徐仙日乗 読書 揚子江は今も流れている
犬養健 中公文庫
読了 読書メーターと重複
発表は1960。戦時中のチャイナとの和平工作に携わった著者の回顧録。チャイナ、日本とも複雑に絡みあった人脈、官民の組織を背景にして「心を寄せ合った有志」が「和平」に向けて命を賭して活動していた記録と記憶。著者の関わったのは通常は「日本の傀儡政権」「南京政府は相手にせず」とかで知られる汪兆銘政権。国の交渉事と友情を慎重かつ客観性を保った記録は信頼出来る気がする。また作者が後世に対する責任感を持って執筆しているのも分かる。十五年戦争について戦後語られた量は膨大だったろうし、その研究はこれからも続いてゆくにしても、小生には良書と思えた。何よりも文章が良い。小説っぽい箇所もチラホラ。実体験の強み。今の政治家に「文は人なり」を感じさせる人がさてどれくらいいるのか。勉強になった。
最近犬養道子の著作に親しむ機会があり、度々登場する父親がこの人。因みに安藤和津の父親でもある。日中戦争と和平交渉、国民党政府、列強との外交戦等々、歴史の秘話が満載。主要人物の小伝も役に立つ。読書メーターで初登録なのが意外。