Naked Heart

その時々の関心事をざっくばらんに語ります

ひとは死んだらどこにゆくの?

2005年05月24日 23時56分31秒 | 『いま、会いにゆきます』
丹波哲郎ではありません。って、今の若い人には通じないかな?
たびたび取り上げております『いま、会いにゆきます』の予告編に
出てきた言葉です。
(例によってネタバレありですのでご注意ください。)

メディアのレビューには、この「ひとは死んだらどこにゆくの?」が
この映画の重要なテーマだとするものや、子どもにもわかるように
この問いに答えた作品とまで言い切っているものもありました。
でも、よく考えると、そういう見方は外れてるな、と思います。
確かにファンタジーでありながら人の「死」を丁寧に描いている点
は評価できますが、この映画はどこまでもフィクションです。
雨の季節に現れる澪は、本当はアーカイブ星から戻って来たわけ
ではありません。9年前の澪がタイムスリップするのです。だから
死んだ澪がその後どうなったのか、実のところ映画は何も語って
いません。アーカイブ星の物語は、大人の「優しい嘘」なのです。
(原作だと、アーカイブ星は澪ではなく巧の創作になっています)
もちろん、神話のような物語でも、そこに真理が含まれているなら
否定されるものではありませんが、この映画は事実としての「死」
はきちんと描いていますが、哲学が全くありませんから、ただの
「作り話」で終ってしまっているのです。
映画そのものは、とてもいいものですよ。この映画のテーマは、
「いかに生きるか」だと私は思ってますが、その点に関しては
ほんとによくできた作品だと思います。

今回この話題を取り上げたのにはわけがありまして、先月と
つい先日、私の2人の友人が立て続けに伴侶を亡くしたのです。
2人とも、幼い子どももいて、幸せいっぱいだったのに・・・。
「優しい嘘」では現実の「死」の悲しみは覆い隠せません。
「死」の恐ろしさを乗り越えることもできません。
耳障りのいい言葉ではなく、「確かな希望」こそが必要です。