本宮ひろ志のマンガを読んだことがなかったので、読んでみたんだが、今のところ登場人物たち全員が鼠なみの脳みそらしいので好感が持てる。普段練習もせず賭け事と喧嘩しかしてないようなクズ野球部のなかの親分格が、129頁でとつぜん、その哲学を披露し始めたので面白かった。
「おのれの世界をだれにもじゃまさせぬ そのためのむすびつき……そのための連合体だ」
で、その野球部を甲子園に連れて行こうとしている主人公?が、だからこそいいのだと言い、「ひとりひとりの個性を思うぞんぶん見せつけるんだ!」と叫ぶ。
思うに、ひとりひとりが違ってみんないい、みたいな哲学は、平和なユートピアをもたらすどころか、喧嘩しか頭にない荒くれどもの世界を現出させるのであった。今もそうなっている。たぶん本宮ひろ志の描くような世界は七〇年代ではなく、今にこそ当てはまる。