松岡圭祐『千里眼 優しい悪魔 上下』の続き(実際はこの間2009年春にハードカバー+DVD版、2009年10月に本編の前作に相当する書籍が出版されているが・・・)となる松岡氏の『千里眼シリーズ』最新作となる。このシリーズは、角川書店の文庫版の書き下ろしシリーズの10作目となる。つまり
- 千里眼 The Start
- 千里眼 ファントム・クォーター
- 千里眼の水晶体
- 千里眼 ミッドタウンタワーの迷宮
- 千里眼の教室
- 千里眼 堕天使のメモリー
- 千里眼 岬の正体 上・下
- 千里眼 シンガポール・フライヤー 上・下
- 千里眼 優しい悪魔 上・下(松岡圭祐『千里眼 優しい悪魔 上下』)
- 千里眼 キネシクス・アイ 上・下
と言う事になる。岬美由紀とメフィスト・コンサルティングのダビデと前作で決着しており、このキネシクス・アイでは完全に機械至上主義のノン=クオリアとの戦いとなっている。
下巻の最後に久本 隆氏がこのキネシクス・アイについて解説されているが、私も同じような感想を持った。つまりハードカバー版の千里眼シリーズやクラシックシリーズに比較して、この千里眼 The Startから始まるシリーズはかなり、エンターティンメント性からすると、小粒と言うか、あっさりと言うか切迫した緊張感と爽快感に欠けており、ちょっとそのスケールが小さくなっていた気がする。それがこのキネシクス・アイでは完全に、戻ってきており、その行き詰る緊迫感と絶望、やられたかに見せて、それを必死で乗り越え、最後は爽快に打ち倒す。そして、意外性も合わせて、一番最初の『千里眼』に匹敵する面白さに仕上がっている。最初の『千里眼』の絶対悪というべき主犯は岬美由紀の師である『友里佐知子』だったが、今回も、その意外性は絶大だ。しかも岬美由紀の小学6年生の時から始まり、その複線が貼ってあり、しかもこのキネシクス・アイの上下では終わらず次のシリーズへと続くかの様だ。
いづれにしても、上下巻共あっという間に、いっきに読める作品だ。
今回は私的あらすじの代わりに、キーなる登場人物を紹介しておく事にする。
- 岬美由紀:紹介省略、今回は小学6年生からの話からスタートする。
- 岬隆英、岬美代子:岬の両親。交通事故で亡くなるが、その原因は謎で、鷲見将輝が何かを・・・。
- 黒岩裕子:美由紀の小学生からの親友。
- 朝比奈宏美:美由紀と同じ臨床心理士。裕子と共にノン=クオリアにさらわれ人質となる。
- 鷲見将輝:ロボットメーカーのワシミ工業社長。岬隆英の会社を買収し、倒産させるが、美由紀が編朗が親に嘘をついて遊んでいる事を見抜いた事から、岬隆英の会社を救う事を約束した。
- 鷲見編朗(アムロ):鷲見将輝の息子。
- 鷲見里奈:鷲見将輝の妻であり編朗の母親。 鷲見親子は、編朗をロシアに留学させる為、飛行機で向かう途中、飛行機事故で亡くなる。しかし将輝と編朗は・・・。
- 下家一佐:岬美由紀の航空自衛隊時の上司。能登半島の豪雨で、岬に応援を求めと同時に、ノン=クオリアとの対決に岬に手を貸し、岬に一時自衛隊に戻る事を許す。そして岬はF15Jに乗り、無人ステルス戦闘機を追う。
- 久保田彰浩:蒲生の後輩の警部補。岬を好きで、ノン=クオリアとの戦いに手を貸す。
- 杉浦香織里:驚異的な確立で予報を的中させていた気象予報士。妹を人質に取られ、沼然の奴隷となっていたが、美由紀に助けられる。
- 沼敷然孝:事前に送られてくる天気予報のデータを元に、香織里を使って、予報を当てさせ、香織を奴隷と化していた。
- 益山俊成:第6航空師団整備補給群、修理隊の変人。海上自衛隊との合同訓練の最中、護衛艦ごとノン=クリアに、つかまるが、同僚3人と抜け出し、ノン=クリアの天気予報情報を基に、沼敷を使って、荒稼ぎしながら、杉浦香織里の妹を救い出していた。その後久保田と共に、美由紀を助けるが、なんとその正体は・・・。
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