Say Anything!

セイピースプロジェクトのブログ

「内部被ばく」に関するブックリスト

2012年01月10日 | 書評

『内部被曝の脅威―原爆から劣化ウラン弾まで』肥田舜太郎/鎌仲ひとみ(ちくま新書、2005年)
 福島原発事故は、歴史上例を見ないほどの事故となった。放出された放射性物質の量は、ヒロシマ・ナガサキをはるかに上回る。
 放射線被曝には、「外部被曝」「内部被曝」の二種類があり、本書では、特に後者を取り上げている。内部被曝とはどういったメカニズムなのか、その影響はどのようにして現れるのか―著者である肥田舜太郎氏の広島での被爆体験から、具体例も示しつつ、分かりやすく書かれている。終章では、共著者である鎌仲ひとみさんと肥田氏との対談も収録されている。本書は、あまり知られていない内部被曝を理解するために、必読の入門書と言える。




『新装版 食卓にあがった放射能』高木仁三郎/渡辺美紀子(七つ森書簡、2011年)

 本書は、「市民科学者」として脱原発を訴え続けた、故高木仁三郎氏の著書『食卓にあがった死の灰』(講談社現代新書、1990年、渡辺美紀子共著)の内容が、今回の原発事故を受け、新装版として出版されたものだ。チェルノブイリ原発事故後に問題となった食品汚染問題が、詳細なデータを用いて解説されており、被ばくの約8割を占めるという食品を介した内部被ばくについての入門書として最適。現在も食品汚染が大きな問題となっているが、「基準値」を問う声は多くない。日本の基準値の高さ、基準値以下の食品の危険性は、本書を読んで、ぜひ押さえておきたい。




『チェルノブイリ報告』広河隆一(岩波新書、1991年)

 本書はチェルノブイリ事故とそれに伴う汚染状況や健康被害を描いたルポである。そこに描き出されている現実は現在の、そして5年後の福島、日本であるような気がした。発表されない汚染地図。知らされない居住地の汚染。高い程度の汚染地域であったにも関わらずそこに住み続け、5年後になって強制避難となった人々。そのなかで、事故後に子どもを中心として急増するガン・白血病や病気をもった人の数。
 福島は、そして日本は確実に同じ道、より悲惨な道を歩んでしまっている。5年後、この現実に直面することになるのかと思うと私たちの責任はあまりに重い。




『見えない恐怖 放射線内部被ばく』松井英介(旬報社、2011年)

 「内部被ばく」という言葉は福島原発事故後に社会に知られるようになってきたが、過去に具体的にどのような被害がもたらされたのかはまだ完全に解明されていない。筆者はチェルノブイリ原発事故や原爆・劣化ウラン兵器による被害の実態を踏まえつつ、福島原発事故による内部被ばくの危険性と晩発障害に警鐘を鳴らしている。また放射線の影響については、現在一般的な国際基準となっている国際放射線防護委員会(ICRP)の内部被ばくに関する問題点を指摘し、これを批判したヨーロッパ放射線リスク委員会(ECRR)の評価基準や提言を紹介しており、汚染基準値を考える上で大きく参考になる。

最新の画像もっと見る