
「あやしきうたた寝をして、若々しかりけるいぎたなさを、さしもおどろかしたまはで」
源氏は、明石の君のところに行っておった。贈った衣装をみるために順に女たちを訪ねているのである。紫の上はおかんむり。で、上のせりふである。「新年会でうたた寝しちゃったの。若々しくぐーすかねてしまったのを誰も起こしてくれないんだもんなあ」
誰が起こすかっ
と、御けしきとりたまふもをかしく見ゆ。
まったくをかしくねえわい
ことなる御いらへもなければ、
そりゃまあそうだろう
わづらはしくて、そら寝をしつつ、日高く御殿籠もり起きたり。
そういえば、源氏は結構ショートスリーパーかもしれませんね……
ひしひしとただ食ひに食ふ音のしければ、ずちなくて、無期ののちに、「えい。」といらへたりければ、僧たち笑ふことかぎりなし。
(「稚児のそら寝」)
この稚児のかわいさに比べて源氏はもうお歳なのでかわいそうではあります。そら寝に対する扱いがまるで違います。現代の学校でも、すさまじいそら寝をしている学生がおります。なにしろ、本当に寝てしまっているのであります。 「若々しかりけるいぎたなさを、さしもおどろかしたまはで」。いまは、下手に起こすとアカハラになりそうでありますので、邪魔はしないのです。
代わりに、教員の方は、眠れなくなって、心身ともにおかしくなっていきます。