徐仙日乗

日記、随筆

徐仙日乗 読書 揚子江は今も流れている 犬養健

2020-04-28 17:11:00 | 日記

徐仙日乗 読書 揚子江は今も流れている    

犬養健 中公文庫

読了 読書メーターと重複


発表は1960。戦時中のチャイナとの和平工作に携わった著者の回顧録。チャイナ、日本とも複雑に絡みあった人脈、官民の組織を背景にして「心を寄せ合った有志」が「和平」に向けて命を賭して活動していた記録と記憶。著者の関わったのは通常は「日本の傀儡政権」「南京政府は相手にせず」とかで知られる汪兆銘政権。国の交渉事と友情を慎重かつ客観性を保った記録は信頼出来る気がする。また作者が後世に対する責任感を持って執筆しているのも分かる。十五年戦争について戦後語られた量は膨大だったろうし、その研究はこれからも続いてゆくにしても、小生には良書と思えた。何よりも文章が良い。小説っぽい箇所もチラホラ。実体験の強み。今の政治家に「文は人なり」を感じさせる人がさてどれくらいいるのか。勉強になった。

最近犬養道子の著作に親しむ機会があり、度々登場する父親がこの人。因みに安藤和津の父親でもある。日中戦争と和平交渉、国民党政府、列強との外交戦等々、歴史の秘話が満載。主要人物の小伝も役に立つ。読書メーターで初登録なのが意外。


徐仙日乗 読書 天切り松 闇がたり 1 闇の花道 浅田次郎

2020-04-27 07:06:00 | 日記

徐仙日乗 読書 天切り松 闇がたり 1 闇の花道  浅田次郎 集英社文庫

読了 読書メーターと重複


良い意味でも悪い意味でも、読まなくてもある程度想像できるのだが、これも安定感とも言える。痛快感と哀感。現代の留置場で語られる明治大正期、ジャパニーズピカレスクロマン。分を弁えた官と犯罪者の癒着は、まぁこれもロマンの一種か。仕掛人、雲霧等の池波正太郎、幕末の黙阿弥などの先行作品を土台にして、何故か語り物のサービスもついてくる。説教臭い点は、まぁ耳を塞ごう(笑)幕末に黙阿弥がいて白波物を皆んな喜んでいたってのは結構後世に影響を与えているのかも知れない。


徐仙日乗 芝居話

2020-04-22 06:41:00 | 日記
徐仙日乗 芝居話

「客席から観た芝居、袖から観た芝居」シリーズ、としておこうか。印象を重視してあまり調べないで記していこうと思う。玉三郎の天守物語・初演(だと思う。班女と二本立て)を日生劇場で見た。歌舞伎味は少なく、かと言って歌舞伎を無視する訳にはいかず、と云うバランスの取れた舞台で鏡花戯曲ブームを作ったといって良い。小生も打ちのめされて鏡花戯曲を漁るようになった。その過程で本作を知る。鏡花戯曲は兎に角セリフが立たないと話にならない。その上圧倒的な美貌、姿の良さも必要で、誠に難物だと思う。「観たいけど、公子役者が居ない」ってのが当時の結論。新派で良重、久里子・三越劇場ってのが初観劇。決定版になる筈だった新之助、玉三郎版も観たが「精進して再演に期待」くらいか。仁はこの人の物だと思ったのだが。両公演とも儲け役が女房で英太郎と秀太郎。ベテランの脇役の凄み。この芝居は玉三郎・美女が前に出てはいけない脚本なのでそこがもどかしかったのかも知れない。


徐仙日乗 読書 完全なる首長竜の日 乾緑郎

2020-04-19 10:22:00 | 日記

徐仙日乗 読書 完全なる首長竜の日  乾緑郎 宝島社文庫 

読了 読書メーターと重複


面白かった。伊武が気に入ったので出世作とされる本作にも手を出した次第。「あらあら、そうだったのね」てな、ネタバレ厳禁作なのでコメントは限定しておこう。「機巧」と共通して心、若しくは意識と呼ばれる物への関心が作者の根底にあるらしい。表現が詩的な方へは行かず、主人公の行動と心理描写に重点を置いた行き方は小生には分かりやすかった。ちょっと自分の存在とかが揺すぶられた。


徐仙日乗 読書 なよたけ 加藤道夫

2020-04-13 17:54:00 | 日記

徐仙日乗 読書 なよたけ 加藤道夫 青空文庫

読了 読書メーターと重複


えーと昔、「新劇」てぇジャンルがありまして(笑)。作者は名高い新劇の先生。例えば浅利慶太辺りも弟子筋に当たる筈。実は50年程前に日生劇場で見ている。高校時代何故か演劇公演に参加することになり「百聞は一見にしかず」とばかり観劇会宜しく仲間内で観に行った。多分国語の先生辺りの推薦だったと思うが、今から考えれば豪勢な話である。その後その「新劇」の頭数に連なることになる。素養も教養も無い高校生には些か敷居の高い作品で、今回も流し読みでは理解したとは言い難い。多分精読して発声する必要があろう。詩的で音楽を多用した当時の「演劇への夢」は何となく分かった。こんなコメントでは師匠連に怒られそう。良い悪いではなく、まぁそんな時代であった。なお覚えているキャストは三田和代と北大路欣也!戯曲に当たって分かったのはト書きと作者の指定が随分細かいこと。人物の内面に合わせて天気が変わり、鳥の囀りがこれでもか、とばかり書き込まれている。まるで今のアニメみたい。戦後の照明、音響機器の状況を鑑みると先人達の苦闘を想う。(知っているだけに!)鳥の声なんて多分生の方が応用が効いたのではないか。照明はまぁ、今からするとチープの一言だろう。勿論これらは成果とは必ずしも一致しない。抽象的な竹林のモチーフが印象的であった。