仔猫たちの旅立ちの日がやって来た。
里親さんのご夫婦とは夕方、新大阪駅にて落合い、タクシーにて移動。自宅で仔猫たちとの初対面という段取りである。
予定の時刻より少し早めに到着し、指定の場所で待つ。
里親さんは仔猫用のキャリーを、こちらはペット雑誌をお互いの目印に決めてある。
早めに着いたせいで、改札を出てくる人の姿が数々目に入ってくる。
太った人、やせた人、歳をとった人、若い人。どこかでライブでもあったのか、紫のドレッドを何本もなびかせるビジュアル系男子や、金時計にモノグラムのボストンを下げた、強面の男性もいる。
どんな人が仔猫たちの家族になってくれる人だろう。どんな人が現れても、猫を愛する心に揺らぎが無いことは、メールを通じていたいほど感じている。大丈夫。
そんなことを考えながら、改札の前に立っていると、人ごみをかき分け進んでくる、薄いグリーンのキャリーバッグが目に飛び込んで来た。あれだ!
そのおふたりは清潔感に溢れた、なんとも言えない優しげな雰囲気をまとった方々であった。
その後スムーズに自宅に移動。自宅では玄関前にスタンバイしていた、お客が大好きな愛犬アーサーが熱烈な歓迎をお見舞いする。その後もお客様の膝ににじり寄って、なでてくれと甘えかかる。あつかましいぞ。
おふたりはこんなアーサーでも「仔猫の命を救ってくれた犬」と丁寧に遇してくださり、なんとアーサーのオモチャまでお土産にお持ち下さった。
「会いたかったよ! アーサー君」
と呼びかけて撫でられ、アーサーの喜んだことといったら、もう。
さて、お待たせしました。
アーサーがオモチャに夢中になっているスキに、ようやく仔猫たちとの対面タイム。
昼寝中の2匹をベッドごとすくう様に抱き上げ、猫部屋から連れ出す。
「わあ、小さい!」
目を覚ました2匹は、いつも通り好き放題じゃれはじめた。座布団のスミをかじったり、ローテーブルに登ったり。
「この2匹でいいですか?」
一応、お聞きしておくと、おふたりは満面の笑みで「はい、もちろん」と答えてくださった。そして
「ブログを読んで、この2匹以外に考えられなくなりました」
とも。
ヤンチャに走り回る2匹を捕まえ、一匹づつ抱いてもらう。妹猫は少し抱かれると遊び足りないのか、パッと走っていってしまったが、兄猫は初対面の相手だというのに、ゆったりと足をのばしウトウトしはじめた。そして時折、里親さん、いや本当の飼い主さんの顔をじっと見上げていた。仔猫の兄妹に、家族が出来た瞬間だった。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。帰りの時刻となって、走り回ってじゃれあう2匹を順番に捕まえてキャリーに収めていく。妹を捕まえ、
「あれ、お兄ちゃんは?」
と振り返ると、飼い主さんは
「もう入ってます」
2匹は静かにキャリーの中で、声も立てずにじゃれあっていた。私が動物病院に連れて行った時と、なんという違いだろう。
これが最後だからと、待たせてあったタクシーまで、おふたりと2匹を一家総出で、アーサーも一緒にお見送りした。
「元気でね」
キャリーの窓に、めいめい指や鼻を押しつけ挨拶すると、飼い主さんは丁寧にお辞儀をして車中の人となった。ドアがバタンと締まるとき、アーサーが小さく鳴いた。
2匹を送り出した後、寂しくて涙がこぼれるだろうと思っていたが、予想に反して涙は出なかった。むしろうれしかった。本当にうれしかったのだ。
飼い主さんの喜ぶ顔、飼い主さんの膝でくつろぐ仔猫の姿を目の当たりにして、ただただ幸せな気持ちが一杯になっていた。飼い主さんのお人柄、環境、仔猫の反応、すべてにおいて不安がまったく無かったからだ。
これほどの方に2匹を見つけてもらい、遠距離をものともせず引き取られ、そして愛されることは、本当に希有な事だと思う。
見送った後、家族は
「仔猫にとって、きっとこれ以上の飼い主さんは現れないよ。そんな人と出会えた確率はすごいと思う」
とつぶやいた。その狭き門を、仔猫兄妹は備わった強運と生命力で、見事くぐり抜けたのである。
仔猫が去って、我が家には笑顔が残った。
さて、今日まで仔猫たちを、兄猫・妹猫と呼んで来たがそれも終わりにしたい。飼い主さんから本当の名前をもらったのだから。
その名前は、かねがねおっしゃっていたように、2匹が命をつなぐきっかけとなった愛犬アーサーから文字を取って名付けられた。
妹猫は「サリー」。そして兄猫は―、我が愛犬と同じ「アーサー」と言う。
里親さんのご夫婦とは夕方、新大阪駅にて落合い、タクシーにて移動。自宅で仔猫たちとの初対面という段取りである。
予定の時刻より少し早めに到着し、指定の場所で待つ。
里親さんは仔猫用のキャリーを、こちらはペット雑誌をお互いの目印に決めてある。
早めに着いたせいで、改札を出てくる人の姿が数々目に入ってくる。
太った人、やせた人、歳をとった人、若い人。どこかでライブでもあったのか、紫のドレッドを何本もなびかせるビジュアル系男子や、金時計にモノグラムのボストンを下げた、強面の男性もいる。
どんな人が仔猫たちの家族になってくれる人だろう。どんな人が現れても、猫を愛する心に揺らぎが無いことは、メールを通じていたいほど感じている。大丈夫。
そんなことを考えながら、改札の前に立っていると、人ごみをかき分け進んでくる、薄いグリーンのキャリーバッグが目に飛び込んで来た。あれだ!
そのおふたりは清潔感に溢れた、なんとも言えない優しげな雰囲気をまとった方々であった。
その後スムーズに自宅に移動。自宅では玄関前にスタンバイしていた、お客が大好きな愛犬アーサーが熱烈な歓迎をお見舞いする。その後もお客様の膝ににじり寄って、なでてくれと甘えかかる。あつかましいぞ。
おふたりはこんなアーサーでも「仔猫の命を救ってくれた犬」と丁寧に遇してくださり、なんとアーサーのオモチャまでお土産にお持ち下さった。
「会いたかったよ! アーサー君」
と呼びかけて撫でられ、アーサーの喜んだことといったら、もう。
さて、お待たせしました。
アーサーがオモチャに夢中になっているスキに、ようやく仔猫たちとの対面タイム。
昼寝中の2匹をベッドごとすくう様に抱き上げ、猫部屋から連れ出す。
「わあ、小さい!」
目を覚ました2匹は、いつも通り好き放題じゃれはじめた。座布団のスミをかじったり、ローテーブルに登ったり。
「この2匹でいいですか?」
一応、お聞きしておくと、おふたりは満面の笑みで「はい、もちろん」と答えてくださった。そして
「ブログを読んで、この2匹以外に考えられなくなりました」
とも。
ヤンチャに走り回る2匹を捕まえ、一匹づつ抱いてもらう。妹猫は少し抱かれると遊び足りないのか、パッと走っていってしまったが、兄猫は初対面の相手だというのに、ゆったりと足をのばしウトウトしはじめた。そして時折、里親さん、いや本当の飼い主さんの顔をじっと見上げていた。仔猫の兄妹に、家族が出来た瞬間だった。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。帰りの時刻となって、走り回ってじゃれあう2匹を順番に捕まえてキャリーに収めていく。妹を捕まえ、
「あれ、お兄ちゃんは?」
と振り返ると、飼い主さんは
「もう入ってます」
2匹は静かにキャリーの中で、声も立てずにじゃれあっていた。私が動物病院に連れて行った時と、なんという違いだろう。
これが最後だからと、待たせてあったタクシーまで、おふたりと2匹を一家総出で、アーサーも一緒にお見送りした。
「元気でね」
キャリーの窓に、めいめい指や鼻を押しつけ挨拶すると、飼い主さんは丁寧にお辞儀をして車中の人となった。ドアがバタンと締まるとき、アーサーが小さく鳴いた。
2匹を送り出した後、寂しくて涙がこぼれるだろうと思っていたが、予想に反して涙は出なかった。むしろうれしかった。本当にうれしかったのだ。
飼い主さんの喜ぶ顔、飼い主さんの膝でくつろぐ仔猫の姿を目の当たりにして、ただただ幸せな気持ちが一杯になっていた。飼い主さんのお人柄、環境、仔猫の反応、すべてにおいて不安がまったく無かったからだ。
これほどの方に2匹を見つけてもらい、遠距離をものともせず引き取られ、そして愛されることは、本当に希有な事だと思う。
見送った後、家族は
「仔猫にとって、きっとこれ以上の飼い主さんは現れないよ。そんな人と出会えた確率はすごいと思う」
とつぶやいた。その狭き門を、仔猫兄妹は備わった強運と生命力で、見事くぐり抜けたのである。
仔猫が去って、我が家には笑顔が残った。
さて、今日まで仔猫たちを、兄猫・妹猫と呼んで来たがそれも終わりにしたい。飼い主さんから本当の名前をもらったのだから。
その名前は、かねがねおっしゃっていたように、2匹が命をつなぐきっかけとなった愛犬アーサーから文字を取って名付けられた。
妹猫は「サリー」。そして兄猫は―、我が愛犬と同じ「アーサー」と言う。