コア宙域を行く旅も今回で一区切り。最後はトラベラーズ・ダイジェスト誌で紹介されたシレア・メインの4星域を…と考えていたのですが、星系の設定の量が意外となくて「冒険の舞台」とはなりにくく、「観光地」としては地味(汗)、という問題もあって、今回はコア宙域の中から特筆すべき2星系を紹介しようかと思います(シレア・メインはリクエストがあったら、ということで)。
まずはキャピタルから9パーセク離れた、ディントラ星域のカムシイ。ここは星系全体がレジャーランド、という非常に興味深い場所です。ここはGURPSの『Planetary Survey 1: Kamsii』にて詳細に全体像が設定されています。
もう一つはコア宙域の端、一方で「帝国のへそ」でもあるカディオン星域のレファレンス。『メガトラベラー』の宇宙図などで散々名前は出ているのに、細かい説明は特になされていなかった星です。その名の通り、ここを「基準」にして帝国の各星系の位置は測定されているのですが、こちらはグランドツアー第10話「Reference Point」の舞台となっています。
カムシイ Kamsii 3021 A45778C-A 農業 G Im
カムシイは、帝国貴族のオート=ジョーンズ家(haut-Jones)がオーナーを務めるカムシイ社(KamsiiCo)によって運営される、数々のエンターテイメント施設や(管理された)野生の動物園があるリゾート星系です。人口は統計上6100万人ですが、そのうち約3000万人が滞在中の旅行客と言われるほど、大勢の人々で常に賑わっています。
カムシイの歴史は、ハンセン家の歴史でもあります。恒星間戦争時代の末期を生きたロデリコ・ハンセン(Roderico Hansen)は、後に「人類の支配」を打ち立てるヒロシ・エスティガリビア総司令に仕え、その功績でウシュラ(ダグダシャアグ宙域 1016)の公爵に任ぜられました。ハンセン家はその後、-2045年にこのカムシイを(食い詰めた)ヴィラニ貴族から獲得しました。暗黒時代を経て第三帝国の時代になると、クレオン1世をかねてから支持していたハンセン家は帝国貴族の一員となり、領地もそのまま保証されました。しかし、内戦時代のハンセン家の当主レンヤード(Renyard)は、ソロマニ主義に傾倒し、さらに後に皇帝となるアルベラトラ提督を支援したにも関わらず、その見返りにアンタレス大公になれなかったことで皇室に恨みを抱きました(※別に大公にする約束があったわけではないようです。結局アンタレス大公には、アルベラトラの忠臣であったヴァルグルのソーグズ提督(Admiral Soegz)が就きました)。
そしてそれはレンヤードの息子ジャカモ(Giacamo)の時代に暴発します。領地と共に思想も父から引き継いだ彼は、当時の皇帝ザキロフがヴィラニ貴族のシイシュギンサ家(※ヴィラニ系メガコーポレーションであるジルンカリイシュの創業者一族です)から后を迎えたことに激怒し、ザキロフの暗殺を企てます。が、陰謀は露見し、ウシュラ公爵位を剥奪された上で、680年にジャカモ本人と共謀者4人(ジャカモの長男ポーティオ(Portio)を含む)は死刑となりました。その一方で、陰謀に加わらなかった一族の他の者は全くお咎め無しとなりました。とはいえ皇帝暗殺を企てる、という恥ずべき悪名から逃れるために、ジャカモに代わって当主となった娘のポーフィリア(Porfiria)がアダスカグル(ダグダシャアグ宙域 0320)のオート=ジョーンズ男爵家と縁組みしたのを機に、生き残ったハンセン一族もオート=ジョーンズの姓を名乗るようになり、ザキロフ皇帝が残してくれた領地であるカムシイの統治を行うようになりました。そしてポーフィリア(と一族の者たち)は一門を建て直すために、カムシイの豊かな自然とヴィラニ帝国時代から増改築を繰り返した施設に目をつけ、星系のリゾート化を推進しました。
現在のカムシイは、惑星全体がレジャーランドとなっています。惑星各地には、古き良きテラを模したアラビアン・ナイトやマンハッタンやヴァイキングの建物が立ち並び、「住民」はその時代の服装を身にまとって観光客に応対するのと同時に、そのまま生活も営んでいます。また本当にハイヴやドロインが出迎えてくれる「ハイヴランド」「ドロインランド」も存在します。さらに、マリンリゾートや、野生動物を見物できる自然地区もありますし、カムシイの玄関口であるジャジル地上宇宙港(Jadzil Downport)周辺は高級ホテル街となっています。美術館には古のグーテンベルク聖書やXメンの第1話が展示され、レストランでは(予算に応じて)様々な美味しい食事を堪能でき、北極の山岳地帯では剣士となってドラゴンと戦えるアトラクションもあります。
カムシイの治安レベルは極めて高くなっていますが、ここはあくまでレジャーランドだからです。特徴的なのは、カムシイでは通常の帝国クレジット通貨は使えず、入園時に渡される「カムシイ・カード」に予め入金をしておいてから、カードを通じてカムシイ内での全ての決済がなされます。さらにこのカードひとつでID認証、短距離通信、ホテルの電子ルームキー、生体機能モニター、GPSなどの機能も兼ね備えています。また名称こそ「カード」ですが、形状はカード型以外にもブレスレットやペンダントといった装飾品型もあるので、子供に着けておくことも容易です。カードの機能はカムシイを離れると停止されますが、デザインが定期的に変更されるため、カード自体が旅行者にとっての記念品にもなります。このカードなしではカムシイではほぼ何もすることが出来ず、利用者の行動は管理会社であるカムシイ社にほぼ筒抜けとなるわけですが、これは旅行客の安全確保を何よりも優先に考えているからです。
レファレンス Reference 0140 D100100-B NS 真空・低人・非工 Im 研究基地γ
レファレンスは、星系内に海軍基地・偵察局基地・帝国研究基地の3つを抱えながらも、帝国市民にはあまり有名ではない星です。なぜならここは帝国の測量の「基準点(レファレンス)」であり、伝統的に星図にはあまり記されていないからです。
大地は真空で乾き切っており、天然資源を特に持っていないレファレンスは、歴史的に第一帝国の時代から様々な理由で「存在しない」星でした。第一帝国の末期、軍の科学者たちは宇宙船用兵器の研究をする最高に機密を保てる場所を探していました。当時ママタヴァ(Mamatava)と呼ばれていたこの星は、まさにうってつけの環境だったため、地表にはドームが、地下にはトンネル網が建設され、様々な機材とともに科学者がやって来ました。
こうしてママタヴァは星図から消されましたが、元々この星系はガスジャイアントも水界も持っていなかったのでジャンプ-1の通商路からも外れており、誰の不便ともなりませんでした。
こうして恒星間戦争の間、ママタヴァの研究施設はヴィラニ人のために研究を続けましたが、その甲斐もなく、価値ある成果を得ることはできませんでした。やがて地球連合軍の偵察艦によって発見されて科学者たちはママタヴァを去り、施設は閉鎖され、そのまま「ガタガタ帝国」の間は星系ごと放置されました。
暗黒時代が来ると、ママタヴァは他の多くの世界と同じく孤立しました。元々の研究施設の記録は失われ、帝国暦4世紀に行われた第一期探査(Grand Survey)によってようやく再発見されました。
その大探査で集めた膨大なデータを集積する特別な場所を、偵察局は欲していました。その時、ママタヴァの地下にかつての研究施設が発見されたのです。399年、この研究施設は大探査データの保存所として改装されました。同時に、世界の名前は「レファレンス」と改められ、帝国の各星系の位置を定める基準点となりました。
レファレンスの膨大な数のコンピュータは、その後の補修と改装を経て、第二期探査(Second Grand Survey)のデータも加えられました。ここに収められた国勢調査や天然資源埋蔵量などのデータは、帝国加盟世界の地方政府にだけでなく、様々な研究目的にも利用されています。
(※レファレンスの設定はT4・T5版では異なっていて、第一帝国時代にShiishuusdarと呼ばれていた星が、第一期探査の頃にはAadkhienと変わり、1065年の第二期探査ではUWPがB100717-Bだったそうです。しかしわずか50年ほどで人口が6桁も減ったことへの何の解説もなく、合理性を欠いていると判断したため、今回は名前も含めて採用しませんでした)
【参考文献】
・Planetary Survey 1: Kamsii (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・MegaTraveller: Imperial Encyclopedia (Game Designers' Workshop)
・Signal-GK #3
・Travellers' Digest #10 (Digest Group Publications)
まずはキャピタルから9パーセク離れた、ディントラ星域のカムシイ。ここは星系全体がレジャーランド、という非常に興味深い場所です。ここはGURPSの『Planetary Survey 1: Kamsii』にて詳細に全体像が設定されています。
もう一つはコア宙域の端、一方で「帝国のへそ」でもあるカディオン星域のレファレンス。『メガトラベラー』の宇宙図などで散々名前は出ているのに、細かい説明は特になされていなかった星です。その名の通り、ここを「基準」にして帝国の各星系の位置は測定されているのですが、こちらはグランドツアー第10話「Reference Point」の舞台となっています。
カムシイ Kamsii 3021 A45778C-A 農業 G Im
カムシイは、帝国貴族のオート=ジョーンズ家(haut-Jones)がオーナーを務めるカムシイ社(KamsiiCo)によって運営される、数々のエンターテイメント施設や(管理された)野生の動物園があるリゾート星系です。人口は統計上6100万人ですが、そのうち約3000万人が滞在中の旅行客と言われるほど、大勢の人々で常に賑わっています。
カムシイの歴史は、ハンセン家の歴史でもあります。恒星間戦争時代の末期を生きたロデリコ・ハンセン(Roderico Hansen)は、後に「人類の支配」を打ち立てるヒロシ・エスティガリビア総司令に仕え、その功績でウシュラ(ダグダシャアグ宙域 1016)の公爵に任ぜられました。ハンセン家はその後、-2045年にこのカムシイを(食い詰めた)ヴィラニ貴族から獲得しました。暗黒時代を経て第三帝国の時代になると、クレオン1世をかねてから支持していたハンセン家は帝国貴族の一員となり、領地もそのまま保証されました。しかし、内戦時代のハンセン家の当主レンヤード(Renyard)は、ソロマニ主義に傾倒し、さらに後に皇帝となるアルベラトラ提督を支援したにも関わらず、その見返りにアンタレス大公になれなかったことで皇室に恨みを抱きました(※別に大公にする約束があったわけではないようです。結局アンタレス大公には、アルベラトラの忠臣であったヴァルグルのソーグズ提督(Admiral Soegz)が就きました)。
そしてそれはレンヤードの息子ジャカモ(Giacamo)の時代に暴発します。領地と共に思想も父から引き継いだ彼は、当時の皇帝ザキロフがヴィラニ貴族のシイシュギンサ家(※ヴィラニ系メガコーポレーションであるジルンカリイシュの創業者一族です)から后を迎えたことに激怒し、ザキロフの暗殺を企てます。が、陰謀は露見し、ウシュラ公爵位を剥奪された上で、680年にジャカモ本人と共謀者4人(ジャカモの長男ポーティオ(Portio)を含む)は死刑となりました。その一方で、陰謀に加わらなかった一族の他の者は全くお咎め無しとなりました。とはいえ皇帝暗殺を企てる、という恥ずべき悪名から逃れるために、ジャカモに代わって当主となった娘のポーフィリア(Porfiria)がアダスカグル(ダグダシャアグ宙域 0320)のオート=ジョーンズ男爵家と縁組みしたのを機に、生き残ったハンセン一族もオート=ジョーンズの姓を名乗るようになり、ザキロフ皇帝が残してくれた領地であるカムシイの統治を行うようになりました。そしてポーフィリア(と一族の者たち)は一門を建て直すために、カムシイの豊かな自然とヴィラニ帝国時代から増改築を繰り返した施設に目をつけ、星系のリゾート化を推進しました。
現在のカムシイは、惑星全体がレジャーランドとなっています。惑星各地には、古き良きテラを模したアラビアン・ナイトやマンハッタンやヴァイキングの建物が立ち並び、「住民」はその時代の服装を身にまとって観光客に応対するのと同時に、そのまま生活も営んでいます。また本当にハイヴやドロインが出迎えてくれる「ハイヴランド」「ドロインランド」も存在します。さらに、マリンリゾートや、野生動物を見物できる自然地区もありますし、カムシイの玄関口であるジャジル地上宇宙港(Jadzil Downport)周辺は高級ホテル街となっています。美術館には古のグーテンベルク聖書やXメンの第1話が展示され、レストランでは(予算に応じて)様々な美味しい食事を堪能でき、北極の山岳地帯では剣士となってドラゴンと戦えるアトラクションもあります。
カムシイの治安レベルは極めて高くなっていますが、ここはあくまでレジャーランドだからです。特徴的なのは、カムシイでは通常の帝国クレジット通貨は使えず、入園時に渡される「カムシイ・カード」に予め入金をしておいてから、カードを通じてカムシイ内での全ての決済がなされます。さらにこのカードひとつでID認証、短距離通信、ホテルの電子ルームキー、生体機能モニター、GPSなどの機能も兼ね備えています。また名称こそ「カード」ですが、形状はカード型以外にもブレスレットやペンダントといった装飾品型もあるので、子供に着けておくことも容易です。カードの機能はカムシイを離れると停止されますが、デザインが定期的に変更されるため、カード自体が旅行者にとっての記念品にもなります。このカードなしではカムシイではほぼ何もすることが出来ず、利用者の行動は管理会社であるカムシイ社にほぼ筒抜けとなるわけですが、これは旅行客の安全確保を何よりも優先に考えているからです。
ちなみに、ハンセン家からウシュラ公爵を継承したヴィラニ人貴族のシマルー家は、その後も代々ウシュラ公爵であり続けました。現在の当主はクギ・ララギイ・シマルー(Khugi Laragii Simalr)で、帝国貴族院においてダグダシャアグ宙域の多くの貴族の委任票を取りまとめている有力議員です。彼の長男のガニディイルシ(Ganidiirsi Ling Simalr)は、現在キャピタルのシレア大学に留学して知的生物学を学んでいます(※このガニディイルシ氏は1106年に博士号を得て大学を卒業し、後に帝国の超重要人物になる…かもしれません)。
レファレンス Reference 0140 D100100-B NS 真空・低人・非工 Im 研究基地γ
レファレンスは、星系内に海軍基地・偵察局基地・帝国研究基地の3つを抱えながらも、帝国市民にはあまり有名ではない星です。なぜならここは帝国の測量の「基準点(レファレンス)」であり、伝統的に星図にはあまり記されていないからです。
大地は真空で乾き切っており、天然資源を特に持っていないレファレンスは、歴史的に第一帝国の時代から様々な理由で「存在しない」星でした。第一帝国の末期、軍の科学者たちは宇宙船用兵器の研究をする最高に機密を保てる場所を探していました。当時ママタヴァ(Mamatava)と呼ばれていたこの星は、まさにうってつけの環境だったため、地表にはドームが、地下にはトンネル網が建設され、様々な機材とともに科学者がやって来ました。
こうしてママタヴァは星図から消されましたが、元々この星系はガスジャイアントも水界も持っていなかったのでジャンプ-1の通商路からも外れており、誰の不便ともなりませんでした。
こうして恒星間戦争の間、ママタヴァの研究施設はヴィラニ人のために研究を続けましたが、その甲斐もなく、価値ある成果を得ることはできませんでした。やがて地球連合軍の偵察艦によって発見されて科学者たちはママタヴァを去り、施設は閉鎖され、そのまま「ガタガタ帝国」の間は星系ごと放置されました。
暗黒時代が来ると、ママタヴァは他の多くの世界と同じく孤立しました。元々の研究施設の記録は失われ、帝国暦4世紀に行われた第一期探査(Grand Survey)によってようやく再発見されました。
その大探査で集めた膨大なデータを集積する特別な場所を、偵察局は欲していました。その時、ママタヴァの地下にかつての研究施設が発見されたのです。399年、この研究施設は大探査データの保存所として改装されました。同時に、世界の名前は「レファレンス」と改められ、帝国の各星系の位置を定める基準点となりました。
レファレンスの膨大な数のコンピュータは、その後の補修と改装を経て、第二期探査(Second Grand Survey)のデータも加えられました。ここに収められた国勢調査や天然資源埋蔵量などのデータは、帝国加盟世界の地方政府にだけでなく、様々な研究目的にも利用されています。
(※レファレンスの設定はT4・T5版では異なっていて、第一帝国時代にShiishuusdarと呼ばれていた星が、第一期探査の頃にはAadkhienと変わり、1065年の第二期探査ではUWPがB100717-Bだったそうです。しかしわずか50年ほどで人口が6桁も減ったことへの何の解説もなく、合理性を欠いていると判断したため、今回は名前も含めて採用しませんでした)
【参考文献】
・Planetary Survey 1: Kamsii (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・MegaTraveller: Imperial Encyclopedia (Game Designers' Workshop)
・Signal-GK #3
・Travellers' Digest #10 (Digest Group Publications)
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