宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(14) シュドゥシャム

2012-09-27 | Traveller
 今回から数回に渡って、いよいよ帝国の中核(コア)であるコア宙域について解説していきます。しかしここは星域単位で設定がそれほど多く起こされているわけではないですし、どちらかというと「冒険の舞台」という雰囲気の宙域でもないので、今までとは趣を変えて、有名な観光名所をたどって行く感じでいきたいと思います。

 まず今回はコア星域のシュドゥシャムです。その名前はトラベラーファンならすぐピンと来る、あの「シュドゥシャム協定」で有名ですね。

シュドゥシャム協定 Shudusham Concords
 -112年、親善使節としてフォーノル星系(コア宙域 1715)の軌道を訪れていたシレアの戦艦「エンパイアズ・バナー(Empire's Banner)」に、テログループが伝令ロボットによる自爆攻撃を仕掛け、乗組員と共にフォーノルの首相とシレアの高官数名が犠牲になりました。事件の余波で危うくシレア連邦が内戦に突入しかけるほど、その影響はとても大きいものでした。
 この事件を受けて、-110年に中立星系のシュドゥシャムにシレア連邦全12星系の首脳が集まり、ロボットの武器使用に関する合意書である「シュドゥシャム協定」に署名しました。この複製は、現在キャピタルのシレア歴史博物館に展示されています。
 シュドゥシャム協定はまず全7条で発効し、ロボットの行動に対する所有者の責任や、安全に対する基準、兵器としてのロボットの運用規定などについて記されています。後に技術の進歩などによって、計43の条項が追加されました。中でも追加第37条は有名で、擬生物型ロボットが正体を隠して生物として振る舞うことを禁ずる条項です。
 シュドゥシャム協定は帝国暦0年に効力を失い、現在では法的拘束力はありませんが、それでも現在、多くのハイテク世界においてロボット製造の基本的ルールとして尊重されていますし、ロボットの悪用を取り締まる法律は、建国以前のシュドゥシャム協定をモデルとしている世界が今でも多いのです。

 しかしシュドゥシャム自体がどのような星なのかは、グランドツアーの第8話で訪れるまでは明らかになっていませんでした。日本ではグランドツアーは第7話(連載上は6話)で打ち切られてしまったので、長年もやもやしていた方もいるのではないでしょうか。
 しかし実際にまとめてみると、『ロボットの殿堂』の割には意外と田舎です(笑)。


シュドゥシャム Shudusham 2214 E849855-A G Im
 シュドゥシャムの表面の94%は海で、ほんの小さな陸地だけが海面から上に覗いています。8億人の住民は約3千基の海中複合施設に住んでいて、それぞれが独立して空気、水、エネルギーなどを確保し、多くの複合施設同士では食料や製品を取引しています。
 その原材料は海底から大量に集めることができます。鉱石の他にも海は、食料や医薬品や繊維に加工できる、様々な種類の植物や動物を供給してくれるのです。
 第一帝国期には、シュドゥシャムには約2億人のヴィラニ人入植者がいました。初期の入植者は海面上に住んでいましたが、鉱夫たちは海中の資源により近いことと、海上に住むよりは住みやすかったことから、やがて海中に複合施設を建設しました。テックレベルは10まで上昇し、恒星間取引は日常のことでした。
 やがて暗黒時代になると、シュドゥシャムは他の世界との接触を失い、いくつかの複合施設は他の施設との接触をも失いました。それから1000年が過ぎてシレア連邦(Sylean Federation)が設立された頃には、海中都市同士で意思の疎通が出来ないほどに言語が変わってしまっていました(※帝国暦0年当時の記録では、TLは6に、人口は数十万人にまで減少していたようです)が、シュドゥシャムの豊富な鉱物は、シレア軍や連邦の産業を大きく支えました。
 -110年に帝国史に残る「シュドゥシャム協定」の調印の舞台となったこの星は、それから500年以上経った404年には、帝国中のロボット技術者たちが最新技術を公表し共有するシュドゥシャム・ロボット会議(Shudusham Robotics Conference)の開催地となりました。シュドゥシャムはその歴史的な経緯と、帝国の中心であることから、会議の場所に選ばれたのです。会議は成功に終わり、それから10年に1度会議が行われるようになりました。最近の会議は1103年に行われ、次回は1113年から予定されています(※その年の第1日から会議が始まるわけではないようで、グランドツアーでクレンシュタイン博士が会議に参加したのは1104年に入ってからです)。
 ロボット会議には、技術者、企業、ヘビーユーザー、ジャーナリストなど、ロボットに携わる様々な人々が、1年間の会議に出席するために帝国内外に関係なく宇宙各地からやって来ます。皮肉にもこの世界の技術レベルはロボットを支えられるほど高くはありませんが(※TL10では初歩的なロボットしか作れません)、この矛盾は会議の科学的な価値には影響していませんし、会議は毎回盛況となっています。
 会議の年の間は、シュドゥシャムの取るに足らない宇宙港の管制機能は、訪問客の多くの船をさばくために一時的にアップグレードされます。逆に会議のない9年間は、恒星間取引を行うのに十分な宇宙港機能すら提供されません。しかし近隣のガスジャイアントでは、いつでも精製燃料が得られます(アーコロジーとの衝突事故を防ぐため、海上での燃料補給は重罪とされています)。
 シュドゥシャム政府は「自給自足はテクノクラシーの下のみで可能となる」と主張する封建的技術官僚政です。この主張を体現するために、地元政府は恒星間取引に250%の関税をかけています。また政府は、過去に観光を促進するためにいくつかの施策を行いましたが、これはあまりうまくいきませんでした。

 エネリ・カルリガシュ(Eneri Karrigashu)はナアシルカにデザイナーとして勤め、オリジナルのラシュシュ型ロボットの設計を担当しました。彼の名を記念して付けられたカルリガシュ海中居住区(Karrigashu Undersea Habitat)が、10年に1度のロボット会議の会場となっています。
 複合施設はおよそ30万人の居住を支えることができ、会議のある1年間は延べ40万人がここを訪れ、その内25万人は会期中常にここにいます。
 カルリガシュがロボット会議のために利用されるため、ここには多くのロボットに関連する施設が造られました。中でもロボット博物館は出席者に人気で、ロボット工学の図書館と研究所の機能を併せ持っています。
 なお建物内の一部区画は、ハイヴ、ヴァルグル、アスラン、ククリーなどの非人類の訪問客のために特別に確保されています。
 ラシュシュの第1号ロボットは、「人類の支配」の間の-2008年に制作されました。ラシュシュはTL12の産物の割に賢く、いわゆるダムボットとは一線を画していました。ラシュシュ召使ロボットは、その低価格(現在の貨幣価値で約30万クレジット)とナアシルカによる積極的な拡販により、急速に家庭に普及していきました。なお、このラシュシュの動くレプリカが、シュドゥシャムの「ロボットの殿堂」に展示されています。



【ライブラリ・データ:コア星域】 Core Subsector
 コア星域は元はシレア星域と呼ばれていて、かつてのシレア連邦の中心地でした。皇帝クレオン1世がシレア連邦を新たな《第三帝国》とする宣言を行うと、シレア星系の名は「キャピタル」と改められ、同時に星域名もコアとなりました。それ以来、ここは帝国の中心地であり続けています。


 コア星域には41の世界があり、総人口は729億2700万人です。最も人口が多いのはキャピタルの326億人で、最もテクノロジーレベルが高いのはキャピタルと他4星系の15です。全星系が帝国の傘下にあり、星域艦隊として第1艦隊が、また首都防衛艦隊として別に第309、310、311、312艦隊が配置されています。


レクターセン Lectorsen 1813 D354655-5 低技・農業・非工 A Im 帝国保護世界
 レクターセンの二酸化炭素の「蓋」は、この星を珍種や外来種のための温室としました。植物学者としても知られる皇帝マーティン2世が、199年にレクターセンを帝国自然公園世界(Imperial Garden World)に指定したため、この惑星はほとんどテクノロジーが持ち込まれませんでした。

オノン Onon 2017 E576000-9 低人・肥沃・非工 G Im
 帝国の地質学者と天体物理学者は、現在激しい隆起期にあるこの惑星を詳細に調査しています。ここは大胆な学者たちに非常に好まれている研究材料です。
 第一帝国の頃は(地質学的には)比較的静かな時期だったため、ヴィラニ人たちは用心もせずに入植してきました。その300年後に惑星の地殻は大きく動き、世界中で火山活動が引き起こされました。植民地は一掃され、残ったのはTL9の遺跡だけでした。

コーゼン Codsen 2317 E571568-2 低技・非工 Im 軍政
 かつてはギクウ(Gikuu)と呼ばれていたコーゼン星系は、現在では帝国軍が所有・管理をしており(定住者も皆、軍の関係者です)、荒野の環境でテクノロジーに頼らずに生き延びる方法を教えるための理想的な世界として、帝国海兵隊がここで訓練を実施しています。

ウムガディン Umgadin 2320 B6B5946-B 高人・非水 G Im
 ここにある夏の宮殿(Summer Palace)には、帝国保護世界のマラスタン(スピンワード・マーチ宙域 2331)で栽培されている美しい自然植物を直接見に行くことができない皇室一族のために、マラスタンの風景を再現した体験型ホログラフ(action holographs)が装飾も兼ねて設置されています。

(※今回のコア宙域のUWPデータはDGP版に準拠させましたが、シュドゥシャムに関してはDGP版の人口コードAでは『Atlas of Imperium』の記述(高人口世界ではない)と矛盾します。第二期探査のあった1065年当時に高人口世界でなかった世界が、1105年に急に高人口世界になっている(それも人口120億人に)というのも考えにくい話ですので、今回は他の資料に書かれている人口コード8を採用し、海中施設の数をそれに比例して減らして帳尻を合わせました)


【参考文献】
・Travellers' Digest #8 (Digest Group Publications)
・101 Robots (Digest Group Publications)
・Book 8: Robots (Game Designers' Workshop)
・The Spinward Marches Campaign (Game Designers' Workshop)
・Rebellion Sourcebook (Game Designers' Workshop)
・Traveller Wiki

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