徐仙日乗

日記、随筆

徐仙日乗 読書 機巧のイヴ 帝都浪漫篇 乾緑郎

2020-03-28 09:20:00 | 日記

徐仙日乗 読書 機巧のイヴ 帝都浪漫篇 乾緑郎 新潮文庫

読了 読書メーターと重複


新世界覚醒篇と本作を続けて読む。言い尽くされているがロボット物、異世界物でアクション・娯楽要素が満載。IC基板、チップでは無く歯車とかゼンマイで知能もある生き人形が存在するって発想で勝負有り。小生的にはSFって括りはしたくない。かと言って魔法や超能力が出てくるわけでもない。こう云う設定に落ち着かざるを得なかったのではないか。想像だが最初の伊武が好評だったので、二作目以降が企画されたって気がする。別な物と考えれば「作者がすっ飛ばしている箇所」も気にならなくなる。これ丹念に描くと大変な事になるし、別のテイストになりそう。メロドラマとアクション映画風の展開は読み易くサクサク進む。伊武の活躍が少ないのは寂しいが、メンテナンスを必要とする機巧人形の戦闘力、ヒットポイントを考えると、彼女の役割は「勇者に助けられるお姫様」が相応しい。女が矢鱈強くなった業界でこれは返って新鮮なのではないか。ともあれ素晴らしい終章をもって伊武の物語は終わりを告げる。


徐仙日乗 読書 南の風 獅子文六

2020-03-27 21:29:00 | 日記

徐仙日乗 読書 南の風  獅子文六 朝日文庫

読了 読書メーターと重複


文六センセイの小説でよく出てくる「茫洋として大人物風で会社勤めに向かない、その反面自分の信じた事、原則は守り抜く、育ちの良い」大男・六郎太が主人公。どうやら作者の父親がモデルのようらしい。他の作品にも出てくるお馴染みのキャラクターだが、鹿児島県・薩摩の風土、文化がバックボーンになっているのが「都会的な文六センセイ」としては珍しいのではないか。鹿児島との縁は「海軍」執筆取材の余禄かと早とちりしたが、あれは日米開戦以降の筈で、鹿児島への愛着は父親と中津藩・福澤諭吉・慶應と云うラインから元々持っていた物らしい。文六センセイはリベラル、個人主義のイメージがあったが六郎太が家刀自とも云うべき母親との鹿児島への帰省で大西郷や薩摩の気風に己の原点を見出したって辺りはユーモアもあるけれど、時局への迎合?若しくは読者サービス?か。明治人としての文六センセイの別な面が読み取れる。


徐仙日乗 読書 機巧のイヴ 新世界覚醒篇 乾緑郎

2020-03-22 20:22:00 | 日記

徐仙日乗 読書 機巧のイヴ 新世界覚醒篇  乾緑郎 新潮文庫

読了 読書メーターと重複


読み始めるにあたって、グッと我慢して前作を再読。こう云う変わった掌編集を支える土台、美意識の様な物を確認して本作に取りかかった。「異世界物」「スチームパンク」(本作はアメリカらしき国が舞台なのでピッタリ)とかで説明される本作の印象として「昔風の挿絵が似合う作品」てな感じがした。伊武と殺人狂の遭遇・八十吉の渇仰・大観覧車を巡る活劇等々、今風の漫画もいいけど安っぽい昔の印刷の挿絵がよく似合う。歴史の発展がズレているけど西暦は共通しているのが可笑しいけど、これは作品を味わう上で取っ掛かりになる支点なので抜く訳には行かない。「別世界物」では無いのだから。闘蟋はお馴染みだが面白く、古びた感のある単語が効果を上げている。ランカイ屋、バリツ(作者は漢字を当てている)、おそそ等々。冒険譚とも言うべき活劇シーンも中々。歴史を超えた伊武が古色感を漂わせた社会描写の中でファンの前に現れてくれた、と言うことか。気に入ってし面白かったし楽しめた。


徐仙日乗 読書 戦中派天才老人・山田風太郎 関川夏央

2020-03-08 20:08:00 | 日記

徐仙日乗 読書 戦中派天才老人・山田風太郎  関川夏央 ちくま文庫

読了 読書メーターの重複


読む本が1656(生まれた年ね)以前発表の物が、段々増えて来ている様な気がしている。老化とも言えるが、ネットとかAmazonで作家、古書が素人でも捜し易くなったからってのも有ると思う。似た感じで50代以降にハマった作家も何人かいて「世の中は未知の楽しみに溢れている」って希望も捨て切れていない。小生にとって山田風太郎と獅子文六はその双璧で見つけたら調べる、買うの状態が続いている。良し悪しは別にして小説よりもエッセイ、雑記が面白い作家もいるが風太郎は圧倒的に小説家と言える。他の著作も明るい気分にさせてくれる物は少ない。関川が対談形式を模して伝えてくれる風太郎像もちょっと近寄りがたい、変な老人で、興味深くはあるが「好き・尊崇」の念は湧いてこない。老醜をあえ隠さない所が流石忍法帖の作者とも言える。経歴、日記を読んでも何故小説家になったのかが不可解であったが、本作で謎が解けた。「食う為、懸賞小説投稿」がその答えらしい。執筆にストレスを感じないなんて恐ろしい発言も。日本の物書きとしてユニークすぎる人だった様だ。その後の苦労・努力はさておき似たようなデビューをした大物に漫画家のちばてつやが居た事を思い出した。戦後って事情に共通項があるのかも知れない。


徐仙日乗 読書 月別まとめ

2020-03-03 17:29:00 | 日記
2月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:660
ナイス数:362

パリわずらい 江戸わずらい (集英社文庫)パリわずらい 江戸わずらい (集英社文庫)感想
多作の大人気作家にしてペンクラブ会長のエッセイ。JALの機内誌に連載された物らしい。内容も気のおけない、飛行機の中で色々サービスを受けながら、豪華な広告の合間にパラパラとめくるのに格好の量と内容って感じ。結構な割合で体重制限の話が出てくる。喧嘩したり罵声を浴びせたりと、まあ、著作について来る写真を裏切らない強面の一面があるみたいで、文学者ではなく作家が相応しいヒトなのだなぁと納得。エッセイに出てこない場面では粛々と升目を埋める作業をしているのだろう。続く
読了日:02月12日 著者:浅田 次郎
やっさもっさ (ちくま文庫)やっさもっさ (ちくま文庫)感想
「やっさもっさ」って言葉は江戸時代からあったらしいが全く知らなかった。まぁ語感で分かるのだけど。作者の造語かと思っていた。自由学校とてんやわんやと本作で戦後日本を描いた三部作とされているらしい。「自由、学校、てんやわんや、やっさもっさ」と並べると何やら意味ありげで文六センセの顔が浮かんで来るような?大きな柱は横浜の歴史・戦後復興と混血孤児。サンダースホームは子どもの頃有名だった。女主人公の価値観、行動力、目的意識はこの頃では相当斬新だったのでは、時代の先取りをしていたと思う。映画では淡島千景が演じた。続く
読了日:02月11日 著者:獅子 文六
姉弟と新聞配達姉弟と新聞配達感想
娘・道子絡みで興味を持ち手持ちの豊平文庫を漁ると二編発見。小作品だけど心に染みる物があった。道子の自叙伝でモデルとなったらしい画家が出てくる。作者が後に政治家となり(後を継いでとか詰まらない理由ではなく、のっぴきならならい苦渋に満ちた転身だったよう)戦後は法務大臣として造船疑獄の折佐藤栄作を救う為に指揮権発動をした人、として名を残すことなる。幼い道子に施した素晴らしい教育、美を愛した小説家。個人的には国家の指導層と言われる人々の何割かは小説くらい物にできる人がいて欲しい。
読了日:02月02日 著者:犬養 健

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