宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(12) ヴィラニ・メイン5 グシェメグ宙域

2012-09-07 | Traveller
 遠大なヴィラニ・メインを行く旅も5回目。ヴランドからメインに沿って銀河辺境方向へと流れていくと、やがて辿り着くGushemege宙域について今回は解説したいと思います。
 Gushemegeというとトラベラーファン歴5期以上の方にはすぐ思い出されるかと思いますが、かつてホビージャパンの『RPGマガジン』誌において「日本独自展開」が行われていた地域です。シナリオ「ガシェメグの嵐」やリプレイ「サイオニック・バスターズ」、また簡単ではありましたが星域紹介も行われていました。ただしこの星域データは、サプリメント「Atlas of Imperium」をベースに独自に作られたものなので、現在の設定とは高人口世界以外の名前と、宙域首都アスディキの位置が違いますし、UWPは全くの別物です。
 もちろんこれらは「自由に使っていい」というお墨付きをもらった上での展開ですが、この約束が影響を与えたのかは定かではありませんが、反乱の時代にはルカン、デュリナー、ヴィラニ、ストレフォンの4勢力が激突するという最激戦区にも関わらず、採り上げられることはほとんどなく、メガトラベラー末期のキャンペーンシナリオ(の概要だけが書かれた)「Arrival Vengeance」において、ようやくプレイヤーたちがアスディキの地を踏み、また後に帝国暦0年の時代(T4)のシナリオ「Long Way Home」の舞台になった程度でした。結局、出版物でこの宙域の全体像が明らかになるには、『Traveller 1248』の「Sourcebook 2: Bearers of the Flame」を待たねばなりませんでした(先にT4の「First Survey」「Milieu 0 Campaign」ってのもありましたが…)。
(追記:GDWが発行していたChallenge誌の69号に、1117年のヴィパチ星域を舞台にしたシナリオ「Good, Bad, and Vilani」が掲載されていますが、発行日は「Arrival Vengeance」よりも後です)

 しかし、HIWG(History of the Imperium Working Group)によって80年代末~90年代にせっせと作られ続けた設定の数々はかなりのもので、コア宙域やヴランド宙域を遥かに上回る量が残されています(そして一部はネット上から失われてしまっています)。
 今回はまずこの宙域全体の概要を解説し、回を改めて一部の地域を紹介していこうかと思います。なお、日本独自展開が行われた「ガシェメグ宙域」と区別する意味で、その前にGushemegeの読み方は"gu-SHEM-eg-uh"らしいので、勝手ながらあえて訳語を「グシェメグ宙域」とさせていただきます。


ヴランド領域図

■グシェメグ宙域の歴史
 ヴィラニ人がグシェメグ(古代高ヴィラニ語で「星々の通路」を意味する言葉)に足を踏み入れたのは-9100年~-9000年頃のことです。その頃の宙域内では、人類の一種族であるククン人(Kukhunen)やロースカルス人(Loeskalth)が、他にも非人類の知的種族が独自の、しかしヴィラニ人に比べれば原始的な文化を築き上げていました。
 好戦的なロースカルス人は、-6000年頃にヴィラニ人と接触し、-5700年頃に彼らからジャンプドライブを入手すると、ジャンプ-1のルートに沿って勢力範囲を広げ、一部は隣接するモイビン星域(レフト宙域)やアルルメル星域(イレリシュ宙域)にも進出しました。絶頂期の「ロースカルス帝国」はヴィパチ星域の大部分を併合し、技術水準は帝国中心部ではTL9、外縁部でもTL8に達しました。
 やがてロースカルス人の存在は、ヴィラニの支配にとって悩みの種となりました。そして統合戦争が始まり、100年間に及ぶ戦いの末にロースカルスの文化は完全に破壊され、独自言語の使用は禁止され、その血筋はヴィラニ人の中に溶け込み、1000年後には彼らの存在は完全に伝説となりました(※ロースカルス帝国の滅亡は-4300年頃とされています)。
 ククン人はもう少しうまくやりました。ヴィラニ人がグシェメグを訪れた時とほぼ同じくして彼らと接触したククン人は、その当時TL4の文明を築いていました。統合戦争の初期(-5400年頃)にヴィラニ帝国の支配下に入った彼らは、創造的な文化を持っていましたが、その文化に対する抑圧と、内に秘めた暴力性が彼ら自身を苛立たせていました。しかしヴィラニ人に匹敵する彼らの想像力や事務能力は、それから約3000年間、グシェメグ宙域におけるヴィラニ人の支配に大きく貢献しました。

 -2223年にソロマニ人の艦隊(地球連合海軍)がグシェメグのラガン星域に到来し、-2204年に第一帝国が完全に滅亡すると(※-2204年はヒロシ・エスティガリビアが「人類の支配」の建国を宣言した年です)、第二帝国はソロマニ人の知事をこの地に任命しました。宙域内の活動はグシェメグ・メイン(ヴィラニ・メインのグシェメグ宙域内における名称)からオウルパス(Oulpath, グシェメグ・メインとは別の主要通商路)まで広がり、ダシニシュアイイ星域、シャイアー星域、トルァクス星域はその力と名声を増していきました。
 しかし-1800年頃に人類の支配が及ばなくなると、宙域内のそれぞれの文化は自己主張を始めましたが、それぞれが帝国を築くよりも先に技術基盤が崩壊していきました。
 -1000年頃、アスランのいくつかのイハテイがこの地に到着しました。最初はミスジャンプによるものでしたが、後には計画的な入植が行われ、ウアワイリーウ(Uawairlew)氏族とフワオワオウ(Faowaou)氏族が宙域各地のアスラン入植地を治めました(※ただしこの入植地を現在のUWPの政治コードで見分けることはできません。おそらく2000年を経て「帝国人化」してしまったのでしょう)。
 暗黒時代の間、宙域で最高の技術はTL9でしたが、-200年代末にはTL10にまで回復しました。

 長い夜を経て、ククンの文化は変わっていきました。ヴィラニ人とソロマニ人がグシェメグで戦いを繰り広げていた時代、ククンは戦争で荒らされた惑星となりました。恒星間交易が途絶えると、対立する勢力同士が惑星内で戦争を起こし、己を破壊していきました。
 再び安定がもたらされたのは、ランシア運動(Lancian movement)によって、世界が氷河期に突入していたことを自覚させられた時でした。その後(氷河期が進行するのと同じだけの)数世紀をかけて、ランシア運動は想像力を戦争ではなく芸術と美を尊ぶ方向に向ける新しい哲学として、ククン人の間に浸透していきました。氷の伸張を食い止める計画が成功した頃には、ランシア哲学はククン人に大いに定着し、そしてランシア文化が生まれました。

 -150年頃、ランシア文化(や他の勢力)は、再び宇宙の間に広がり始めていました。-143年にはシレア(Sylea)人の商人とククン人が再接触を果たし、-75年頃には同じくシレア人の探検家が危険を冒して宙域の中へと進んできたことが記録されています。
 再び宇宙に戻ってきたククン人は、かつての入植地を取り戻したり新たな植民地を増やしていき、-24年までにはそれは「ランシア連盟」という恒星間国家となっていました。しかし同時期に銀河系に勃興していたシレア連邦、そして第三帝国との間には摩擦が生じ(ランシア人にとっては、かつての「帝国」のように独自文化を押さえつける存在に見えました)、やがてそれは冷戦に、そして反帝国テロ活動による抵抗運動へとエスカレートしていきました。
 76年から始まったヴィラニ宥和作戦(Vilani Pacification Campaign, 76年~120年)の前に、もう既にランシアと帝国は交戦状態となっていましたが、同様に抵抗していた隣人のスムリイ(S'mrii)共々、おびただしい流血を伴った宥和作戦の結果、最終的には帝国に併合されました。さらにヴランド大公は続いて、焦土と化した多くのランシア世界へ、マキドカルンによるヴランド宙域からの強制的入植を行いました。
 その宥和作戦の際、ランシア連盟陸軍は部隊をLLRA(Lancian League Resistance Army)という反帝国ゲリラ集団に改組し、帝国に抵抗戦を挑みました。しかし113年にLLRAの一部部隊が、リシャン星系(グシェメグ宙域 2907)の小学校の児童教師計235人を殺害する、という事件を起こしています(理由については、帝国の仕業に見せかけようとした説と、帝国に寝返ろうとしていた別のLLRA部隊の根拠地と誤認した説があります)。その後LLRAは123年まで抵抗活動を続け、その後、敗残兵たちはグシェメグ宙域中に、そしてその向こうへと散って行きました…。

 そのランシアは、後に732年に皇帝マーガレット1世によってようやく「文化圏(Cultural Region)」の地位を与えられ、圏内のソロマニ文化は徐々に弱まっていきました。ちなみにランシア文化圏は、ククンのあるタンサ星域を含む5星域に広がっています。
 一方で、ラエス星域やトルァクス星域といったリムワード方面の地域は、イレリシュ文化に影響されていきました。彼らはイレリシュの反乱(418年~435年)に加わることに躊躇がありませんでしたが、皇帝マーティン3世が420年に速やかにこの地域を封鎖し、やがて帝国に引き戻されました。
 500年代から600年代にかけてグシェメグ宙域は、特にランシア圏やルアー星域は、超能力関連事業の中心地でした。超能力産業は(グシェメグ宙域が特に関わらなかった)内戦(604年~622年)の間に発展していきました。しかし、760年に起きたカムリンムル(グシェメグ宙域 2224)の反乱は結果的に超能力への干渉を増やし、続く800年代の超能力弾圧によって超能力者は地下に潜みました。多くの研究者は、ランシア文化圏で進んでいたナノテクノロジーやバイオエレクトロニクスの分野に転向しました。
 皇帝パウロ1世は、761年にカムリンムルから、帝国艦隊の兵站が置かれていたアスディキ(同 1015)に宙域首都を移しました(しかしカムリンムルとアスディキの位置を入れ違えて表示してしまう宙域図が、現在でもソロマニ人の間で流通しています)。

 内戦以後、グシェメグ宙域公爵の座にはグウウイルバタアシューリバア家(Guuilbataashullibaa)が就いています。同家は元々ナアシルカの重役の一族でしたが、内戦においてアルベラトラ皇帝を支持し、功績を挙げたことから、宙域公爵に取り立てられたのです(また当時のグシェメグ宙域公爵家が反アルベラトラ派だったことも影響しています)。
 現在の宙域公爵であるタンサ公アシュル(Duke Ashur Sirush Guuilbataashullibaa of Tansa)のある意味で最大の功績は、彼の娘であるイオランスと現皇帝ストレフォンとの結婚でしょう。これにより、グウウイルバタアシューリバア家とアルカリコイ家の間に永続的な友誼が結ばれました。
(※ちなみに、前皇帝パウロ3世の后であるエルベット(Elbet Osmanlia Aella)も、グシェメグの名門イーラ家の出身であり、リジャイナのアレドン家に嫁いだフィオレーラ(Fiorella Havasu Aella)とは遠い親戚の関係です。つまりストレフォン皇帝とリジャイナ公ノリスは、母親を通じて遠い血縁関係にあるわけです)
(※なお、この宙域公爵家の設定は、『GURPS Traveller: Nobles』に記載のある設定と、HIWG版の宙域公爵家の来歴を融合させたものです)



(※Xボート網は帝国暦1248年のものです)

■グシェメグの地理
 この数千年の商取引と旅行、征服と植民地化、開発と進歩によって、この宙域は一般的に7つの特徴ある地域に分けられるようになりました。

ランシア圏 Lancia
 範囲:タアプヴァイア星域、タンサ星域、イシ・アート星域
 現在、ランシア圏は強力で慈悲的な勢力です。この地域の計り知れない想像性は、むしろ芸術に傾倒しすぎていることを懸念されるほどです。マキドカルンと共に、ランシアはエンターテイメントとクリエイティブ技術の分野で、帝国の銀河核方向世界を「支配」しています。ランシアはビジネスと商業計画と政治的発展の担い手であり、時として他の種族が思いもよらない手立てを見せます。彼らの疑う余地のない能力は、いくぶん独善的な(田舎根性的な)性格と結びついて、時として宙域内で「完璧ではない」隣人たちと摩擦を引き起こすことがあります。彼らの秘密計画やグランドデザインはハイヴ人ですら恥ずかしく思う、という噂は、当たらずとも遠からずです。

群島地域 Archipelago
 範囲:リフテン星域、キイラ星域、ガンドネン星域 
 大裂溝に面する群島世界の開発は、ジャンプ-3の普及を待たねばなりませんでした。現在でもいくつかの星系が帝国領外のままとなっています。
 社会的であれ、政治的であれ、文化的であれ、群島世界は帝国から逃れたい願望を持つ人々によって植民されていきました。よって、他の平均的なグシェメグ世界よりも政治・経済的な孤立を好む傾向があります。

ルアーヴァヤン地方 Rurevayn
 範囲:ルアー星域、アンクススガル星域、サーロウン星域、ダシンシャイイ星域
 はっきりとした境界こそありませんが、ルアーヴァヤン(大ルアー)地方は、当初グシェメグ・メインに沿った交易で利益を得ていました。しかし、ハイテクな商業世界と、低人口世界や「伝統的な」産業世界の間に、長期に渡って憎しみにも似た断絶があるのもまた事実です。一方でランシア圏とは、ルアーヴァヤン地方がその技術の多くを受け継いだこともあって、良好的な関係を築いています。
 この数世紀の間、ランシアによって開発される「綺麗な」オーグメント(サイバー化)技術は、貪欲な傭兵や麻薬取引人、より貪欲なビジネスマンの「汚い」手に漏れ出しました。この地域は、反体制的ないわゆる「サイバーパンク文化」の中心地でもあります。

後進地域 Backwaters
 範囲:バレチ星域、サーロウン星域
 ここの世界には、ほとんど独自性や資源がありません。大部分の富は、グシェメグ・メインを通じてレフト宙域やヴァージ宙域からもたらされたものです。

ロース地方 Loes
 範囲:ヴィパチ星域
 近隣のレフト、ヴァージ、イレリシュ宙域の経済力は、ヴィパチ星域を後進地域から押し上げました。
 ヴィパチ星域は、ジル・シルカ時代には(第一帝国の記録の中にだけ残る)ロースカルス文化の本場でした。現在、ロースカルス人やロースカルス帝国の伝説は、星域の至る所にあります。秘密結社ロースは、ロースカルスの復興と独立を夢見て数世紀間活動しています。しかし彼らの「ロースカルス」のイメージは、その多くが近代の脚本家によって創り出されたものであることも否めません。
 なお、この地域にはドライカン星系(レフト宙域 3134)を母星とする平和的で勤勉な人類であるタパースマル人の世界がコルトンルー(グシェメグ宙域 0136)に、知的飛行種族アエル・ヤエル(Ael Yael)の故郷がジェイェルヤ星系(同 0437)に、草食知的種族パダンシュ・ミトローイ(Padansch-Mitloi)の故郷がフェネージ星系(同 0338)にあります。
(※アエル・ヤエルやパダンシュ・ミトローイがロースカルス帝国の支配下に入ったかどうかは不明です。位置関係的には十分有り得そうなはずですが、支配下に入ったという設定がないことと「絶頂期の領土は星域の半分ほど」という『帝国百科』の記述からすると、ロースカルス帝国は星域のコアワード方面を領土としていたのかもしれません)

イレリシュの縁 Ilelish Rim
 範囲:ヴィパチ星域、ラエス星域、トルァクス星域
 この地域へのイレリシュの影響は暗黒時代の間に浸透し、418年に始まったイレリシュの反乱の際にはより緊密な関係となりました。それ以来、この地域はグシェメグ宙域の不安定要因となっています。
 彼らは自分たち独自の道を歩みたがる傾向がありますが、宙域公爵家はこれまでこれには寛容的でした。ただし「文化圏」の地位を求めるあらゆる行動に対しては、断固として抵抗しました。

中心地域 Heartland
 範囲:ダシンシャイイ星域、シャイアー星域、ラエス星域、トルァクス星域、ラガン星域
 「人類の支配」の間、これらの星域は宙域に対する支配力を決して失いませんでした。ギヌパ・ラディクス(Ginupa Radix, radixとは「根」の意味)やウシュウリ・ウェイ(Ushuuri Way)上の高人口世界、ラエス・トルァクス・シャイアー農業連合、工業の中心であるシデュル・イシュキ(1234)、グシルディイミ(2036)、ウンラルディガルド(1930)の各星系などが、地域の力に関与しています。ランシア圏だけが、実力や勢力圏の大きさで彼らと匹敵する規模です。
 宙域内でアスランが居住しているこの地域は、人種面では素晴らしい共同体です。しかし労働者からの搾取は、宙域内でも最悪です。


■グシェメグ宙域の経済
 グシェメグ宙域には2本の大動脈が存在します。1つはヴランド宙域方面からヴァージ宙域方面へと宙域を縦断するグシェメグ・メイン(ヴィラニ・メインの一部)。もう一つは、グシェメグ・メインとは別に富裕世界や高人口世界といった重要世界を繋いでいくオウルパス(Oulpath)と呼ばれるルートです。オウルパスはタンサ星域を出発し、イシ・アート~シャイアー~ダシニシュアイイ~トルァクス~ラエス~ヴィパチの各星域を通り抜けています(※ちなみに『GURPS Traveller: Far Trader』のルールによる、計算で導き出された主要通商路も、この設定と同じ傾向を示しています)。
 オウルパスは古来からの主要地域で、特にイレリシュ宙域に近いギヌパ・ラディクスや、ウシュウリ・ウェイとして宇宙旅行者に知られている地域は、グシェメグ宙域の人口や生産力の多くを持っています。このオウルパスから宙域内各地へ、そしてダグダシャアグ、ザルシャガル、イレリシュ宙域方面へジャンプ-2ルートで接続されています。
 これらの立地条件により、グシェメグ宙域は第一帝国の時代から富を蓄積していました。第一帝国期にはグシェメグ・メインによる交易が栄え、第二帝国になると産業の中心はオウルパスに移動し、ダグダシャアグ方面との交易が活性化しました。そして第三帝国の時代になって、この両方の「通路」に沿って活発な経済活動が行われています。
 グシェメグ宙域では、以下のメガコーポレーションが主に精力的に活動しています。特にヴィラニ系のメガコーポレーションは、宙域史に大きな影響を与えました。

スターンメタル・ホライズン Sternmetal Horizons LIC
 宙域本部:ファルン(3029)
 鉱業と製造業のメガコーポレーションであるスターンメタル・ホライズンは、グシェメグ中心地域(Heartland)の工業地帯に関心を持っています。
 またハールジ・オィ社(後述)と、合成食品市場で大きな共同プロジェクトを実施しています。この事業によってランシア独特の食文化を深く知ることは、より広大で多様な帝国各地での市場浸透力を高める理想的な機会、とスターンメタルは考えています。

テュケラ運輸 Tukera Lines LIC
 宙域本部:アスディキ(1015)
 テュケラ運輸は、主にグシェメグ・メインに沿って通商ルートを確保しており、イレリシュやダグダシャアグ方面との輸送事業では相当なシェアを持っています。
 なお主要通商路から外れた世界に対しては、宙域企業だったグシュライン(Gushline)社を買収し、支線を担わせています。

ナアシルカ Naasirka
 宙域本部:アスディキ(1015)
 ナアシルカは、ジル・シルカ成立以前からグシェメグ宙域における探査と植民についての任務を負っていました。第三帝国の初期には、エレクトロニクスとコンピュータ技術の地場産業との親和性の高さから、グシェメグ宙域の先進地域に進出することができました。
 ナアシルカは最先端技術に多額の投資を行い、グシェメグの多くの情報企業と繋がりを持っています。

マキドカルン Makhidkarun
 宙域本部:ククン(3105)
 ナアシルカとは対照的に、マキドカルンはヴィラニ宥和作戦の後にグシェメグ宙域に進出してきました。第三帝国に対して抵抗した世界の多くを占拠するためにです。結果、当時のグシェメグの銀河核方向世界はマキドカルンに反感を持っていました。
 数世紀を経てランシア文化が成長していくと、やがて両者に共生関係が生まれてきました。ランシアは優れた創造力が生み出すメディアとエンターテイメントを提供し、マキドカルンは技術と流通網を提供しました。そしてランシアの芸術とエンターテイメントは、マキドカルンを通じて帝国中に広まっていきました。

 また、宙域規模の大企業の間には『フォーチューン12』と呼ばれる称号があります。この『フォーチューン12』は、独立金融経済情報企業のフィンネット(FinNet)社が、グシェメグ宙域を代表する大企業12社を認定するものです。
 現在の『フォーチューン12』は以下の通りです(※本当は1116年時点の資料なのですが、平和な時代の10年でそう大きく変動はないと判断して、そのまま1105年設定に転用します)。

アルカト・シデリ Alkat-Shideri LIC
 本社:グシルディイミ(2036) 総取引額:35TCr.(テラクレジット)
 アルカト・シデリは、グシェメグ宙域における主要な武器製造元です。同社はルイ・アルカト(Ruy Alkat)によって534年に設立され、内戦時代には13型プラズマガンを製造していました。以来、同社は光線および粒子加速兵器(個人用・車両搭載用双方の)の分野で発展を続けました。さらに879年のシデリ工業(Shideri Industrial)との合併は、宇宙船武器市場へ進出するための施設と専門知識を与えました。
 アルカト・シデリはグシルディイミ、ヴォヒッサラ(3223)、ディカアシュ(0738)に主要な工場を持ち、事業所をグシェメグ宙域のリムワード側の、大部分のAクラス宇宙港に構えています。また実験施設はグシルディイミの衛星にあります。
 株式保有比率:貴族 10%、LSP 11%、アルカト家 40%、シデリ家 22%、自社保有 17%

エコ Eko
 本社:カムリンムル(2224) 総取引額:28TCr.
 エコはグシェメグの三大情報企業の一つです。彼らの仕事は、一次情報を得て、願わくば最も高い入札者にそれを売却することです。しかしその仕事のやり方や内容から、同社は世間では「半分は通信社、半分は情報部、全体ではボッタクリ屋」「エコはグシェメグの全ての戸棚の中身まで知っている」と散々な言われようです。
 エコグループ内部では、エコシーク社(Ekoseek)とエコファクツ社(Ekofacts)が稼ぎ頭です。エコシークは野外と研究所とを問わず、金になるどんなものでも研究しています。また、あらゆる環境に対応した探査チームやロボットを提供することができます。一方でエコファクツは、宙域内の主要なニュースと情報の代理店です。
 株式保有比率:自社保有 100%
 レフリー情報:エコの隠された「特別部門」では、宙域中あらゆる場所に広げられた秘密の情報ネットワークを用い、価値があるかもわからないどんな情報でも集めています。また、エコの総取引額の数値はあくまで口座上のもので、実際は49TCr.と推測されます。


エスガキイ Esgakii LIC
 本社:トリル(2029) 総取引額:73TCr.
 グシェメグ宙域の全ての証券会社や銀行の中で、最も高い評判を得ているのがエスガキイです。同社は暗黒時代後に頭角を現し、先物取引への投資や、多くの貨物船の保険を引き受けていました。その鋭い管理と慎重な計画から、エスガキイはグシェメグのトップ企業に踊り出ました。
 エスガキイは自らの手が潔白であることに細心の注意を払っています。あなたがもし堅実で法的に正しいビジネスの提案を持っているのなら、エスガキイは的確な助言と多額の融資、そして時には内密の情報を与えてくれるでしょう。
 株式保有比率:エスガキイ家 33%、グウウイルバタアシューリバア家 27%、貴族 39%、自社保有 1%

オケアン Okean LIC
 本社:ダウル(1826) 総取引額:19TCr.
 オケアンは、海洋開発分野における技術研究や建設や農業を専門としています。オケアン製の潜水艇や海中住居、個人装備は、コストパフォーマンスが良好であることが広く知られています。オケアンはグシェメグ宙域の全ての海洋世界と、海のあるハイテク世界の多くに営業所を構えています。
 会社を支えているのは、積極的な研究です。特に水中活動の助けとなる遺伝子操作生命の開発に熱心です。しかし、遺伝子操作の倫理憲章違反の告発を受け、オケアンは環境保護運動の抗議の的となっています。
 株式保有比率:スターンメタル・ホライズン 16%、貴族 10%、アンタレス・ホールディングス 19%、投資信託会社 20%、自社保有 35%

グリルゼ Glirse LIC
 本社:ファルン(3029) 総取引額:51TCr.
 グリルゼはグシェメグの主要な鉱業会社で、ジャンプドライブ製造の鍵となるズチャイやランサナムの鉱脈を多く所有している、そんな幸運な地位にあります。内戦の直前にファルンの小惑星帯でズチャイ・クリスタル(Zuchai Crystal)の豊かな鉱脈を発見した際、同社は大いに儲かりました。幸運にも内戦はグシェメグ宙域を避けたため、同社がその資産を荒らされることなく存分に利用することができました。
 グリルゼは現在、鉱山以外にも興味を持ち、ガスジャイアントの核から希少な資源を採取する研究に投資を行っています。
 株式保有比率:貴族 18%、エスガキイ 19%、オルタレ・エ・シェ 9%、スターンメタル・ホライズン 23%、投資信託会社 17%、自社保有 14%

シェー・オィ Cez Oy
 本社:リイガシュ(2815) 総取引額:39TCr.
 シェーはランシアだけでなく、ガシェメグ全体からダグダシャアグの一部分にまで営業範囲を持ちます。同社は娯楽に飢えた消費者のために、ホロ映像やシムスティムの番組、コマーシャル映像などを制作しています。
 スタジオや制作施設はランシア圏の大部分の世界と、他のいくつかの世界にあります。さらに子会社のスティムシェー社(StimCez)には多額の研究投資が行われており、ここはシムスティムや仮想現実エンターテイメント研究の最前線となっています。
 株式保有比率:貴族 19%、エスガキイ 15%、マキドカルン 13%、投資信託会社 14%、自社保有 39%

シシュマダルシャグ Shishmadarshag LIC
 本社:ロスクウアタヴ(1308) 総取引額:27TCr.
 略してシュマシュ(ShMaSh)とも呼ばれるシシュマダルシャグは、グシェメグ宙域における薬品や医薬品の主要なメーカーです。家庭用の痛み止めから抗老化薬や戦闘ドラッグまで、シシュマダルシャグが扱う製品の範囲は広いです。
 シシュマダルシャグは大きな研究センターをロスクウアタヴに持ち、傘下の研究所や生産工場は宙域中の至る所にあります。
 一方で、社の収益源が大衆薬ではなく超能力ドラッグではないかと噂されていて、秘密の工場がタンサ星域にあるのではないかと言われています。
 株式保有比率:SuSAG 20%、貴族 18%、投資信託会社 29%、自社保有 33%

ステースク・ロボティクス Staesk Robotics LIC
 本社:ドロウン(2325) 総取引額:43TCr.
 ステースク・ロボティクスは、自動型および(人や管制コンピュータの制御を受ける)従属型ロボットを製造しています。とても伝統的な企業のため、最新のスタイルやサイバー技術の取り込みには熱心ではありませんが、それでも会社の売上高には影響を及ぼしていません。ステースクが重視しているのは、何度もテストをくぐり抜けた、がっちりとした実用的なデザインなのです。
 ステースクは、ダムボット(単一用途のロボット)や家庭用オートボットの製造市場を支配しており、保安用や軍用ロボットの製造者でもあります。またステースクは、シュドゥシャム・ロボット工学会議(Shudusham Robotics Conference)のメンバーでもあります。
 株式保有比率:ナアシルカ 17%、アルカト・シデリ 4%、メイハン・ホールディングス 33%、エスガキイ 16%、自社保有 30%

セヴソフト SevSoft LIC
 本社:アルメク・ザマア(0527) 総取引額:31TCr.
 セヴソフトは、上質の企業向けソフトウェアや公文書ソフトウェア(多くの地方政府のネットワークで見ることができます)で実績を上げ、911年には、帝国偵察局のXボート・ネットワークにAVTAオペレーティングシステムが採用されました。
 AVTAは962年に実際にXボート・ネットワークのアップグレードで運用が開始されましたが、1039年にサイバーハッカーがシャカマシュ(グシェメグ宙域 2716)のXボートシステムに侵入し、海軍兵站基地(Depot)(同 3016)の帝国最高機密文書を暴露したことにより、セヴソフトは大きな打撃を受けました。
 もちろんセヴソフトは、このような事件を再び起こさせるつもりはありません。
 株式保有比率:貴族 7%、自社保有 93%

タラ・データメトリクス Tala Datametrics LIC
 本社:イマパール(1616) 総取引額:20TCr.
 一般的にはTDMとして知られているタラ・データメトリクスは、大量のデータを集め、分析し、それを企業に販売しています。膨大な市場調査の結果を、例えば物事の好き嫌いから宙域内の星系ごとのスピード違反者の対人口比率まで、マーケティング企業に提供することができます。
 またTDMは帝国有数の遠隔測定技術を持ち、惑星の環境監視システムや、リアルタイムの気象データの販売も手がけています。
 株式保有比率:貴族 22%、ナアシルカ 29%、ヴァシリー・ホールディングス 15%、トローク社 13%、投資信託会社 14%、自社保有 7%

ハールジ・オィ Hallji Oy
 本社:グダク(3211) 総取引額:24TCr.
 ハールジはランシア文化圏の食品産業の主要な供給者です。ハールジは文化圏内に会社所有の世界を維持しています。例えばタンサ星域のラオー星系(3004)には、大規模な農場と食品加工工場があります。
 同社はランシア圏だけでなく、宙域の半分を覆う流通網を持ち、シャイアー星域のビーンガブ(3026)にそれを管轄する子会社を設立しています。
 ハールジにはランシアの宇宙船のために、遺伝子操作植物と水耕法システムに関する革新的な研究計画があります。
 株式保有比率:貴族 34%、マキドカルン 26%、エスガキイ 8%、投資信託会社 11%、自社保有 21%

フロラヴィー FloRaVee LIC
 本社:フェアブライアー(1423) 総取引額:15TCr.
 フロセタ・ラブラタ・ヴィーエナ(Floceta-Rablata-Veeyena)LICの略称であるフロラヴィーは、公文書保管の専門家です。同社はレファレンス(コア宙域 0140)から来た3人の情報エンジニアによって、962年に設立されました。
 現在、フロラヴィーにはグシェメグ宙域やその向こうの多くの企業や政府が記録を預けています。フェアブライアーが会社の登記上の本社ではありますが、実際にはサーロウン星域とその近隣の星域に、いくつかの秘密の保存所を構えていることが知られています。
 フロラヴィーの営業所はグシェメグ宙域内全ての星域首都で見つけることができます。そして同社は、優良取引先の地域同士を繋ぐ独自のXボート・ネットワークを運用しています。
 株式保有比率:フロセタ家 20%、ラブラタ家 20%、ヴィーエナ家 20%、ナアシルカ 17%、TDM 8%、貴族 4%、投資信託会社 7%、自社保有 4%

(※ちなみに「オィ」というのは、ランシアのケフー語(Kehuu)での会社の古風な言い方で、SuSAGの「AG」のようなもののようです)

 『フォーチューン12』に運輸企業が入っていないのは、多くの企業が商圏を星域規模としているためです。グシェメグ宙域内の主な運輸企業としては、以下のものがあります。

 コムステルライン(商圏:バレチ、サーロウン星域)
 フリーグ輸送(商圏:オウルパスのシャカマシュ~ファルン間)
 グシュライン(テュケラの半子会社。辺境方面行きに特化)
 ハアマン・アナニ・ビラアン(略称HAB。商圏:ヴランド領域)
 キイラ&ルアー宙輸(商圏:キイラ、ルアー星域)
 SIFTA(商圏:グシェメグ・ダグダシャアグ境界付近)
 ステラトレック・トラベライン(略称STTL。宙域内最大手の運輸会社)
 ヴァペシ・エンス・ケヴ(ヴァペシの企業。商圏:イナピイルン星団)
 ヴィパチ・トレーダーズ(商圏:ヴィパチ星域)


【付録:ライブラリ・データ】
ヴァペシ Vapethi
 ヴァペシはイナピイルン星系(グシェメグ宙域 0723)の群小種族です。彼らはその場の気温や環境、集団内での地位、個人的な感情に応じて、様々な形をとります。基本的な形状は、丸みを帯びた円柱状の体に4本の触手が付いています。「皮膚」はその時の機嫌を示す重要な指標で、暗い色になればなるほど激しい感情を意味します。

アエル・ヤエル Ael Yael
 ジェイェルヤ星系(グシェメグ宙域 0437)出身の知的種族であるアエル・ヤエルは、6本足の動物から樹木の間を飛行できるよう進化しました。彼らの母星の低重力と濃い大気は、飛行に適していたのです。
 大人になると身長1.5メートル、体重50キログラム、前肢から進化した翼は幅4メートル程度になります。また、中肢の一組が物体を操作する際に使われます。アエル・ヤエルは人類よりはわずかに視力が良く、特に赤外線を見通すことができるため、夜間でも視力を保てます。
 -6500年頃にアエル・ヤエルと接触したヴィラニ人は、資源の見当たらないジェイェルヤにも、当時TL0だった彼ら自身にも利用価値はないと判断して、星系を隔離しました。やがてソロマニ人の時代が来て封鎖は解かれましたが、細々とした交流は暗黒時代に途絶えました。
 しかし第三帝国時代初期にジェイェルヤに大規模な鉱脈が見つかり、366年に当地に進出したマカティール鉱業(McAteer Mining)が彼らを奴隷として酷使したため、415年には彼らの蜂起に至り、結果アエル・ヤエル人口の95%が虐殺されるという惨事となりました。結局437年にようやく海兵隊が介入し、マカティール鉱業の追放と虐殺の共謀者として星域公爵を起訴することで事件は終結しました。その後は星系を偵察局が帝国保護世界として管理していますが、現在でも彼らは企業というものを嫌っています。

シムスティム Simstim
 人工的に形成された仮想空間を現実と同じように感じて動き回れる、言わば「能動的な」仮想現実(ヴァーチャル・リアリティ)と異なり、シムスティムは第三者の視覚や行動や感情を「受動的に」体験するものです。言い換えれば、観客が映画の主人公と一体化して、主人公が見たもの感じたものそのままを観客が受け止められるものの、映画の中の世界を観客が自由に行動できるわけではなく、あくまで脚本の通りに進んでいくのがシムスティムです。
(※元々はウィリアム・ギブスンの小説『ニューロマンサー』に登場した用語で、「擬験」と和訳されています)

スムリイ S'mrii
 スムリイはミムー星系(ダグダシャアグ宙域 0208)で6本足の爬虫類から進化した知的種族です。スムリイはヴィラニ人が宇宙開発を始める15000年も前(-25300年頃)には既に宇宙に飛び出しており、順調に行けばもう少しで「主要種族」になれるところでした。
 核戦争による絶滅の危機が彼らに1万年の遠回りを強いましたが、それでも復興を遂げたスムリイは、-13610年頃には再び宇宙に帰ってきています。やがて開発されたスムリイのラムジェット宇宙船は1パーセクを約15年で進むことができ、-11000年頃には彼らはミムーを中心とした6パーセク以内の世界に広まっていました。
 しかし-9090年に、カーラナク星系(同 0302)に前哨基地を築いていたヴィラニ人と接触したことにより、スムリイは主要種族となる機会を永遠に失いました。なお、その頃までにはスムリイは、グシェメグ宙域のミゾースクアムー(3009)、ウーッスースファ(3110)、チャザール(3208)、スクトラッスーイイア(3212)に世代間宇宙船(Generation ship)で入植を果たしています。
 なお、彼らは神経技術(Neurotechnology)の専門家です。

タパースマル人 Tapazmal
 タパースマル人はドライカン星系(レフト宙域 3134)に太古種族によって移された人類で、灼熱の世界であるドライカンの環境に適応するために、空気が薄くて気温が低い、高い峰の斜面に住んでいました。他の人類と異なり、タパースマルは太古種族によって少子となる遺伝子操作を受けていましたが、これは山岳において乏しい資源を節約するために逆に役立ちました。
 やがて星々を越えて来たロースカルス人が-4700年頃に、続いてヴィラニ人が-4300年頃に彼らと接触し、タパースマルはヴィラニ文化を受け入れる代わりに、ヴィラニ人の技術と保護を得ることができました。
 第一帝国の崩壊により、彼らは祖先の文化的記録を発掘し、研究し、復興することができました。またソロマニ人の協力によって、タパースマルはいくつかの植民地を手に入れました(現在ではドライカンに加えてレフト宙域の5星系、グシェメグ宙域の1星系がタパースマル世界となっています)。
 タパースマルは、伝統的なスタイルやモチーフと現代技術を組み合わせた、偉大な芸術や建築技術で知られています。また彼らは、保守的で、社会における個人の役割が厳密に定義されていますが、平和的で勤勉な種族です。

パダンシュ・ミトローイ Padansch-Mitloi
 パダンシュ・ミトローイ(銀河公用語で一番近い発音)はフェネージ星系(グシェメグ宙域 0338)に生息している、身長3メートル(肩までは2.5メートル)で8本足の、巨大な草食知的種族です。
 パダンシュ・ミトローイの遺伝子には、何者かが遺伝子操作を行った痕跡が残されています。誰がこれを行ったかはわかっていませんが、フェネージ星系に太古種族の直系子孫であるドロインが居住しているのは興味深い点です。

ロースカルス人の母星 Loeskalth's Home World
 結局のところ、ロースカルス人の故郷がどこであったかについては、正確な資料は残されていません。それだけヴィラニ人は彼らの文化の痕跡を徹底的に破壊し尽くしたのです。しかし数少ない資料から推測すると、彼らの母星がヴィパチ星域のヴィラニ・メイン上のどこかにあったのは間違いないでしょう。
 しかし最近になって、興味深い発見がなされています。アアプ星系(グシェメグ宙域 0132)において、5000年以上星系内の軌道を周回していた約500億トンの小惑星船が、偶然に発見されたのです。船は全長約10km×幅8km×高さ8kmの大きさで、さらに、帝国外のソーレンテ星系(ファー・フロンティア宙域 3030)から1パーセク離れた空域でかつて発見されたものと、ほぼ同一のものだったのです。
 調査の結果、どうやらロースカルスの滅亡を前にして、彼らは大裂溝を越えて未知の宙域の新しい「家」を見つけるために、これらの移民船を掘削したものと思われます。船はジャンプ-1ドライブとラムジェット亜光速ドライブを搭載し、1隻に1万~1万5千人が居住するための工房、水耕農場、小艇の発着所、対隕石防御レーザー(これは発見時にも生きていました)、そしてロースカルス文化の全てを収めたはずのライブラリーを備え付けていました。残念ながらデータは大部分が失われていましたが、復元できた記録により、移民船は少なくとも6隻建造され、少しずつ進行角度を変えて出発したようです。
 この2つの移民船の進んだ推定ルートから逆算すると、出発点はアバエロウ星系(グシェメグ宙域 0233)であることがわかりました。またこの結果を受けてのアバエロウでの最新の考古学的な調査により、約6000~6600年前頃の人類の遺跡がいくつか発見されています。
 しかしこのアバエロウ星系がロースカルス人の母星であったかどうかについては、まだ最終的な結論は出ていません。一部の研究者からは、サガル星系(同 0339)とする説も唱えられています。


【参考文献】
・HIWG Document #3404,#3408,#3410,#3412,#3413,#3417,#3420,#3423,#3426,#3427
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Alien Races 4 (Steve Jackson Games)
・MegaTraveller: Imperial Encyclopedia (Game Designers' Workshop)
・Challenge #69 (Game Designers' Workshop)
・The Zhodani Base

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