小林秀雄がオリンピックをみて、批評とはあんな球を投げることと見つけたり、とか言ったので、すかさず花××輝が、批評とは球を創ることと見つけたり、と反論したのは周知の事実であるが、どちらもスポーツに対するコンプレックスみたいなのが感じられ、あれなのであるが、それに比べると、坂口安吾なんか高飛びの記録持ってたぐらいで、吉川英治の宮本武蔵のような生悟り小説にすら、なにか青春いや淪落をみてしまうほど、落下に拘っている男であった。さすが、スポーツが重力との戦いであり、戦争もまたそうであることをこの人はよくわかっていたのである。普通の国民は、せいぜい感動とか絆の次元でスポーツを見ているだけなので、平気な顔してオリンピアを見ていられる。それで、最近の若者向けの青春小説なんか、題材は何の部活でもよくなっている。これではいけない。青春は落下との戦いだ。
一方、田中英光なんかは本物のオリンピアの選手であった。ボートの選手である。しかし、この重力とはちょっと違う水の浮力に影響されたのか、彼がオリンピアで経験したのは、寧ろ浮いた話(恋愛)であった。こういう人は地上に帰ると、重力に影響され苦悩することになった。共産党と妻に引き裂かれ、最後は太宰の墓で果てるという、むりやり重力を四方八方につくりゃ浮けるのではないかと思ったのかしらないが、花×××の「友達がいのなかった私を許せ」という引き止めをきかずに昇天してしまった。――これに影響されたのが、西村賢太である。彼は、太宰の代わりに藤澤清造、共産党と妻の代わりに風俗を選んでいるだけである。
田中君は、私などに較べて、ずつと上品な、氣の弱い、しかも誰よりも正直な人間であります。御母堂に、ずゐぶん可愛がられて育ちました。
四年ほどまへ、私がまだ、荻窪の下宿にゐた頃の事でありましたが、田中君の御母堂が私の下宿に怒鳴り込んで來たさうであります。運よく私は、その時、外出してゐたので難をのがれましたが、私の代りに下宿のをばさんが、大いに叱られたさうであります。うちの英光に文學などをすすめて、だらくさせるつもりだらう、とおつしやつて、實に怒つてお歸りになりました、こはいお母さんですねえ、と下宿のをばさんも溜息ついて私に報告したのでした。墮落したか、どうか。文學ゆゑに、田中君は、いまでもやはり、上品な、氣の弱い、しかも誰よりも正直で、さうしてやつぱりお母さんの佳い子になつてゐるではありませんか。文學は、人を墮落させるものではないのです、等といま、ここで御母堂に向つて申し上げるやうな氣持で書いてゐると、私も邪心無く、愉快になります。
田中君が戰地から歸つて、私の家に來た時も、戰爭の手柄話は、一言も語りませんでした。縁側に坐つて、ぼんやり武藏野を眺め、戰地にもこんな景色がありますよ、と、それだけ言ひました。さうかね、と私もぼんやり武藏野を眺めました。その日、私に手渡した原稿は、戰爭の小説ではありませんでした。オリンピツク選手としての、十年前の思ひ出を書いた小説でありました。
田中君の人間に就いて、讀者にぜひともお知らせしたい事項は、もう他には無いやうです。田中君は、勇氣のある人ですが、これからは、猪突の小勇をつつしむにちがひないと私は信じて居ります。生活は弱く、作品は強く、悠々君の文學を自ら經營し、次の時代の美しさを君自身の責任に於いて展開すべきだと思つて居ります。
田中君は、もはや三十歳であります。
以上
――太宰治「田中君に就いて――田中英光著『オリムポスの果實』序」
「文學は、人を墮落させるものではないのです、等といま、ここで御母堂に向つて申し上げるやうな氣持で書いてゐると、私も邪心無く、愉快になります。」じゃねえよ、手前が人間失格とか書くから、田中もまねしちゃったじゃないか。ご母堂の心配が完全に的中してるじゃないかっ
というわけで、ニュースで否応なくオリンピックの話題を目撃しなければならない昨今、みなさんいかがお過ごしです。とりあえず、冬の競技は突っ込み所満載なので、お約束であるが突っ込んでおきたい。
●アルペンスキー……回転とか大回転とか、スーパー大回転とか、寿司屋かよ。男子・女子スーパー大回転とか、フィギュアスケートと区別がつかん。
●クロスカントリースキー……ああ、007の冒頭に出てくるあれですね。戦闘機に追いかけられるやつですね…
●スキージャンプ……とりあえず、飛行機に乗った方がはやいのでは……。なに、飛行機も落ちる?いや、あれもジャンプしているのではあるまいか。ノーマルヒルって、普通の蛭ですか。ラージヒル…でかい蛭……、高野聖かっ
●ノルディック複合……ちょっと何言っているかわかんない
●バイアスロン……
バイアグラン?
●フリースタイルスキー
モーグル……どうみても「自由」にはみえない
エアリアル……なにそれ?
ハーフパイプ……?
スキークロス……??
スロープスタイル……???
●スノーボード……世の中というものはひどいもので、スノボやっている人と阪神ファンとどっちが偏差値が低いかということを一生懸命考える連中もいます。わたくしがみたところ、一番偏差値が低いのは相撲ファン。
ハーフパイプ……?
パラレル大回転……また回転かよ
スノーボードクロス……??
スロープスタイル……???
ビッグエア……大嘘つき?
●スケート……小平さんがんばれ(以下略)
●ソリ……昔、兄妹三人で乗って、親に牽かせてたな…ごめんなさい、父さん母さん
ボブスレー……おらおらっ、男4人で乗ってんじゃないぞ

リュージュ……寝転んじゃって、眠いんですか?
スケルトン……透ける豚?
●カーリング……掃除をさぼっている不良のたむろっている様子以外の何物でもなし
●アイスホッケー……
もう少しで「友よ夜明けは近い」とか歌い出しそうな棒を持っている。機動隊は直ちにこいつらを殲滅せよ。