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充電日記     

オフな話で一息を。

研究書、3冊目をそっと出し

2021年02月25日 | 


・1冊目のときも2冊めのときもそうですが、あまりこう、達成感とか、高揚感とか、ましてや幸福感とかはないんですね。思った以上に淡々としている。やっと形になったか、という感覚はさすがにあるんですが、感情の起伏としてはとても小さい。学生諸君とのあいだでふと交わされたやりとりで、互いの意志疎通ができたことの方がよっぽど起伏は大きいですね(意思疎通できないときは言うもさらなり?)。 ・手がかかったなあ、という感覚もあまりない。いや、もちろん、手はかかっているんですよ。だだそれは、本にする過程での手間が一番つらいといいますか、労力がかかった感が大きい。場合によっては苦痛ですらあります。だったら出さなければいいのに。その通りです。

・なにが辛いんだろうな。頭のなかでは分かっていることを、今一度、文章にしなければならないこと(労力かかる~)。文章にするからには、ちゃんとした日本語じゃないといけない。できればより分かりやすい文章で。そのためには自分の文章を見つめなおす必要がある。ここが一番つらいかもしれません。ほんと、文章書くの下手ですからね。で、それをみずから見なおさなきゃならない。日々、自己嫌悪との戦いです。超克するには見つめなおすしかないんですから。ちょっと以上に憂鬱です。これが一番応えるか。

・校正手入れ。原稿を渡すまえに散々見直すんですが、それでも、上がってきた校正刷りに目を通すと、誤字・脱字があちこちにあります。これでヨシとして出したものに欠陥が多々ある。これも応える。で、初校・二校・三校とあるわけですが、そのたびに同じ苦しみをするわけです。うんざりちゃんです。しかも、それだけ見ているので、よりよい考えとかが浮かんだりする。で、手を加えられれはいいんですが、限度があります。

・400ページくらいのものになりますから、全体的な統一をとる必要も出てくるんですが、これがなかなか。たとえば用語など。これが結構あって、原稿段階でも気づいた分は直すのだけれど、校正で出てくる出てくる。分かりやすいのだと「本を(出版/刊行/発行)する」でどれをとるか。一語に統一してしまってよいか、意味差やニュアンスで書き分けるかどうか。書き分けるとするならどう書き分けるか、とか。

・用字の問題もあります。印刷の「摺る/刷る/擦る」。どれを使ってもほぼよい。なのでバラバラ。「摺る」が多いかなと思っていたら「刷る」もありました。たしかに、現代的な感覚だと「刷る」でしょうが、板木の原版に墨を載せて紙にこすりとるという技法が頭のなかのイメージとしてあるから、何となく「摺る」を使いたくなる。こう、実際に手を動かしているイメージからでしょうかね。手偏の字がいいような気がする。だから、職人さんも「刷(り)師」ではなく「摺(り)師」を使いたくなる。それをどちらかに寄せることになります。・・・・・ね、疲れるでしょ?

・ちょっと失敗だったかなと思うのが、書名。「諸問題」というのは、こう、場当たり的に研究してきたんだろうな、あてどもなくね、ふふふ・・・と思われそうなニュアンスがありますよね。もちろん、はじめに決めた折には、これでドンピシャリ、と思っているわけです。さすがに。

・最初の案としてはいくつかあって、「節用集史詳説」とかいうのもありました。たしかにそうなんですが、バランスというか、統一感というか、そうした点が少々弱いのですね。この点は、前著『近世節用集史の研究』の方がよかった(第一部で序説、第二部が集約的な本論、第三部は自由演技な事例研究、第四部は将来計画)。今回の3冊目は、ほぼ自由演技が主体になってますそれが、室町期から幕末近くまで。視点も多様です。「多様」といえば聞こえはいいですが、ばらばらというに近い。そんなことを考えると「諸問題」の方がよいかなと思った次第です。もちろん、「節用集史の」と前に付くので、ばらける範囲は限定的ではあります。

・私の、これは癖といいますか、研究者としての限界というべきか、少々飽きっぽいところがあります。同じテーマのもと、室町時代から明治~昭和初期まで通せればいいんですが、そういう研究スタイルが性に合わない感じです。いや、もう少し言うといろんなことをしてみたいんですね。で、一つのケーススタディができたなら、それはもそれでよい。手法の可能性は示せたのだから、それでよいだろうと考えがちです。さらに別の観点ではどう見えるか、また、いかに見せることができるか、そうしたことをやり続けていきたい、そんな風に思っていますね。手法の発見・開発に興味があるタイプといってもよいでしょう。

・そういうスタンスで臨むことで、節用集という辞書類に、どのような光の当てかたかありうるかを調べ尽くしてみたいという野望(笑)があるようです。いや、あるんだな。だんだん言葉が見つかってきた。そう、節用集研究の可能性を示したい、のだな。それはそのまま、現状での研究の限界を見極めたいということでもあるのだな。ここまでは出来ましたよ、これから先は無理ですよ、こうした条件が揃えば一歩進めるかもしれませんねぇ・・・ そう、そういうことをしたいのだ。だから、今回の『節用集史の諸問題」は、自分が関心のあること、やりたかったことだけで出来ている、と言ってもよさそうです。最後の、早引節用集の諸本を扱ったところだけは、やや苦痛。6類ある早引節用集のうちの2類4変種を同じ方法で検討しなければならなかったから。

やっぱり昔は鬼が居たんだねぇ

2021年02月05日 | 


・江戸時代の辞書『新大成増字万宝節用集』(元禄13年刊)の挿絵。昔は居たんだ、やっぱり。

・「丁未四年〈慶雲四(707)年〉六月十五日文武天皇崩御。寿(ことぶき)二十五さい○同廿三日大ぢしん○一頭三面の鬼あらはるゝ」。天子若くして亡くなり、大地震とともに(?)三面鬼出現、か。さらりと書くね。


追記)
木場貴俊さんから『本朝年代記図会』巻之四にある類例を御教示いただきました。村に立ち現れた三面鬼。逃げまどう村人たち。なかなか臨場感があります。『進撃の巨人』とか連想します。
近藤泰弘さんから『大日本帝王年代記』を御教示いただきました。文面はそっくり参考にしたのでしょう。

字数順を取り込む五十音順・・・

2020年12月17日 | 
国語漢文ことばの林 文明堂編輯部編 立川文明堂 大正5
  本書の引き出し方に就て
本書の排列は、前述の如くなれども、敢て一語の終りまでを悉く五十音順に依りて、排列せしにあらず、上の三語を五十音順に依りて排列し、而して共の三語を基礎として四言、五言 六言と語数の順に従ひて五十音に排列せり、是れ蓋し多数の語中より、所要の語を早く検出し得られむを主としたるに外ならず、例ば(中略)「あんさつし(按察使)」は五言なるに依り、四言の「あんさつ(按察)」の次へ入れずして、四言の終りなるあんざん(暗算)の次へ置きたるが如し、
総て斯の如く注意し、語数に依りて、五十音順に排列し置きたれば、例ばあんしやう(安祥)の語を求めむとすれば、五音なるに依りあんしん(安心)と云ふ、あんしの部の四音の次を検すれば、直ちにあんしやう(安祥)なる語を求め得らるゝなり、

・全部字数優先にするか、字数はまったく考慮しない方がハッキリするのに。ある意味、窮極の折衷かもしれない。でも、それが、大正当時の(一部の)人の実感でもあったんだろうね。それを大事にしておきたい気もします。

子どものために、あえて言文一致を採らなかった児童文学作品もあるのが想起されます。

特装愛蔵版の有り難度

2020年12月03日 | 
・とくそうあいぞうばんのありがたど。「有り難さ」と書いて終わってしまうと、「なんとありがたいことか」の意味にも採られそうですね。で、「有り難度」。

・『新明解国語辞典』の「特装愛蔵版」がとあるフリーマーケットサイトに出ていました。・厚さは通常の3倍。



・箱も本体も金きらキン。でも表紙に書名はないですね。ちょっとこのあたりから暗雲のきざしが。



・刊記は・・・  ううっ。年で終わってる!!



・本文は・・・ うわっ、単色刷り。第6版ベースなので、2色刷りかと思ってました。ちょっと寂しいかも。



『響鬼探究』

2020年12月01日 | 
ん? なんだか引用されたか、参照されてるらしい。お役に立てば何よりだけれど。

仮面ライダー本?? しかも国書刊行会?? ちょっとクラッときてます。とりあえず取り寄せてみるか。

ああ、そうか。研究者仲間が寄稿してた。なるほど。

かわいい辞書

2020年11月12日 | 


・どう? いいでしょう。

・最近、マイナーな辞書にも注目しようと思っています。辞書というと岩波書店・三省堂・小学館、これについで講談社・集英社、中堅どころで大修館書店が安心感があるところでしょうか。教育系の旺文社・ベネッセなども捨てがたい。このあたりは、メジャー級かとおもっています。

・そうではない出版社による国語辞典が気になるところです。メジャーではないので、ちょっと探さないと出てこない。できれば安く買いたいので、ネットを巡りあるく日々です。その過程で、いろいろなものを目にするんですが、この辞書は、大手三省堂のもの。でも、なんだかおしゃれです。ひょっとして若い人が「かわいい」と感じるのはこういうものなのかもしれませんね。

・ミッション系スクールの記念品かと思わせる、なんていうんでしょう、気品といえば大げさですが、センスのよさを感じますよね。ひとめぼれ。ぽちり。



・やってきたのを見てびっくり。あ、そうか、これは勲章だったのか。まあ、よく見れば、分かったはずなんですがね。日本政府を示す桐紋もありますし。「特装版」とありますから、このケース自体も特別、つまり勲章用の特殊デザインなのかもしれません。

古本(中古本)を買えるサイト

2020年11月11日 | 
・もう、皆さん、ご承知だろうとは思いますが、いろいろこの種のサイトはありますね。サイトそれぞれの特性を知っておくと、格安で購入できそうですね。

日本の古本屋。老舗。各地の古本屋さんの在庫を一気に検索できます。検索データにないものはリクエストもできます(要会員登録)。後払いが基本ですが、最近は、個人が相手だと先払いをお願いすることも少なくないようです。

スーパー源氏。こちらも早くから活躍してました。私自身はあまり利用したことがないけれど。

書籍横断検索システム。アマゾン(中古)・楽天市場(中古)・ブックオフオンライン・ネットオフなどなどが検索できます。ただ、検索対象サイトによっては、それぞれに詳しく検索し直す必要もあるようです。特に、アマゾンや楽天のように複数の古本屋さんの合衆国みたいなところは、それぞれに条件が異なることもあるようです。が、ざざっと見渡すにはとても便利ですね。

・便利なんですが、店舗に出かけて現物を見るわけではないので、注意は必要。古書のデータをどこまで、どのように記載するかは、入力担当者なり店主なりの判断になるからですね。画像の有無、撮り方も問題。ただ、どのサイトも最低限の質問などはできそうです。

追記メモ)
駿河屋 
ブックセンターいとう 日野店 送料100円からって良心的。

ばらまき辞典の底力

2020年11月07日 | 
・先日紹介の小さな漢字字典。母艦(?)とでもいうべきものを発見しました。アカサタナがV字に折り返すのも一緒。これは、内容もまるっと同じだな?



・と思いきや、1979年の母艦に対し、ばらまき辞典は1983年の発行。この間に、当用漢字から常用漢字への移行がありました。それを、ばらまい辞典はちゃんと改訂しているのです。



・母艦では、当用漢字ではない字や、そうした字を含む語について、〉を下向きに付けていますが、常用漢字に新たに含まれたものは、上向きにしているのですね。



・さすがに、段・頁を超えるような出入り・更新はないようですが、立派だなあと認識を改めました。

和漢朗詠集の近世初期版本

2020年11月05日 | 
・10月30日の百万遍の続きです。「小汀文庫」という、古活字版を主体とした良質なコレクションがありました。現在は散逸していますが、要所要所は、相応の図書館等に収められています。が、そこからさらに漏れたものが、まだまだあるようです。



・「小汀文庫」の蔵書印もあったので購入しました。右が上巻の最初の丁。左は下巻の最終丁の一枚前。堂々とした書き振りですし、刷りも墨乗りもよい。版木が作られて何度か刷られて、調子が乗ってきた感じの刷りと思えます。



・縦というか高さというか、287ミリほどあります。江戸時代では現代のB5判ほどのものを大本と呼びますが、それよりも一・二段大きい感じ。傾向として、古い版本ほど大きさが大きくなる傾向にあります。寛永くらいのものらしいです。ひょっとしたらもう少しだけさかのぼるかもしれません。

・下巻、横に引かれるはずの筆画が、変に右上がりだったりしますよね。ちょっと印象に残りやすい。昨年だったかに買った下巻端本(しかも末丁欠のため、1000円でした)と、とてもよく似ていました。

・が、墨の色や、版木の若々しさはまったく異なります。小汀利得さんは、とてもよい本ばかりを収集されていたようですね。

細かく分ければいいのか、な?

2020年11月02日 | 
・とある全教図のカバー広告。



・小さくするから細かく分ける・・・ う~ん、分かるんだけれど、分かるんだけれど・・・
  ど忘れ日常国語辞典
   ど忘れ日常漢字字典
    ど忘れ漢字字典
     ど忘れ用字用語辞典
      ど忘れカタカナ語辞典。

・どれで引こうかと迷っているうちに、何を引くんだったか忘れてしまいそう。(^_^;