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セイピースプロジェクトのブログ

【イベント報告】沖縄のいま、本土のこれから ~普天間問題と平和教育を考える~

2011年04月08日 | 活動報告
2011年2月19日(土)にセイピースプロジェクトは沖縄の普天間問題と、沖縄に関する平和教育の在り方を考えるシンポジウムを渋谷フォーラムエイトで開催しました。現在の沖縄の問題を踏まえたうえで、本土に住むわれわれがこれから何をしていくべきなのか。セイピースプロジェクトはその問いに対する答えの一つとして、平和教育を掲げ活動に取り組んできました。そのシンポジウムの内容の一部をここで報告します。


 第一部では、普天間基地の移設先となっている辺野古で基地建設反対運動に取り組まれている安次富浩さん(ヘリ基地反対協議会共同代表)をお招きして、普天間問題をめぐる最新情勢についてお話していただきました。

 安次富さんはまず最初に東村高江でヘリパッド建設工事が沖縄防衛局によって強行に進められていることを述べ、その後は沖縄戦を中心とした沖縄の歴史、文化についてお話しました。沖縄戦は軍隊の本質をまざまざと見せつけ、戦後も米軍による植民地支配が続きました。それらの経験が現在の沖縄の平和に対する意識の源流になっています。その後、沖縄の運動が環境面からも広がりを見せており、大浦湾のジュゴンを象徴にして「環境問題と反基地運動が合体したのは辺野古の運動の中で初めてであり、大きな意味を持つ」と述べました。ジュゴンは3年~7年に1頭しか生まず、数が非常に増えづらい生き物です。沖縄県八重山ではジュゴンを呼び戻そうという運動があり、ジュゴンの個体数調査と、過去の分布復元作業が行われています。また、普天間移設問題にかかわる環境アセスメントの点も触れていました。大浦湾の干潟やからは、36種類の沖縄固有種が発見されています。しかし、防衛省等が行った環境調査ではその点に触れておらず、「環境アワセメント」(事業に環境を合わせている)と名付けて批判されていました。

 その後、政府の対応や名護市の状況についても話してもらい、最後にこれからの運動について「憲法で保障されている平和的生存権を沖縄で作り上げていくことと、不条理な国策に対しては体を張った抵抗権で戦っていく」と力強い意気込みを語ってくれました。

 安次富さんの話から、平和教育で沖縄を取り扱うにあたって、基地問題だけでなく環境や生物多様性といった別の観点からも授業を行うこともできるという重要な示唆を私たちに与えてくれました。

 第二部では、沖縄と本土でそれぞれ平和教育に取り組まれている教員の方々をお招きして、それぞれの平和教育実践について報告していただきました。まず、セイピースプロジェクトがこれまで高校や大学で行ってきた出張授業の報告をしたのちに、下地史彦さん(城東小学校教諭、沖縄県教職員組合)と菅間正道さん(自由の森学園教諭)からそれぞれお話を聞きました。

 下地さんはまず、沖縄の平和教育の現状に関して、「参加者の皆さんが思っているよりもレベルが低いと思う」と述べた上で、県外から修学旅行等で来る学生に対して、県内の学生との差はそれほどないということを話してくれました。平和教育の実践の大体は、戦争に関するビデオを見せて感想文を書かせるというものであり、学生によっては「ビデオを見なくても毎年見ているから感想文は書ける」という出来事もあったというものでした。その上で、平和教育(子どもたちに伝えること)の難しさは、①「大人」の常識(前提としての知識)が通じない(言葉や地名、米軍基地の名前など)、②「時間や空間」の観念が大人と違う(ガマでの体験、沖縄戦の証言など)、③平和教育が道徳・環境・福祉等をテーマとしたものが主流になっており、「戦争」や「組織としての軍隊」の問題が「古くさい」平和教育となってきている、と主に三点あるということを、具体的な例も含めて話してくれました。(参考;沖縄の平和・文化を伝える教育 http://www.jichiro.gr.jp/jichiken/report/rep_okinawa31/jichiken31/4/4_2_y_03/4_2_y_03.htm)


 次に菅間さんは、沖縄に限らず幅広い平和教育という観点からお話をしていただきました。菅間さんはまず、現在の生徒たちを取り巻いている過酷な環境、KY・友だち地獄・友だち幻想といった人間関係や、苛烈な受験競争とそれに規定される正解(暗記)主義など、平和教育をめぐる困難さを指摘した上で、自身が行った平和教育の実践のいくつかを紹介してくれました。具体的には「イラク対話プロジェクト」(http://www.jca.apc.org/taiwa/activities_irq.html)「あなたはどう考える?ナチスのユダヤ人迫害」(http://homepage2.nifty.com/kingendaijuken/sakusaku/1_2.htm)「2007年度 自由の森学園中学校3年生 沖縄修学旅行 基地問題コース」(http://music.geocities.jp/jimori_kitimon/)「授業記録・沖縄戦「集団自決」を考える--チビチリガマで何が起こったのか (特集 子どもは考える) 」などです。また、「普天間基地撤去を求める高校生の会」の生徒にも来ていただき、会を設立した時の経緯や、自分たちの思いを話してもらいました。

 最後に、パネルディスカッション形式で沖縄に関する平和教育実践のあり方について議論を深めていきました。

 沖縄の基地問題を教育で扱う際の留意点について、下地さんは騒音問題を例にして、実際に見たり聞いたりすることはできなくとも、広げる場、実践する場を持っていくことの大切さを話してくれました。

 菅間さんは沖縄戦を授業で教えることに関連して、「なるほど世界は様々な不条理や抑圧、差別で満ちているけれども、人類はそれらを克服してきた歴史もある。大人はそのことを知っているけれども子どもたちは決してそうではない。絶望だけでなく、そういった希望、人々の中にはそういった不条理に戦っている人たちもおり、戦争に対しては反戦、貧困に対しては反貧困といった、世界は決して一色ではないこと、綱渡りの関係になっていることを教えることが大切だ」と話してくれました。


下地さんと菅間さんのお話は具体的であり、現在の平和教育の状況や問題点を詳しく話していただきました。それだけでなく、彼らの実践は今後セイピースがNPOとして平和教育にどのように取り組んでいけばいいのか、を考えるにあたって貴重な実践例でもあります。NPOと学校教育現場の連携を行うための第一歩として、今回のシンポジウムは非常に有意義なものであったと思います。

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