徐仙日乗

日記、随筆

徐仙日乗 読書 実録アヘン戦争 陳舜臣

2019-08-30 07:28:16 | 日記
徐仙日乗 読書 実録アヘン戦争 陳舜臣 中公文庫
読了 読書メーターと重複

陳舜臣は多分初読み。司馬遼太郎と対談していた。思っていたより読み易く、世紀の大事件の概要を知ることが出来る。清朝末期ってことは江戸時代末期と重なり、「近代化」(この言い方も問題あるなぁ)日本では御一新との比較をしてしまう。清朝チャイナの政治体制を分かりやすく説明してくれる。科挙制度と官僚と政治の関係とか。簡単に言うと「名文、達筆じゃないと至高の皇帝に政策を進言すら出来なかった」らしい。これでは近代国家間の戦争には勝てない。あと産業革命恐るべしである。面白かった。

徐仙日乗 読書 帰郷 浅田次郎

2019-08-27 07:25:10 | 日記
徐仙日乗 読書 帰郷 浅田次郎 集英社文庫
読了 読書メーターと重複

戦争(勿論十五年戦争ね)を題材とした短編集。浅田次郎は結構読んでいるが短編集は初めてかもしれない。内容もさることながら、短編を並べてみると各編とも導入部に凝らした工夫が見て取れる。靄に包まれた状況とか人物が徐々にフェードインしてくる運びが心地良い。気がつくと、さてこの人物がこれからどうなるのかって興味で最後まで行ける。通俗的なのだが「上手いものだなぁ」と舌を巻く。後楽園遊園地で働く苦学生の話が印象深い。ダフ屋とか学生アルバイトとか、その時代の記憶を残す言葉を思い出す。その残滓を実際に見聞きしていたせいだと思う。例えば放置されていた競輪場は見た記憶がある。浅田作品は基本的に人生を肯定してくれる暖かさがあるので苦しい時とか元気付けてくれる。

徐仙日乗 読書 飛龍伝―神林美智子の生涯 つかこうへい

2019-08-25 09:22:20 | 日記
徐仙日乗 読書 飛龍伝―神林美智子の生涯 つかこうへい 集英社
読了 読書メーターと重複

図書館本。最後の章では落涙!カタルシス・排泄ってことでスッキリした。小生の場合、芝居と同じで「泣きたい気分になったら無理せずいっちゃえ」って思っているので(但し自己暗示は駄目)珍しい事では無い。大昔隆盛を極めた「つかこうへい現象」のような物を再確認。道具立が派手、難しい言葉無し、少ない登場人物、扱っている空間が狭い、等々今読むと「つか芝居」がそのまま工夫を凝らして小説になっただけ?って構造なのが分かる。当然、これらは小説としては傷になっている事もある。何しろ人物像が状況でコロコロ変わって、弱者がコンプレックスをテコにして強者に変貌するのだから。熱いセリフの底に潜む虚無と不条理とでも言おうか。両方とも当時流行った言葉。「伝説の石・飛竜」が出てこなかった、あの件が好きだったのに。多分、飛竜は神林美智子だったのだ。

徐仙日乗 読書 アメリカと戦いながら日本映画を観た 小林信彦

2019-08-19 18:18:14 | 日記
徐仙日乗 読書 アメリカと戦いながら日本映画を観た 小林信彦 朝日文庫
読了 読書メーターと重複

1995発表。初の文庫化らしい。お盆休みに相応しい文庫化で此方もそれに乗っかっている。自伝の「和菓子屋の息子」を補完する物とのこと。「アメリカと戦う」ようになりアメリカ映画が禁輸となった時から戦後に疎開先から帰還を果たす数年間を「小林少年」の視線、印象を大切にして綴られた社会史。「強烈な社会の縛り」の中で奮闘した映画人が垣間見える。阪妻主演「無法松の一生」に纏わるエピソードとその後は検閲の実際を鮮やかに照射している。映画と歴史と回想のバランスが良い。信頼の置ける叙述がテンポ良く続く感じで好著。

徐仙日乗 読書 娘に語る祖国―『満州駅伝』‐従軍慰安婦編 つかこうへい

2019-08-10 07:30:06 | 日記
徐仙日乗 読書 娘に語る祖国―『満州駅伝』‐従軍慰安婦編 つかこうへい 光文社
読了 読書メーター重複

1997年発行。ブームを起こした小劇場、小劇団は数あれど、つかこうへいは中でも極め付けの存在で世間的には人気作家として角川文庫に一角を占め、それでも演出家として活動を続けたのは見事な生き方だったと思う。ずっと追いかけていた訳ではなかったが書店で「娘に語る」と称した書名を見たとき勝手に「この人もこういう心境になったのかなぁ」てな感慨を持ったものだが(分かるよねえ)中身はちゃんとした小説になっていたのをついこの間認識した次第。正直言って今となっては古めかしい物言いとか論理にノスタルジーを感じるものでしか無いのだが(この人は一貫して変わらなかったなぁとすら思う)挫折とか後悔とか弱さに対する 眼差しは昔読んだ時より、もっと分かった気がした。それはそうと、導入で出て来る幼い娘は(私小説としてみれば)宝塚のトップを張ったあと舞台女優として活躍中らしい。知らなかった。時節柄慰安婦問題とかで引用される事も有るらしいが、そう言うことに最も縁遠い物書きだということすら分からなくなっているらしい。