宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(24) カレドン星域

2014-11-21 | Traveller
 今回はリーヴァーズ・ディープ宙域の数々の設定の中から、帝国とカレドン公王国の国境線が走るカレドン星域を紹介したいと思います。全ての星系がジャンプ-1で繋がっているわけではありませんが、商取引に熱心なカレドン公王国の存在もあり、辺境ながらも活発な国境間交易が行われていることが想像できる地域です。同時に、90年前の内戦がいまだに「終わってはいない」ことも…。

 カレドン星域の名は、隣接するスコティアン・ディープ星域に跨って存在する小さくも繁栄した恒星間国家であるカレドン公王国が由来です。そして公王国はディープ宙域内で最も重要な独立国家です。
 星域のトレイリング方面は帝国とその実質的な属国であるコラス統治領に治められており、帝国がじわじわと影響力を増しています。
 カレドン星域には29の星系があり、総人口は361億2200万人です。最も多い人口はジェリムの190億人、最も高いテクノロジーレベルはコンコードとジェリムの14です。
(※UWPの数値を全て足すと総人口は約271億人となります。しかしそれではジェリムの「誤差」の90億人が含まれず、他の星系で吸収させることもできないため、独自にそのまま合算しています)



ツァネシ Tsanesi 1711 D653636-6 非工・貧困 Cp
 ツァネシには知的種族イン=ツァイが居住していますが、彼らはこの星で進化した存在ではないようです。彼らには他にも謎が多く、カレドン公王国はここを保護領化して研究基地を置き、科学者たちがその謎を追い求めています。

スチュアート Stuart 1716 A668786-B M 農業・肥沃・富裕 G Ca
 この星の現在の入植地は、カレドン公王国の拡大初期に建設されたものです。しかし遥か以前に地球連合から旅立った植民団の第一波が先に入植しており、その入植地が消え去った理由はちょっとした謎となっています。例えば、《略奪者》が入植者を連れ去り奴隷として売ったという説、密林の奥に潜む未知の知的種族に滅ぼされたという説、逆に密林の奥深くに移住して今でも生き残っている説など、様々に考えられています。これらの説はどれも証明されていませんが、まるで裏付けるかのように、密林に向かった探検家が謎の音や未知の存在に遭遇したとされる報告は時折なされています。ちなみに、地球人が築いた最初の街は大河川(Great River)の河口かつタングルグレード密林(Tangleglade Jungle)の縁に位置していましたが、現在では史跡として保存されています。
レフリー情報:地球人入植地が消えた理由は確かに諸説ありますが、実は初期のカレドン入植地も一度消滅しています。この時は伝染病によるものとはっきりしており、その後の医療技術の進歩によって克服されています。

マクベス MacBeth 1717 B573733-A M G Ca
 マクベスには、莫大な量が埋蔵されている工業用ダイヤモンドを求めて入植が始まりました。カレドン公王国内で製造されているレーザー機器の大半で、マクベス産のブルーダイヤモンドが使用されています。
 マクベスは地質学的に活発な世界で、潮汐力による地震と火山活動が地表に多大な影響を与えています。火山活動が活発だからこそダイヤモンドも豊富なのですが、火山性ガスに含まれる硫黄や硫黄合成物によって大気は損なわれており、外気を呼吸する際にはフィルタ付きのマスクを必要とします(が、地表全てで必須というわけでもありません)。
 バーナム市(Birnham)、スコーン市(Scone)といった複数の都市からなる入植地は地震の影響が少ない地域に建てられていますが、ダイヤモンド鉱山はそうはいきません。鉱山はえてして活火山の麓にあり、地質が不安定化すればその仕事は極端に危険となります。
 マクベスのダイヤモンド産業は公王国内だけでなく、諸外国からも注目されています。帝国のメガコーポレーションであるスターンメタル・ホライズン社は、この地を探査し、開発し、帝国へ宝石を輸出する認可を取得しました。また、公王国と敵対している独立星系ジェルメーヌ(2019)の船が、宝石の密輸や、彼らと内応している鉱夫との連絡のために秘密裏に訪れていることも有力視されています。マクベスの海軍基地はそういった違法行為を可能な限り阻止はしていますが、完全にとはいかないのが実情です。

リンダ Linda 1718 C657510-8 農業・肥沃・非工 Na
 この星系には、リンダとサンチャゴ(Santiago G676430-8 肥沃・非工 Na)という2つの主要世界が存在します。そしてこの2つの世界はお互いに敵対しあっています。
 先に入植されたのはサンチャゴの方で、住み着いたのは暗黒時代の《略奪者》の一団でした。しかしやがて彼らは恒星間航行技術を失い、一時は原始人同然にまで後退しました。
 後に、カレドン公王国の探査隊が惑星リンダの温帯にランサナムの豊かな鉱脈を発見したことにより、こちらにも入植が始まりました。そしてリンダはカレドン系企業のアーバスノット鉱物資源社(Arbuthnot Minerals and Resources Ltd)に保有され、同社はリンダの鉱山入植地に投資しました。入植地は繁栄し、人々を惹きつけ、企業統治下であり続けました。
 リンダ社会が安定した頃、サンチャゴの人々は再び宇宙に足を踏み入れ始めました。そして彼らはリンダの優先領有権の主張を行いました。なぜなら惑星サンチャゴにはランサナムが乏しく、それを必要とするジャンプドライブの生産が困難だったからです。これが両世界の関係を悪化させた原因でした。
 近年、サンチャゴからの侵入者が不法にランサナムを採掘しようとし、それにリンダの企業警備隊が過剰な対応を採ったため、両世界による非難と報復の応酬は惑星間戦争にまで拡大しました。

ファース Firth 1813 C52559B-9 非工 A Ca
 ファースの風変わりな社会構造は注目に値します。それは初期移民の苦難に由来し、現在まで入植地が生き残れた理由となりました。
 カレドン公王国の建国当初の拡大から遅れること15年、惑星の広範囲に鉱脈が発見されたことから入植が開始されましたが、定住に必要な資源はあまりに乏しいものでした。カレドンからの物流の減少に加え、内部対立や相次ぐ天災によってファースの入植地は行き詰まりました。
 入植当初は鉱業生産管理に用いられていた、大規模コンピュータ複合体である『ディレクター(DIRECTOR)』――植民地が見捨てられたと判明した時、人々はこの『ディレクター』の完璧な公平さに全てを委ねたのです。コンピュータは食事配給や開発計画など、社会のあらゆる面を立案しました。さらに裁判権をも持ち、民衆の生殺与奪すら握りました。論理的で冷徹なプログラムによる、人類史で最も効率的な専制政治を築くこと以外全てを犠牲にして、ファースは生き残ったのです。
 『ディレクター』による非人間的な支配が必要ではなくなったはずの今でも、ファースの地下都市複合体に隔離状態となっている民衆は自分たちが普通だと認識し、理解不能な外世界人を恐れています。一部の社会学者は、ファースのコンピュータ技術者からなるエリート階層が社会を裏から操るために現体制を利用していると考えていますが、その証明は成されていません。

カレドン Caledon 1815 A8688A5-C M 高技・肥沃 G Ca 公王国首都
 地球型惑星のカレドンは、もちろんカレドン公王国の首都で、公王国政府の中心地であると同時にカレドンの世襲権力者の住居です。この素晴らしい環境の割に人口がそれほど多くないのは、人口増による環境破壊を恐れて当初から計画的人口調整や移民の奨励などで抑え込んでいたからです。よって世界は完全に探査されていますが、それほど開発はされていません。
 公王国の政治外交経済の中枢である王都セルカーク市(Selkirk)は(※星系行政は300km離れたマッケンジー市(Mackenzie)で執り行われます)、中心を北西から南東に流れるマノーク川(Mannoch River)によって大きく北側と西側に分けられ、さらに地区ごとの性格によって5つに区分されています。
 非常に裕福な市街区(The City)は公王国経済の中心地で、一流企業や大銀行、そして富める者も貧しい者も金銭を求めて往来する街です。カレドンの報道や娯楽を司るマスメディア各社もここにあります。559年創立の証券取引所(Malárteagh Treágtacht)は古めかしく見えますが、実際には最新のTL12技術による建造物です。フィッツロイ通り(Fitzroy Street)には各国の大使館が並び、外交活動や怪しげな活動(特に、外交関係がないはずのマールハイム大使館に「外交官」という名の諜報員が出入りしているのは事実です)が日夜繰り広げられています。
 中央区(The Roods)はマノーク川の中洲にあって素晴らしい川辺の景観を誇る、公王国政府の中心地です。ここには軍事パレード会場として用いられる「公王の広場(Prince's Heath)」を囲むように、公王国政府の三柱となるジョン宮殿(John's Keep)、議会議事堂(Parliament Castle)、公王裁判所(Crown Bench)が集まっています。さらに、迷路のように立ち並ぶ官庁街や、王立カレドン大学(Royal University of Caledon)を中心とする学生街、高級住宅商業地区のバノックバーン街(Bannockburn)、アベルニアン海(Abernian Sea)のラルゴ湾(Largo Bay)に面したラルゴ港(海洋港)もここにあります。
 北郊区(Norfork)は地元住民に愛されるインバーガリー魚市場(Invergarry fish market)など労働者階級の街、南郊区(Soufork)は中流階級の街となっていて、川の上流の堰堤区(The Dam)には指令本部を含む国内最大の海軍基地やカレドン地上港(Caledon Downport)、そして宇宙船乗組員向けの歓楽街があります。

ホフマン Hoffman 1818 D3218A8-8 非農・貧困 G Na
 ホフマンの入植地は事故から始まりました。暗黒時代の直前、カレドン(1815)を経った植民船ゲルマニアは、深刻なドライブ故障によってこのホフマンに不時着したのです。当時のカレドンの星図にはただのカタログ番号で記載されていたような環境の悪い星で、入植者たちは完全に孤立してしまいました。
 惑星および恒星ホフマンの名前は、植民船の船長の名から付けられました。彼は不時着の際に破壊された艦橋で死亡しましたが、彼の操船技術と英雄的行為によって船の残りの部分が守られたのです。
 この酷く寒冷な新天地での最初の3年間で9割の人々が死亡しました。しかしどうにか避難所が建設され、即興の水耕栽培システムは徐々に改善され、探検隊が発見した洞窟の地下に入植地が築かれました。わずかずつではありますが入植地は栄え、彼らはゆっくりと地下都市を拡大していきました。ただ、生存こそが優先されたために彼らの進歩は遅く、126年にカレドンの商船が彼らを発見した時点でも彼らの文明は洗練されていませんでした。ホフマンの民は公王国との交易を歓迎しましたが、長年に渡って染み付いた自立と自給自足の伝統は、もはやカレドンの民とは違う自意識を持たせていました。
 同様に彼らは、公王国の力を削ぐための世界連盟を作ろうとするジェルメーヌ(2019)の提案をはねつけました。しかしこの星の重要性ゆえに、ジェルメーヌ政府による政治的陰謀は日常的です。例えば、ホフマンの世襲指導者をジェルメーヌの利益にかなう傀儡に入れ替えようとする策略が進行中であると、しばしば噂されています。

グレンシエル Glenshiel 1912 DA86563-7 農業・肥沃・非工 G Cp
 グレンシエルは、国境外ではあるものの公王国の強い影響下にある世界です。この保護領は公王国と良好な交易関係や軍事支援を得られていますが、カレドン議会上下院への代表選出権は持ちません。
 カレドンのジェームス・アームストロング卿(Sir James Armstrong)が、現在のアームストロング・ランディング市(Armstrong's Landing)を建設したのはわずか250年前のことです。当時のカレドンで流行した自然回帰思想を受け入れたジェームス卿は、忙しい現代文明からの逃避先を求める人々のために、この入植地を築きました。
 しかし彼の死後、入植地は徐々に彼の理想からは外れていきました。それは今では単なる農業集落となり、双子入植地のもう片方であるベン・ラーレン町(Ben Laren)は、極北海(Northfar Sea)のヤイバウオ(bladefish)を捕獲し輸出する漁港となりました。これらの農水産物は公王国だけでなく帝国領でも人気があります。
 考古学的に重要な「ジュラの墜落痕(Crash Jura)」がある場所として、この星は科学界でも有名です。加えて、ジュラ台地にある印象的な三連峰であるアネクトール山(標高14000メートル)でも知られています。これまで登頂者のいないこの山は神秘に包まれており、この世界の生態系に反した奇妙な生物「風霊獣(Windstalkers)」の噂が広まっています。

クレバース Claverse 1913 B7677BB-9 M 農業・肥沃 A G Ca
 マクスウェル伯爵提督の故郷であり軍事拠点でもあったクレバースは、1024年の王朝危機で提督が敗れて以来ずっとキャンベル朝支配への不満を溜めており、反乱寸前の世界となっています。常にある武装蜂起の可能性を摘むために自由の多くを縛らざるをえず、地方自治の原則を放棄して王朝に忠実な知事が任命され、海軍基地は平均よりも遥かに強化されています(※カレドン海軍は機動小艦隊の運用を主としているので、一般的な海軍基地の規模は帝国偵察局基地と同程度です)。
 そして最新の知事であるジョン・ガン男爵(Lord John Gunn)は、手に負えないこの星を治めるには向いていませんでした。彼は小規模の暴動に対して海軍を投入し、群衆に発砲させました。状況は不安定化し、ジョン卿は戒厳令を発してそれに応じました。「自由闘士(Freedom Fighters)」がクレバースの各地に出現してゲリラ攻撃を始め、武器や資材を蓄積し、さらに緊張を増しました。
 暴力の激化の可能性を考慮し、この世界にはアンバーゾーンが指定されています。

グランピア Grampia 1914 E132520-5 低技・非工・貧困 G Ca
 グランピアはここ2世紀内に入植が始まった、小さくて岩だらけの世界です。ここには様々な種類の鉱物が埋まっていて、最初の入植は大手資源開発企業のマクレガー・ミネラルズ社(MacGregor Minerals)によって行われました。
 しかし同社は1024年の王朝危機の際に付く側を見誤りました。内戦の勝者となったキャンベル卿はマクレガー社の事業認可を取り消し、1025年前半にはグランピアの入植地と鉱山の統治権を「暫定労働者評議会(Provisional Workers' Council)」に与えました。
 評議会は定期的な選挙で選ばれた者たちによって動かされ、重要事項は労働者による投票で決定されます。この星の住民は何らかの職業組合に属する権利を持ちますが、組合に属さない人は二級市民扱いされ、政治への発言権を持ちません。
 民衆による政府は必ずしも順調にはいきませんでした。組合間には既得権を巡って静かな駆け引きがあり、権力は危険なまでに数人の重要組合の理事に集中し、政治は汚いゲームと化しました。特に、鉱夫組合の野心的なソーン・ブルネイ(Thorn Bournais)はマクスウェル派の影響を受けていて、かなりの懸念を引き起こしました。ブルネイと非主流派による組合内の権力闘争はしばらく続いていますが、加えて、鉱夫組合の理事がクレバース(1913)のマクスウェル支持者から援助を受け取っているとも噂されています。
 資源の面では重要な世界とは言えないグランピアですが、カレドン(1815)やスコティア(1916)に近いこの星は、地政学的に要注意な世界となっています。

スコティア Scotia 1916 B789434-B 非工 G Ca
 スコティアはテラ(ソロマニ・リム宙域 1827)に似た過ごしやすい世界ですが、陸地面積がほとんどありません。土地は広大な海に諸島の形で散らばり、最も大きな「大陸」でも15000平方kmもありません(※四国が18300平方km)。
 陸地に乏しいスコティアには長い間入植がなされませんでしたが、暗黒時代の間には《略奪者》が島を軍艦の秘密修理基地にしていた時期もあります。
 カレドン公王国の拡大が始まるとスコティアは真っ先に領有されましたが、価値ある資源は無いように見えました。しかしここは美しい自然の星です。カレドン(1815)のウィンドシェーム海(Windshaeme Sea)に浮かぶ熱帯諸島を思い起こさせるこの惑星は、第4代公王ウィリアムが王室の資産として保有を宣言し、忠義への恩賞として貴族の地位と併せて島(と邸宅)を分け与えるようになりました。
 スコティアは今もそんな星のままです。多くの大貴族や著名な経営者はここの島を所有し、会席や個人的な休暇に利用しています。そして何人かはリゾートホテルを建設し、カレドンの観光客にこの素晴らしい島々で過ごす機会を提供しました。
 多くの者は、王室に貢献した先祖から相続した遺産としてここの島を受け取っていますが、島と邸宅を保有し続けるには出費が非常にかさむため、時折資産のない所有者が島を貴族の地位と併せて売却しています。これは一個人がカレドン貴族に成り上がるための、非常に高額ではありますが一番の近道です。

ロブ・ロイ Rob Roy 1917 B6469BA-B M 工業・高人・肥沃 A G Ca
 この世界は公王国の重要な工業の中心地で、国内で2番目に人口の多い星系です。ロブ・ロイは1024年の王朝危機の際にはマクスウェル派につき、両陣営はこの星を手中に収めるべく多くの戦略を練り、そしてその結果激戦地となりました。
 ダンバートンの戦いでマクスウェル伯爵が敗れた後、彼は亡命するその時までこの星で防衛戦の指揮を執っていました。勝者となったキャンベル卿の軍隊はロブ・ロイでの地上戦こそ避けられましたが、マクスウェルの指令本部を発見することもできませんでした。
 それは北大陸の北極荒野のどこかの地下にあったと言われています。マクスウェルは逃亡する前に機密情報をコンピュータから消し、施設を閉鎖しました。機密保持目的のためにその場所は極少数の重要人物だけにしか知らされず、案内なしには見つけることができません。マクスウェルの身内がその場所を明らかにしなければ、もしくは偶然に発見されなければ、指令本部は幻のままでしょう。
 一般的に有名なおとぎ話に『氷の城塞』というものがあります。秘密の場所にカレドン公王家の象徴である宝珠、王笏、王冠、宝石の剣が眠り、受け継ぐ資格を持つ公王を待っていたというものです。そして出処の怪しい話ですが、その寓話をなぞるように、マクスウェルはこれら「自分の物」を再び取り戻しに来る日が来るまで国内のどこかに隠した、と言うのです。金銭的に、そして政治的に極めて大きな価値を持つこれら王権の象徴は、確かに内戦以来見つかっていません。

ファーガス Fergus 2014 C253304-7 低人・非工・貧困 G Na
 非常に規模が小さいに割にかなりの大気を持つファーガスは、本来存在し得ない不自然な惑星です。惑星が発見された際には豊富な生物形態を持つことがわかりましたが、これらは明らかに、この数十万年以内にあちこちの世界から寄せ集めて移植し、急激に進化させたものでした。
 科学者は太古種族による干渉だと考えています。彼らが不毛の地であるこの惑星を改造し、生命の種を蒔いたのだと。しかし多くの太古種族の「作品」と同様に、この行動の目的は判明していません。
 太古種族期のファーガスは、大気と気温の調整によって過ごしやすい世界だったと考えられています。いくつかの発掘物からは、かつては多数の植物や動物が栄え、色々な気象現象が起きていたことを伺うことができます。しかし太古種族の滅亡後、そんな環境を維持していた機構は停止し、空気は薄くなって気候は寒冷化しました。この世界で生き延びている生物たちは、寒い気候に適応することができた種です。
 科学者は進化と適応に関するこの「生きた研究所」に熱心に興味を持ち、大規模な科学研究入植地を建設しました。そして著名な考古学者や金儲け目当ての冒険家も、ファーガスに魅せられています。彼らは、ほぼ間違いなくこの惑星に存在するであろう太古種族の遺跡を捜索しています。いまだに気候制御施設の痕跡は発見されていませんが、知識を、富を、力を求める探索者は、ファーガスに次々とやって来ています。

ヴィクトリー Victory 2017 A201766-C M 高技・真空・非農・氷結 G Ca
 恒星イルドラシル(Ildrathir)の名は、この星系に入植目的で最初に訪れたドレシルサー(リーヴァーズ・ディープ宙域 1826)のイルサラ人探検隊が付けたものです。カレドン(1815)の拡大期以前のイルサラ人は、ディープ宙域内にかなり広大な版図を持つイルサラ帝国を築いていました。このイルドラシル星系は、彼らのコアワード方面における最も遠い領土でした。
 星系最外周に浮かぶガス惑星ドルスレー(Druthere)の第3衛星の軍事基地に、当時まだ建国当初のカレドン公王国の偵察艦が捕捉されたのは-86年のことでした。それ以後カレドン領は、イルサラ軍の侵略目標とされました。
 しかしストラスモア伯爵提督(Admiral the Earl of Strathmore)が率いるカレドン艦隊は、ドルスレー軌道上の数に優るイルサラ艦隊に先制攻撃を仕掛け、激戦の末にイルサラ軍を討ち破りました。衛星は占領され、ジェミスン公王は戦勝を記念して衛星を現在の名に改めました。そしてこの戦いを境にイルサラ帝国は衰退に転じ、やがて滅亡に至りました。
 ヴィクトリーは現在、公王国と帝国領を結ぶ通商路上の重要な交易中心地です。カレドン海軍の基地も置かれ、主にジェルメーヌ(2019)からの侵略、もしくは亡命者マクスウェルの帰還に警戒することを任務としています。
 時折、ヴィクトリーもしくはドルスレーの他の衛星のどこかに「イルサラ軍の秘密武器庫」が今も存在するという噂が広まることがあり、探検家や考古学者、はたまた軍事力増強を目論むマクスウェル支持者が幾度となく捜索を行いましたが、その位置や中身が公式に判明したことはありません。しかし繰り返しこの話が出てくるからには、何かしらの根拠があるのかもしれません。

スカイー Skye 2018 E799751-1 低技 G Na
 スカイーはとある創作物語によって良く知られている星系です。それは、内戦に敗れたマクスウェル伯爵が逃避行の果てにこの星に不時着し、わずかな仲間の助けを借りて身を隠し、最終的にジェルメーヌ(2019)から派遣された護衛艦にカレドン海兵隊による臨検をかわして逃げ込む、というものです。この物語は伯爵のスカイー滞在記を基にしたものですが、現在では歴史小説など様々な創作物で親しまれています。
 実際のスカイーは物語ほど幻想的ではありません。地表は主に海で覆われ、陸地はわずか6%です。ここの2大輸出品は海洋産業で生産されるレヴィー肉(leviemeat)とマット草(matweed)ですが、同時にマット草は大気中に漂う危険な花粉の発生源でもあります。マット草の花粉を吸引すると人類の8割がアレルギー反応を示し、非常に苦痛で不快な症状の果てに死亡してしまうことが知られています。フィルタ・マスクと空調の効いた住居は、花粉を避けて生活するためには必須です。

ジェルメーヌ Germaine 2019 A986956-D M 高技・高人・肥沃 G Na
 温暖で濃い大気を持つジェルメーヌは、カレドン植民団の指導者と袂を分かった集団によって、カレドン(1815)とほぼ同時期に入植されました。
 その後、ジェルメーヌの入植地は一足早く恒星間航行技術を失い、暗黒時代の間は《略奪者》がこの世界を時折侵略し、その都度破壊と死を巻き起こしました。とはいえ比較的安定していたジェルメーヌ社会は、特に外世界には目を向けず、自己の世界の改善に努めました。公王国の拡大の際にカレドン商人がここを「再発見」した時でも、ジェルメーヌは外世界との交易に興味を持ちませんでした。
 578年、公式な警告を無視して許可なくここで商売をしようとしたカレドン商人に対して小規模な暴動が発生し、市民2名が殺害される事件が発生しました。その結果、収監された商人を解放し、孤立主義のジェルメーヌとの間に貿易協定を「押し付ける」ことを要求するため、カレドンは海軍を動かして「砲艦外交」を展開しました。結局、ジェルメーヌ政府はカレドンの要求を受け入れるしかありませんでしたが、この事件はカレドンとジェルメーヌの対立の歴史の始まりでした。
 この時からジェルメーヌは近代化と技術革新を進め、カレドンの脅威に対抗できるように宇宙海軍を増強しました。本物の戦争こそありませんでしたが、ジェルメーヌはカレドンとの様々な経済条約の更新を拒否し、王朝危機後には敗れたマクスウェル派の人々の亡命を受け入れました。現在のマクスウェル家の当主である「公王ロジャー1世」はこの星に在住しており、公王国内での緊張を利用して新たな反乱を企てている、と言われています。

ルーシャミ Lhshami 2111 C477794-9 農業 Na
 三連星系であるルーシャミは、知的種族ルーシャナの故郷です。この星を訪れる際には大気中の酸素濃度の高さと汚染物質に注意する必要があります。
 ここの最も有名な輸出品は「触石彫刻(Touchstone Sculpture)」です。超能力を持たないルーシャナですが、一部の芸術家はとある天然結晶を彫刻し、(見た目の美しさはともかく)触れた者に特定の感情を与える作品を作り上げることができます。この芸術品はルーシャミではそれほど価値は高くありませんが、既知宙域のどこでも非常に高額で取引されています。

ガッシュ Gash 2116 DAF8573-7 非工 G Na
 その名の通り、この世界の主要大陸には特徴的な「深い傷(Gash)」が走っています。この渓谷は長さ117km、幅8km、深さ1.2kmにも及び、両側は険しい岩壁ですが、谷底はゆるやかな斜面になっています。
 このガッシュ(谷の地元名)は、数十万年前に太古種族の超兵器によって造られたと考えられています。そして超兵器で破壊せねばならないほどの何らかの施設があったのではないか、とも考えられています。しかしながら、この世界で太古種族の痕跡は発見されていません。
 惑星の海表面上の大気は、人類の生存を支えるにはあまりに薄いものですが、谷底であれば十分存在します(それでも薄いですが)。よって入植地は谷底に沿って建設されました。
 ガッシュの岩壁は、鉱夫にとっては文字通りの宝の山です。銀、金、白金、イリジウムなどの鉱脈が剥き出しの状態で見つかるのです。必然的にガッシュの主力産業は鉱業となりました。4つの鉱業入植地はそれぞれ独立していて、互いに激しく競争しています。彼らは岩壁に新しい鉱脈を見つけ、掘り出すために採掘隊を出していますが、一方で鉱区横領(Claim jumping)もよくあることで、多くの採掘隊は厄介事を前提に行動しています。都市間の不和から来る揉め事は頻繁に起こり、大部分の紛争は論争によって決着しますが、時として戦争にまで至ります。
 ちなみに、第5の入植地であるタッチダウン宇宙港(Touchdown Starport)とその近郊は、誰でも利用できる中立地となっています。

ロック Rock 2214 B400364-A 真空・低人・非工 G Ok コラスが統治
 ガスジャイアントの衛星であるロックは特に目立たない世界で、1000年前ぐらいからコラス統治領の小さな宇宙港が置かれている程度でした。この港は主に統治領とカレドン公王国を結ぶ交易の中継点となっていましたが、帝国領のコンコード(2218)と公王国領のヴィクトリー(2017)に大規模な貿易港が完成すると、その機能は取って代わられました。
 最近、帝国からの移民の増加によってこの港は拡張を促されました。計画では港の近くに新しく海軍基地機能を設け、完成後は帝国のXボート通信網に組み込まれる予定です。
 しかしこの計画は、統治領の残り少ない領土を奪い取るための帝国の陰謀だとも捉えられ、憤慨が広がりました(※その手口がジェリム併合の時と同じだからです)。基地建設に従事していた測量士が既に2回も待ち伏せ襲撃を受け、小規模な破壊行為は幾度となく発生し、計画は予定より1年以上遅れています。これらの犯人は捕まるどころか、捜査もされていません。
 人員の安全確保のために帝国海兵隊を投入しようにも、統治領の自治権侵害となるために駐留ができません。地元知事は代わりに傭兵を雇い入れましたが、効果は上がっていません。帝国当局はこの事態の火消し方法を模索しています。

コンコード Concorde 2218 A999587-E N 高技・非工 G Im
 長い歴史を持つこの星系は、帝国と公王国を結ぶ重要な通商路上に位置し、リーヴァーズ・ディープ宙域における帝国の最辺境世界でもあります。
 当初この世界は、-200年頃に土地を求めていたアスランのイハテイによって定住されました。必ずしも良い土地ではありませんでしたが、より良い世界を支配していた《略奪者》たちから奪い取れるほど、彼らは強くはありませんでした。とはいえアスラン入植地は繁栄し、カレドン公王国が拡大を始めると良好な関係を築きました。
 帝国は200年頃にこの周辺まで進出し、コンコードはアスラン国境戦争における多くの戦場の1つとなりました。奇妙に思えるかもしれませんが、この戦争において公王国は同じ人類の帝国よりも異星人であるアスランに味方しました。カレドン公王国は、既に属国化していたコラス統治領のように自国も「帝国の一辺境」にされることを避けたかったのです。
 結局、独立が保証されたことで公王国は帝国との対立をやめ、コンコードのアスランは皇帝を自分たちの新たな支配者として受け入れました。ウャセアクタイ(Wyaseakhtai)という名前だったこの世界は、人類とアスランの親睦の精神を称えるために名を現在のものに改め、今も両種族が入り混じった社会を構成しています。
 コンコードはカレドン方面交易の主要港であり、さらに遠くのアスラン世界の商品もここの港を通っていきます。近頃、カレドン商人と帝国企業(特にメガコーポレーションのデルガド貿易)との間で競争が過度に激化し、政治的な問題になっています。

ローレン Loren 2311 C57459C-7 S 農業・肥沃・非工 A G Cs
 ローレンは、とても変わった生態系が見られる魅惑的な世界です。自転は絶えず主星プロメテウスの方角に固定されていますが、恒星から届く光が弱いために昼側の気温ですらかろうじて氷点を上回る程度です。よって、一般的な「薄暮の惑星」と違って中間帯の気温は人類の快適な居住範囲を下回っています。
 それにも関わらず、この著しく住み辛い世界は生命を育んでいます。光合成が効果的ではないので化学合成を基盤とするローレンの植物は、火山活動で発生する化学物質や熱を生命活動の源にして、夜側の一部でも繁茂しています。高等動物も存在し、我々が知るものとは違う興味深い複雑な食物連鎖を形成しています。
 帝国からの入植も行われていますが、人類以外はダイベイ宙域出身の非人類知的種族ブルーレ(Bruhre)が占めています。ローレンは帝国の傘下にはありませんが偵察局基地は置かれており、今後50年以内には帝国に加盟すると見込まれています。

コラス Kolath 2313 C7678CB-8 M 肥沃 A G Ok 統治領首都
 コラス統治領は《略奪者国家》の生き残りで、アスラン国境戦争後期(200年~380年)にこの周辺に進出してきた帝国の実質的な属国となりました。それでもコラスは当時の取り決めを盾に、自治を強調しています。コラス社会は厳しく統制されているため、外世界人が現地法に抵触するのはよくあることです。
 コラス政府(Council of Warlords)はかつては《略奪者》による軍事政権でしたが、今では選挙によって15名の終身議員を選ぶ形になっています。軍隊的な文化が受け継がれたため、軍歴があることが被選挙権の必須条件となっています。
 帝国は統治領に大規模な宇宙艦隊の保有を認めていますが、同時にコラス出身の兵士は特に海軍や海兵隊でその優秀さが広く認められていて、直接に新兵の募集も行っています。
 現在、統治領内では動揺が広がっています。それはおそらく、帝国が統治領に残された領土をも剥ぎ取ろうとしているように見えるからです。抵抗は無意味だとわかっていても反帝国運動は多くあり、この世界を火薬庫に変えつつあります。

クラット Kurat 2315 CAA7667-7 非工・非水 G Ok コラスが統治
 クラットはコラス統治領に残された領土の1つです。メタンやアンモニアによる異種大気の気圧が高い上に、地表平均気温が-141度しかないこの星の自然環境は、気まぐれでとても厳しいです。人類の居住には向いていませんが、入植した《略奪者》はこの惑星を修復が必要な船の隠れ家としていました。過酷な環境が、逆に敵の捜索の眼を鈍らせると考えたのです。
 コラスの《略奪王》が国家建設に向かった際にはクラットは早い段階で取り込まれ、そのコラスが帝国に実質的に加盟した際でも統治領の一部のままとなりました。後に統治領から切り離されて帝国に併合されたメル(2414)やジェリム(2416)と異なり、クラットは特に帝国に有用な何かを持っていなかったので、そのまま残されました。
 この世界の最初の用途は、今では過去のものとなりました。現在の住民は鉱業や軽工業などに従事しています。コラスが直接管理している政府は、住民に対して厳しく統治しています。かつて、冷酷な指導者が民衆暴動の危機に際してドーム居住区の生命維持装置を停止させ、1000人以上を殺害して暴動を阻止したという事例があります。現政権はそこまで厳しくはなく、規制も大幅に緩和はされました。
 しかし不満は残っています。地元の「愛郷者」は政府の比較的穏健さにつけこんで抵抗活動を続けていますが、彼らの「解放計画」の成功には、生命維持装置を人質に取る戦術への対処法がまず欠かせません。そして帝国がこの抵抗運動を影から支援しているとも噂されています。よって、この星系は統治領から分断されて吸収されるのかもしれません。

ルラッミシュ Lurammish 2320 C512755-9 S 非農・氷結 Im
 ルラッミシュはM型準巨星から70億kmの軌道を周回している惑星です。薄い大気と低い気温により住みにくい世界ではありますが、ここには大きな入植地があります。
 元々ルラッミシュは辺境の小さな鉱業入植地でしかありませんでしたが、この4世紀の間に大きく成長しました。その理由は豊かなランサナム鉱脈の発見です。希少元素のランサナムは宇宙船のジャンプドライブ製造には必須で、ルラッミシュのランサナム鉱石は入植地を裕福にしました。
 居住に向かない環境の克服のために入植地には大きなアーコロジー(完全環境都市)が林立し、その巨大な建物1つに50万人以上が生活しています(※星系人口は3000万人なので、アーコロジーは60基程度あることになります)。それぞれのアーコロジーでは技術者と管理者を頂点とする封建制の自治が行われ、星系政府は個々のアーコロジーから送られた代議員による議会で運営されています。ただし、その決定が複数のアーコロジーに影響を与える時のみこの大評議会(grand council)は開かれます。
 最近までルラッミシュの全ての鉱業は地元住民によって担われていました。しかしこの10年ほど、LSP社はランサナム鉱山の独立操業に圧力を掛ける動きを見せ、惑星経済を脅かしています。抗議活動と嫌がらせの応酬に対応するため、帝国偵察局基地は大隊規模の海兵隊治安維持部隊を受け入れられるように最近拡張されました。これによって、少なくとも一時的には緊張が緩和されたようです。

ドゥーム Doom 2412 X400200-4 真空・低技・低人・非工 R G Na
 おどろおどろしい名前で知られるこの星系は、記録上最初に訪れたカレドン商人の謎めいた発言から付けられたと言われています。その商人は10名の乗組員と共にこの星に到着しましたが、彼の船がコラス(2313)に(全くの幸運で)ジャンプして逃げてきた時には、たった1人でぼろぼろの状態でした。負傷した他の乗組員はジャンプの前に全員死亡し、彼は自己の体験の記録を残しました。しかしこの記録は、狂気に冒された男による首尾一貫しない妄言に過ぎず、謎を解くにはほとんど価値がないように見えました。
 とはいえ、このドナルド・モリソン船長が名付けた「オロドルイン(Orodruin)」という巨大な死火山には何かがあったようです。しかしそれが何なのかは不確かで、記録によると彼は何らかの人工施設を説明しているようでした。そして、モリソンによる取り留めのない記録と、後の探検による情報を科学者が繋ぎ合わせた結果、オロドルインは放棄された軍事基地、それもおそらくサイエによるものだと推測されました。モリソンの発言は、長らく停止していた地熱発電機を部下の1人が偶然に再起動させ、基地の自動防衛機構を働かせてしまったことを指していたのです。
 そしてこれは現在も動き続けています。モリソンによる訪問以後、678年から数えて10回ほど大規模な探検が実施されましたが、誰もオロドルインまで到達できませんでした。地下施設に入ろうとした者は全て殺され、基地入口から一定範囲内に侵入した車両は破壊されました。さらに2度ほど船が粒子砲で撃墜されました。
 その結果、帝国はここをレッドゾーンに指定した上で、恒久的な研究小基地を設置して謎の解明を進めています。わずかな進展として、ある研究者の論文によれば、防衛機構を解除する「水晶の鍵」があるのではないか、とのことです。実際にその「水晶の鍵」の砕かれたものはグレンシエル(1812)で発見されましたが、現在のところそれを復元する試みは失敗しています。
(※オロドルインは『指輪物語』に出てくる地名で、別名「滅びの山(Mount Doom)」と呼ばれています)

メル Mer 2414 C79A520-8 海洋・非工 G Im
 海洋世界であるメルの表面には非常に小さな島々が見受けられますが、それらは広大な海洋に浮かぶ小さな岩塊に過ぎません。よってメルの入植地は変わった形を採りました。
 この星の初期の訪問者は、後にヤリザメ(lanceshark)と名付けられた雑食性の小さな回遊水棲生物の群れを発見しました。ヤリザメの群れの存在は、それらを追って旅する漁業集落を形成させました。
 こうしてメルの「筏集落」(raft community)が出来上がりました。一般的にこの集落は、数百人が乗り込める大型船の上にあります。1つの集落船は特定の群れを追い、底引き網でヤリザメを捕獲します。集落船は公海を渡る完全な街であり、漁師の生活を様々に支援します。
 集落船同士はゆるやかな惑星政府も形成します。それぞれの集落船の「士官」が参政権を持ち、無線による直接投票で惑星全体に関する議案について決定します。
 一番大きな島には宇宙港が、他の島には集落船が破損した際の修理施設が置かれています。破損の理由には嵐によるものの他に、ヤリザメの群れを人類と奪い合っている大型で危険なオオグイクジラ(gulperwhales)との遭遇によるものもあります。
 これら自然の脅威に加えて、人類が時折引き起こす問題もあります。メルの漁業文化は排他的で抗争的な傾向があり、個人間だけでなく集落間でも復讐行為が行われます。集落船に対する海賊行為や報復事件はよく報告され、長年に渡る集落間の憎悪を促しもしています。

ジェリム Gerim 2416 A888A97-E S 高技・高人・肥沃 G Im
 ジェリムは星域における帝国統治の中枢に位置する地球型惑星です。カレドン星域の帝国領は隣接するナイトメア星域から管理こそされてはいますが、ここは行政や通商の中心地として重要です。
 この世界はかつてコラス(2313)によって統治されていましたが、658年にXボート網の敷設と海軍基地(※現偵察局基地)が建設されたことによって、帝国に併合されました。代わりに統治領政府は多額の補償金を受け取ることで譲歩し、コラス系の地元住民は大規模な移民計画の中に埋没していきました。
 世界には現在、星域で最も多い190億人が居住しています。コラス系住民は少数派ながらも存在し、自分たちの誇り高き軍事的文化が移民たちによって踏みつけにされたと憤っています。一部の人々は秘密結社への参加や政治的抗議などを通して、失われたコラス文化を蘇らせようとしています。そして彼らには「慈善家」からの資金提供が寄せられています。
 しかしえてしてその「コラス文化の復活」は本当に文化保全をするのではなく、突撃隊を組織して民衆扇動を行い、「イルサラ帝国以上の軍国主義的独裁社会を目指している」と、帝国のとある社会学者が呆れて指摘しています。残念なことに地元政府は危機的状態にあるのを認めたがらず、その間にもツヴァー・セン(Thuvar Sen)率いる「コラス遺産連盟(Kolan Heritage League)」は、見た目の規模以上に政治的権力を付けています。

ブリン Bryn 2417 B4268B8-8 G Im
 一般的な「工業」世界の分類には入りませんが、ブリンはこの帝国辺境における工業の中心地であることは間違いありません。惑星規模は小さいものの、飛躍的な経済成長によって多数の移民が惹き寄せられていて、将来第三期探査が行われた時にはおそらく人口は10億の桁に乗り、「工業」の分類が得られていることでしょう(※既に人口は9億2000万人に達しています)。
 ブリン政府は現在、リチャード・クラギン(Richard Kulagin)一人に導かれています。彼の父はエネリ・クラギン(Eneri Kulagin)といい、惑星産業を支配していたメガコーポレーション(ナアシルカ、GSbAG、インステラアームズ)の横暴を止める改革に人生を捧げ、企業政府を倒して民衆に支持され、新設の終身護民官の地位に就いた偉大な人物です。エネリ翁の死後もクラギンの名はブリンで魔力を保っていたので、政治的手腕は未知数だったとはいえ、彼の息子であるリチャードが圧倒的な支持を得て終身護民官を継承しました。
 しかし残念ながら、リチャードは父には全く及びませんでした。彼はすぐに「脳無し野郎(Deadbrain Dick)」であることを露呈しましたが、終身護民官の並外れた権力は死亡か辞任以外には奪うことはできません。今のリチャードは、かつて父が追い出したメガコーポレーションの全面支援を受け、操り人形としての優秀さを人々に見せています。メガコーポ連合体や一部の経済界は当面はリチャードの陰で糸を引き、「人形」を引きずり下ろそうとする動きを妨げています。

イクナ Ikuna 2419 E000410-A 小惑・非工 G Im
 イクナの小惑星帯は、メガコーポレーションのLSPが全て保有しています。LSP社は200年前に、帝国政府からこの星系に関する全ての権利を買い上げました。
 鉱業活動に加えて、小惑星帯には岩石外殻宇宙船用のかなり大きな製造工場などが置かれています。これらのLSP施設は遥かに巨大で、実質的にAクラス宇宙港の規模となっています。
 しかしLSPは、小惑星帯の施設を部外者に開放することを拒んでいます。訪問者は、小惑星帯軌道から1000au以上外側に離れたガスジャイアントの衛星にある旧式施設(※これがUWPが示すEクラス港でしょう)で間に合わせなくてはなりません。許可なく小惑星帯に接近しようとすると、LSPに雇われた手強い傭兵たちを乗せた哨戒巡洋艦(patrol cruisers)によって叩き出されます。
 この極端な保安体制は、「イクナの秘密」として様々な憶測を生み出しました。有名なものを挙げれば、国税当局や外世界の鉱夫からLSPが隠している豊かな鉱脈がある、最新技術による宇宙船の秘密試験場がある、未知の技術で満たされた太古種族の遺跡がある、などです。
 そして、LSPによって隔離された小惑星帯には警察権力も及びません。進入禁止区域に入った宇宙船を警告なしに撃墜した事件がいくつか発生しており、LSPは手段を選ばずこの星系の秘密を守ろうとしているようです。

(※ライブラリ・データはこのページに統合してあります)


【参考文献】
・Ascent to Anekthor (Gamelords)
・TAS-Net Library Data
・Traveller Wiki

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2 Comments

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興味深い星域でした (突撃工兵)
2015-09-20 23:42:46
リーヴァーズディープ宙域も、面白いですね。非常に興味深かったです。個人的にはレフト宙域の大裂溝の孤立星系にも興味がありますけど
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それはまたマニアックな (町田真琴)
2015-09-25 00:14:35
いつもどうもです。設定が構築されたのが本当に初期なので、「古き良き冒険」をやるにはスピンワード・マーチ以上なんですよね、ここ。
で、大裂溝ですかー。一応アイランド星団は今後の予定に入れてはいたんですが、需要あるかなーと迷って幾歳月。孤立星系の方も近年では設定が整備されてきて、ドロインが住んでたりチャーパーが住んでたり、何でこんな辺鄙な星に帝国が植民団送り込んでるの?という別の意味で謎が深まったりと。
今後、アスラン方面に寄り道するか、帝国のトレイリング方面に回るかでずっと迷ってはおりますが、気長にお付き合いくださいませ。
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