章 その7

2022-12-15 01:55:27 | 統一教会

山崎浩子『愛が偽りに終わるとき』(文藝春秋1994年3月)
より、引用しました。
著作権上、問題があればすぐに削除する用意がありますが、できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。

(目次)
□第1章 「神の子」になる
■第2章 盲信者
□第3章 神が選んだ伴侶
□第4章 暴かれた嘘
□第5章 悪夢は消えた
□あとがき



「信仰告白」こそ私の使命
私は記者会見を開きたいと、M先生にも伝えた。
「そう、でも、そんなに急がなくてもいいと思うけどねえ」
最初のうちこそ、そう言っていたM先生だったが、変な憶測がとぶよりはいい、と賛成してくれた。
夜になって姉に電話をした。
「今日の騒ぎのこと知ってる?」
「あ、何、それ?」
私は、統一教会に入っていること、文先生に結婚の相手を決めてもらうことなど、かいつまんで要点を話した。
眠りをさまされた姉は、「ウン、ウン」と聞いていたが、「あなたがそれでいいんだったらいいよ」と言ってくれた。
大きな力を得たような気持ちで、記者会見に臨むことにした。
M先生と統一教会の広報部の方二名がホテルに来てくれた。
「印鑑から伝導されたことは言わないでください」
「はい」
その意味はわかった。統一原理を知らなければ、霊感商法だとかなんとか言われるに違いない。
きっと言わない方がいいのだろう。
記者会見の時刻は刻々とせまってくる。
私は、持ってきてもらった洋服の中から、祈りながら着るべきものを選び、そして祈りながら化粧をした。
何もかもが、祈りの中で進められていった。
今まで、こんなに真剣に祈ったことがあったろうか。
私は自分のひとことが、私個人の言葉にとどまらないことを知っていた。それは統一教会全体の声として受け取られることだろう。
この信仰のおぼつかない私が、代表として神やメシアを証することに、身体全体がふるえだしそうだった。
「天のお父様(神様)、どうかあなたが最初から最後まで共にあってくださいますように。私の口を通して、お父様、あなたが語ってくださいますように、守り導いてくださいますように願いながら、真の御父母様の御名を通して天の御前にお祈りいたします。アーメン」
祈らずにはいられなかった。
これが私の使命なのだと自分に言いさかせずにいられなかった。


記者会見に臨む
1992年6月25日、午後7時。
記者会見場となった食糧会館には、百人近い報道陣が集まった。
私はお父様の写真と、以前お母様が来日された際の記念にいただいた石をハンカチの中に納め、会見に臨んだ。
まばゆいばかりのフラッシュと、机の上に並べられたたくさんのマイクを前にして腰をかける。
こわいものは何もなかった。
「大変ご迷惑をおかけしました。一生懸命お話ししたいと思いますので、よろしくお願いします」
引きだされた子羊を前に、リポーターたちはいたわるように質問してきた。
入信の動機、合同結婚式参加の意志、思うままに話すうちに、私の中で自信があふれだし、信仰の根がどっかりと伸びていく感覚だった。
「私は神を信じ、メシアを信じます。文先生が選んでくれる人なら、どんな人でもいいです」
すべてを語り終え、部屋を出る時、リポーターの方々はなぜかニコニコとして私を送りだしてくれた。その笑顔をみて、成功したんだなと思った。
30分の会見を終えたあとも興奮状態にあった。神とメシアを公に証できたことで喜びに満ちあふれていた。
これほど揺るぎない信仰心を感じたことはない。私は世間に公表することによって、信仰心を強くすることとなった。
ホッとする間もなく、私はコーチングスタッフの待つスクール会場へと向かった。
重苦しい空気が流れる。
想いのすべてを伝えたとしても理解できないことであるのはわかっていた。
このあとも私についてきてくれるかどうかは、彼女らにゆだねるしかない。時間をかけて考えてくれ、と伝えるしかなかった。
その夜は、マスコミがいる可能性があるので、家には帰らず、統一教会のもつマンションの一室に泊めてもらった。
教会員は、皆富んでくれた。
「すごい、すごい。今まで、こんなに堂々と神とメシアを証した人はいない」
我ながら誇らしかった。
「すごいわねえ。浩子さんは大きな使命があると思っていたけど、これだったのね」
M先生も興奮している。
(そうか、このことだったのか。私の大きな使命とは神とメシアを証することだったのか)
与えられた使命を全うすることができて、その後も一週間ぐらいは、睡眠が1、2時間の日が続いたが、疲れることなく、ただ喜びをかみしめていた。
教会員からは、たくさんの色紙や励ましの手紙、そして証をしてくれたことに対しての感謝の言葉が全国各地から寄せられてくる。
「お父様もホントに喜ばれているんですよ。それでね、あの子はどうした、女優がいただろって。
なんか淳子さんも、もうすぐ記者会見するらしいですよ」
桜田淳子さんは、もう十数年も前から入信されていたという。私が入信した頃から噂では聞いていたが、堂々とマスコミの前で信仰を告白されることを知り、うれしくてならなかった。
(本当によかった。神様やメシアのために、役に立つことができた)


「その結婚だけはやめなさい」
一方、教会員以外の反応はいいはずはなかった。
留守番電話にも、親戚から心配そうな声でメッセージが入っていた。
「ヒロコちゃん、やめなさいよ。韓国なんか行ったら二度と帰ってこれなくなるよ。行方不明になってしまうよ」
(そんなパカなことがあるわけないでしょ)
と思いながら、私のことをこんなにも心配してくれる人たちがいることを知り、愛されてきたことを知った。
私が大好きな人たちを心配させて、本当に申し訳ないと思った。反対されるごとに、その人の私に対する想いを感じた。
「人が何を信じてもいい。宗教をやるのも自由だ。でもその結婚だけはやめなさい」
どの人もそう言った。
この宗教を信じるからこそ、この結婚があるというのに、どうしても結びつかないらしい。この宗教と結婚は、切り離すことはできない。祝福を受け入れることこそが、統一原理を受け入れたことになるのである。
でも、それを理解してくれという方が無理な話だった。
世間から、どんなに非難されようとかまわなかった。統一原理を知らない人たちから、何と言われようとかまわない。その人たちに理解できないのは当たり前のことだった。そう、以前の私がそうであったように。
いちばん心配していたスクールの方へは、まずN社に詫びを入れ、
・今後迷惑をかけないこと
・スクール生を勧誘しないこと
を前提に指導を続けることを了承していただいた。
88年から、4年間というもの、私は子供たちを愛し、スクールを愛し、懸命にやってきたつもりだった。その想いをスクール生全員にあてた手紙に書き、自分の気持ちを託した。
「山崎コーチの指導を見ていれば、わかります」
ご父兄の中には、そういって励ましてくだきる方もいた。
私は、山崎浩子のスクールということで、退会させる親御さんがいらしたら、いつでも自分が身を引く覚悟で、それからも懸命に指導にあたった。
そして、通常通り、スクールは続けられていった。

 

(つづく)

 


解説
第2章では、山崎浩子さんが旧統一教会と出会い、その教義にのめり込む様子がていねいに描かれています。

記者会見で、信仰告白……


獅子風蓮