総務省の業界指導もそのような「水平対等型」開発・サービスの方に向かっており、僕もそれらの流れの中で日本の「垂直統合型」には否定的に思っていましたが、『グーグルvsアップル ケータイ世界大戦』を読んでみて、決してそんなに簡単な問題ではないということを知りました。著者は『日経Trendy』の編集記者から出発し、携帯業界のウォッチャーとして長年その隆盛を見守ってきたジャーナリストです。
携帯市場の最近の話題はアップルのiPhone3Gと、もう一つはグーグルが提案しているAndroidという携帯用オープン・ソースのOSのことでしょうか。iPhone3Gはもうよく知られているようにタッチパネルを使用したインターフェイスの先進性と、インターネット・ブラウザを携帯世界で標準化しました。Androidは携帯の開発で非常にコストの掛かるOSの基本部分をオープン開発にしようという提案です。当然のことながら地図や検索連動広告などPCの分野で確立してきたグーグルのアドバンテージを、後発になってしまっている携帯の分野でも期待しているのです。ただ、ノキアなどのこれまでの携帯業界のビッグ企業も新たな戦略に乗り出し、陣営入り乱れてのまさに「世界戦争」という状況を呈しているようです。
特に面白いと思ったのは、冒頭で触れた世界標準から離れガラパゴス化していたはずの日本の「垂直統合型」ビジネスモデルを、逆にアップルやノキアが志向してきているという皮肉な現実が出てきているということです。日本人は世界標準的な戦略となりますと、政治もそうですが何となく苦手な印象は拭えません。目まぐるしく変化する携帯業界ですが、この本を読んでますます目が離せなくなりました。
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