背寒日誌

2019年7月12日より再開。日々感じたこと、観たこと、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

アメリカン・ニュー・シネマの女神

2005年09月27日 01時13分38秒 | アメリカ映画
 先日テレビのニュースでウォーレン・ビーティを見た。評判の悪いシュワルツネガーの対抗馬としてカリフォルニア州知事に立候補するらしい。ずいぶん年をとったなあと思った。
 ビーティと言えば、昔は苦みばしった二枚目俳優で、実生活でもプレイボーイでならしていた。ナタリー・ウッドと共演した名作「草原の輝き」で人気を博して以来、女性遍歴がたたってか、ずっと鳴かず飛ばずだった。が、60年代終わりに衝撃的な映画で一躍時代のヒーローとして復活した。アーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」のギャング役によってだ。原題は「ボニー・アンド・クライド」。大恐慌時代に実在した若い男女のギャングを描いた作品で、アメリカン・ニュー・シネマの幕開けとなった画期的な映画だった。ビーティはクライド役を格好良く見事に演じた。そして、ボニー役がフェイ・ダナウェイ。彼女はこの映画一本で一躍スターダムにのし上がった。
 思い起こせば、60年代終わりから70年代初めはアメリカン・ニュー・シネマの全盛期だった。ハリウッド映画は沈滞し、フランスのヌーヴェル・バーグは新鮮味を失いかけていた。ちょうど私の高校生時代で、人生でいちばん多く映画を見ていた頃だ。「イージー・ライダー」「卒業」「真夜中のカーボーイ」「明日に向かって撃て」……。どの映画も社会秩序からはみ出した若者を主人公にした映画だった。なかでもアウトローの破滅的な生き方を描いた傑作が「俺たちに明日はない」だった。
 当時反体制派の憧れのアメリカ女優が二人いた。いわばアメリカン・ニュー・シネマの女神ともいえる存在で、一人がフェイ・ダナウェイ、もう一人がキャサリン・ロスだった。ダナウェイは知的でたくましく、いかにも魅力的な大人の女といったタイプで、ロスは清純で可憐、守ってあげたい美少女タイプと言ったら良いか。この二人のスターは人気を二分していたが、私は欲張りなことに両方とも好きだった。「俺たち…」のほかに「華麗なる賭け」のダナウェイはすばらしかった。キャサリン・ロスはなんと言っても「卒業」で、教会の結婚式でダスティン・ホフマンに拉致される花嫁姿の彼女は今でも目に焼きついている。「明日に向かって撃て」で、バカラックのメロディーが流れる中、彼女が自転車に乗るシーンが印象深く、思い浮かべてみるだけで、年甲斐もなく胸がキュンと詰まる気持ちがこみ上げてくる。

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