徐仙日乗

日記、随筆

徐仙日乗 読書 JR上野駅公園口 柳美里

2021-01-06 10:11:00 | 日記

徐仙日乗 読書 JR上野駅公園口  柳美里 河出文庫

読了 読書メーターと重複


柳美里さんは初読み。若い頃東京キッドブラザースを皮切りに演劇活動、その後小説家に転身、色々なスキャンダルも伝えられた人。読了後Wikiをサッと撫でる。読んでみようって気になったのは、なんといっても題名で、これは小生の氏素性に深く関わっている。今はそれ程では無いのかもしれないが、東北生まれの上京者にとって「上野」は常に括弧付きの存在で、東京の自分と田舎の自分が入れ替わる場所だった。そして年末の急行には「出稼ぎ」の人達が乗っていたものだ。少し上の世代は集団就職って恐ろしい流れがあって、どちらも柳の言う「居場所のない人達」を大量に生み出していったことだろう。他の地方も似たような物だったのかも知れないが、上京と上野って物語は結構深く沈殿していたのではないか。ここら辺を書き出せばキリがないが、本作に垂れ込めたモノトーンと閉塞感と諦観、それらは繰り返される騒音に象徴されていて、堪らない気持ちになった。時折り描かれる花と季節の描写に色彩が現れる。硬い塊を無理矢理咀嚼した。これも作品の力か。