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充電日記     

オフな話で一息を。

『江戸時代初期出版年表』、寿閑本

2011年12月22日 | 
・慶長15年の節用集に2種ありますが、このうち寿閑本では、一つの刊記しか挙げてありません。それが正規というか、初刷りのものなのでよいかと思います。
 
  慶長上章閹茂仲春上瀚 洛下桑門寿閑[開板]

です。

・ただ、この本には、上田万年・橋本進吉(1916)『古本節用集の研究』も、『旧刻書目』を引用するように、「桑門寿閑[開板]」の削られたものがあります。現存が確認されるのは下図のものだけでしょうけれど(下巻(初めの方欠))。



・山田忠雄(1961)『開版節用集分類目録』はじめ、国語学者の成果も採り入れていれば、少しだけかもしれませんが、この年表もちがった形になったんじゃないかなと思います。

『江戸時代初期出版年表』

2011年12月20日 | 
本の本ですね。当時、一体全体、どれくらい書籍が刊行されたかは知っておきたい基本情報です。あらいざらい、できるかぎりの調査で全貌を知っておきたい…… いわば、待望の書です。

・が、ちょっと違うかな、という点も。まぁ、こちらが勝手に心待ちにしていて、実は方針が違うんですよと言われて、勝手にがっかかりしているわけなので、世話はない。むしろ、これだけのものを自分は出すことができないんだから、せめて補遺を、とのつもりで、2つ3つ。

・天正19(1591)年から明暦4(1658)年までの刊行書を扱うんですが、天正18年からだったら、天正18年本『節用集』(堺版)が入るのに、と無いものねだり。

・寛永六年本『節用集』の記載がないのも残念。『二体節用集』横本は載ってますが、それとは別の縦本です。縦本の寛永7年本『節用集』とも別。以前、ちらりと書いたことがあります。もちろん、私が発見したんじゃなく、鳥居フミ子・酒井わか奈編(1996)『東京女子大学所蔵 近世芸文集』(ぺりかん社)の目録で出会ったものです。

・この本は、京都の大手・中野市右衛門の開版書で2巻本です。寛永12年には無理矢理3冊本にされる、ちょっと面白い本なのです。内容もちょっと変

やはりクレベリン?

2011年11月26日 | 
・教えていただいたクレベリン、無水エタノールよりも毒性が低く、かつ効果が高いか。ただ、これは、濡れるほど散布するような使い方なんだろうか。結果だけ示されても、経過が分からないから、応用できない。特に相手が本だけに水が入るものは使えない。ならば無水エタノールだが……

・とりあえず、ターゲットとともに据え置き型を袋に入れて密閉することにしました。除湿剤も一緒に入れた方がいいような気もするけれど、1週間ほど様子をみてみます。

・それにしても罪な古本屋だなぁ。市に出せないような、カビ臭いのをオークションに出したのだろうか。いまだに領収書も送ってこないし……



イ-17、発進せよ!

2011年11月25日 | 
・というわけで、カビ退治である。

・和本の環境メンテナンスとしては「曝書」が重要。で、「和本 曝書」でググると「ドリフ大爆笑」以下、爆笑系サイトばかりヒットする。「爆笑」で検索する人が多いから、「〈曝書〉なんて、「爆笑」の打ち誤りでしょ」と判断する仕様らしい。こういうのをお節介という。

・ストレートに問おう。「曝書の仕方」。ところが、「赤ちゃんを爆笑させる方法」とか「爆笑オンエアバトル」とかが出てくる。う~む、NHKまで邪魔立てするか! いや、悪いのはGoogleか。

・結局「曝書」で検索して、大阪府立中之島図書館の「蔵書点検のはなし」がトップに出てきた。真面目な内容ながら、スキあらば笑いを取りにきます。さすが大阪。しかし、「ノルマと日程のプレッシャーと正確に点検するという司書のホコリの間で、書庫のホコリを浴びながらせっせと点検作業を続けています」という、ベタベタなネタで大笑いしてしまう。……追い詰められてるのか、私。

・都立中央図書館の資料保存のページがカビ対策の具体的な作業にも触れていた。「発見したら一日も早く対処」「作業でカビ胞子を拡散させないように」「作業員の自覚も大事」という話も。衣服につかないよう、ついてもすぐに処置できるように整備しないといけいないか。ビニール手袋、マスク。衣服には……100円ショップでカッパでも調達しようか。終わったら捨ててもいいし。(このあたりから、ガンバスターのマーチが脳内に鳴りはじめます。ディスク2の17曲め)。

・「カビ除去には無水エタノールが効果的」とのこと。微細な霧にするには蓄圧式噴霧器が最適なんだが、予算の関係で購入してはいない。発注してもよいけれど、「1日遅れたらそれだけカビが拡散する」…… 次善の策になるけれど、手持ちのイ-17で早速やってみましょう。緊急発進!

コーヒー脱臭

2011年11月22日 | 
『字集便覧』(承応2=1653)(お、異様に縦長だ)という本があります。ちょっと面白い。中国でできた『字彙』(1615)という画数引き字書があるんですが、その注をごっそり削り、その分、訓読みを多く掲げたのが『字集便覧』です。『字彙』の和刻本(日本で複製したもの。返点・送り仮名などがつく)よりも10年ほど早いのかな。目ざとい人がいるものです。

・組織からいえば『字彙』の仲間ですが、たくさんの訓は『和玉篇』から流用した部分が多いはず。二種類の字書をいいとこどりしたようなものです。題簽(標題)を『和字彙』としたものもあります。『和+玉篇』は「説明は省略して、訓読みをたくさんつけた玉篇」ですから、『和+字彙』との名は、「説明は省略して、訓読みをたくさんつけた字彙」。筋が通ったネーミングです。

岡井慎吾『玉篇の研究』の説明では「漢玉篇」(大広益会玉篇)の組織と同一と見、さらに玉篇のところで紹介してますが、完全に錯覚しています。早く、岡田希雄が指摘しています

・で、入手しました。1000円也。最初の一冊がなく、後摺りで、半分は表紙も改められていますが、他は揃っているよう。刊記もクシャクシャになりながらもついてたので、文句は言えません。いや、にんまり。

・しかし、安いものは怖いもの。黴臭いこと! どうしたものか…… で、ダメモトでコーヒーのだしがらに期待をかけます。キムコがヤシガラ活性炭名なら、こちらはダシガラ活性炭です。うまく消えてくれるといいのですが、神田の古本屋なんか行くと、ほのかな黴臭にコーヒーの香りが混ざっているから、共存共栄なのか。いや、黴臭をコーヒーが抑制しているとみるべきか、はたまた実はタバコ臭のような気もする…… 良案を求めます。

・ところで、こんなに期待していいの

復刻版は買いましょう

2011年11月16日 | 
・大正時代、易林本『節用集』の影印版が刊行された。『日本古典全集』の一冊である。大正15年3月。

・昭和のはじめ、ペーパーバック版が出されたよう*。これが表紙がとれやすく、国会図書館の別の1冊はかわいそうなことになっている。昭和4年4月。

・そして昭和50年代に現代思潮社が復刊。ほかのものは知らないが、『節用集』は大正15年版を元版としている。昭和52年刊、同55年2刷。いま手許にあるのは2刷のみ。

・で、解題が、復刻版では手が入れられている。あとから無理矢理いれたらしく、版面をはみ出したり、行間にねじこんでいるのもある。活字にはかすれ・欠けが認められるので古いものなのだろう。ただ、国会図書館の大正版にも、昭和版にも改訂の痕跡はない。他所に蔵されている大正版に、改訂が施されているのだろうか。ならばちょっと見てみたい。

・あるいは、訂正分の小紙などが添えてあって、それを、現代思潮社版では器用に切り貼りして複製原本にしたのか。版面飛び出しや行間補入が見られるのだから、そう考えてもよさそう。特に、行間にいれた部分(3ページ3~4行目)は、3行目の字の左端が消えており、切り貼りを思わせる。

・さて、改訂は3パターン。一つは巻末書き込みの文字認定にかかわるもの、一つは上巻・下巻の境目に対すること、そして次のような重大な補足2行である。
一 原本には脱落の所が六面あつて、他本に由り原字を敷き写しにして補入されてゐる。即ち此
(「欠ママ)日本古典全集本」の二十一、二十二、六十一、六十二、六十三、六十四の六頁が其れである。
 丁でいえば 11・31・32丁。この部分は気をつけねばいけない。

・それにしても、この大正版、他にもいくつか問題があって罪深いなとおもう。いずれ、他日。


追記)
*自宅のは、大正15年でペーパーバックだった。ううむ。ただ、国会図書館のペーパーバックをよくみると「昭和四年」云々は何やら貼り付けたもののよう。拡大するとわかりますが、これがまた無様は貼りようで。ひょっとして、自宅本は貼り忘れたものかも。嗚呼。

ささやかながら大事

2011年09月04日 | 
・昨日のつづきですが、まずこちらの画像を。PDFファイルなので表示まで時間がかかるかと思いますが、『倭節用集悉改嚢』(文政元年版)にはいっている「改正御武鑑」です。

・ちょっと変だと思いませんか? 何やら空白があちこちにある。より正確にいえば、武士の名の左側が必ず空白になっている。この部分には、本来「槍(鑓)印」と呼ばれる図が入ってました。槍の刃のカバーですが、さまざまな意匠と素材があしらわれており、それが図示されていたはずです。当局から「武家のことにとやかく口出しするな」とでも言われて、版木から削ったのでしょう。

・とすれば、まだ槍印が削除されずに印刷されているバージョンがあると想像できます。同じ文政元年版でも。実は、慶応本には、その槍印があるのです(非見開き。ページ進行も逆順です)。よく見ると槍カバーの図だけでなく、文字もあります。どういう材質を使っていて、どう見えるかなどが書かれているようです。ここまでやると「口出しするな」になるのかな。

・いろいろ調べてみると、慶応本の本領はこれだけではありませんでした。

・槍印がまだ印刷されているものは、他にもいくつか見つけていましたが、慶応本の重要な点は、その中でもさらに早い段階の版木であることです。たとえば、「公家鑑」。右端の慶応本の「日野家」はきちんとしてますが、槍印のある本でも他のものの多くは、「家」字の最終画・右払いがほぼ欠落しています。紙に刷り込むうちに版木から欠けたのでしょう。もちろん、槍印のない本でもちゃんと欠落してます

・また、同じく「公家鑑」のなかに「親王方」という部分がありますが、その「閑院宮」について慶応本には実名などの記事がないんですが、他の槍印本では実名などが記されています。これは後からおぎなったものです。槍印のない本でも当然、補記されています。しかし、実名出してもよかったんでしょうかね。隣の桂宮には記されていないのも不統一のような。なにか特別のはばかりがあったものでしょうか。

・本題にもどせば、慶応本は、『倭節用集悉改嚢』文政元年本のなかでも、もっとも早い段階の刷りということになります。これと同じ程度に早いものは石川県小松市立博物館のものしかまだ確認していません。そうしたことが、居ながらにして調査できる点で、Google booksの営みはありがたいのですが、せっかくスキャンする機会があり、しかも全世界に向けて発信するのだという意図が明確なのであれば、きちんとしたものにしてほしい、と思うわけです。

Google booksの和本のめくり方

2011年09月03日 | 
・Google books、慶応義塾大学とタッグを組んで、著作権切れの書籍をスキャン・アップロード中。大要はこちら

・慶応の決定は英断に属するが、スキャンする方はどうか。いくつか見てみたら、微妙にななめになってたり、その結果、映るべきものが映ってなかったり、挙げ句には切れ切れになっていたり、最後のページ(丁)からはじまっていたり。少々以上に残念なことです。どうやら、スキャン環境に物理的な制約があるようです。作業領域が狭いとか。

・ただ、どうやらスキャンにあたる人間のスキルにも問題がありそう。こちらの3枚めの画像を。色合いの変化もあってギクリとします。中指と薬指にはめられたサック。このように和本をめくっているわけです。

・これは普通の書籍をめくるときの用具のはずです。めくりやすさを確保するとともに、指の皮膚の磨耗を防ぐ意味もあるのでしょうけれど、めくりやすさは摩擦力の増大によるものです。これは和本には少々まずい。紙質にもよるけれど、通常は美濃紙という繊維の長い和紙を使っています。場合によっては長い繊維が、隣り合う紙同士でからんでしまい、めくりづらくなることがある。これを摩擦力で無理に剥がすようにめくれば、少々以上のダメージを与えることになる。

・さて、画像にもどって。人指し指と親指が見当たりませんが、どうやら灰色に塗りつぶされた(?)部分がそれにあたるのでしょう。しかも文字のゆがみからすると、明らかにつまんでいます。逆にいうと、つまんでいることが明らかなので、指の部分を灰色で塗りつぶしたのではないか、と思えます。うううむ。

・まったく公開されないことにくらべれば数等よいことだし、私の専攻分野上、ささやかながらも大事な発見もできました。ありがたきこと限りなしなんですが、早稲田大の古典籍総合データベースが(露出値はともかく)きちんとした約束を守っての撮影であるらしいことと比較すると、どうなのかなぁと思うわけです。

・書籍のことだけでなく、広く一般的なこととしても考えるべき点がある気がします。理念としてはよいのですが、それを実現するまでの具体的な過程や現場での作業に思いをいたしてから「理念」を決定しているかどうか。もちろん、理念の決定が先にあっても何ら悪くないのですが、「現実」の方をフォローしきれる余裕があってのことなのかどうか。今にはじまったことはではないのですが。

樟脳をいれかえる

2011年09月02日 | 
・和本用の防虫剤、以前はパラジクロルベンゼン製剤にしてました。入手しやすいし、安価ですから。でも、あまり健康にはよくないとか聞いたので、最近では、昔ながらの樟脳にしています。

藤澤樟脳中身などはこちらを。箱の中に透明の包装。これを剥いで、ブロック状のものを使います。剥き出しにしてると、本や容器にもよろしくないし、あっというまに気化してしまうので、やわらかい紙などできっちり包みます。私は、はじっこが茶色くなりはじめた(=とても人様の手紙には使えない)便箋を使ってます。

・やっぱり香りがすがすがしい。パラジクロルベンゼンも悪くないし、似通ったような香りがします。が、比べてみると、かすかに油っぽいような、鼻腔にやんわりとだけれど、まとわりつくようなニュアンス。樟脳にはそれがなく、すっきりする。なぜか磨りたての墨のような香りがします。よしよし。

・藤澤樟脳のキャラクター(というのか? これも)、閻魔さんという人もいるのですが、ううん、鍾馗ではないかな。

『貨物時刻表』の不思議

2011年07月09日 | 
『貨物時刻表』という本がある。うちの図書館の雑誌コーナーにも鎮座しているが、どうにも分からない存在である。大学にあって、誰が何のために使うのか、見当がつかないから。

ウィキペディア(エピソードが面白い)には「荷主向け」とあるけれど、貨物輸送の時刻を知らなきゃならない部署もなさそうだ。工学部あたりに何かあるのだろうか? 趣味用途を考えても鉄道研究会はなかったはずだし(あったらごめん)。 

・大体、今時の国立大学はどこも予算が削られているから、徹底的に節約をするようになっている。雑誌類もそうだから、真っ先に削減されそうなものなのに、生き延びているあたり、不思議さがいや増す。

・せっかくあるのだから、1年生を連れての図書館ツアーでは、必ず紹介することにしている。「80万冊あります」というより、『貨物時刻表』というものが存在すること、そしてそれが大学の図書館ならあることに驚いてもらい、高校までの図書室とはちがうのだと印象づけるわけです。大学生になった自覚にまで繋がれば、なおよし。もちろん、そうお手軽にはいかないけれども、どうにも本来の用途とは異なるあたり、不思議な存在としての面目躍如というべきか。

・ところで、いつから図書館では配置することになったのか、検索システム(OPAC)で調べてみたら、なんと登録されてないのだ。どういうことなんだろう?? とことん不思議な存在である。