徐仙日乗 読書 帰ってきたヒトラー 下
河出文庫 ティムール・ヴェルメシュ
読了 読書メーターと重複
楽しい!大変面白く、興味深い内容。ドイツに滞在した事がある人ならば、もっと楽しめる筈。「某が実は生きていた!」って話は別に目新しいアイデアでは無いのだが「ヒトラーが現代のドイツに現れてしまった」となると流石に禁忌が多すぎることは十分予測出来るし、結末を心配したりもして、結果ワクワクして読み進めることになる。ヒトラーとかナチスに関しては常識程度なのだが、作者はヒトラーを想像や解釈や評価をせずに、膨大な資料からの引用だけで作り上げていると思う。結果として総統は紳士的で信念を持ち、大衆の扱いに長けた「魅力的」な男として活躍することになる。総統の見た現代ドイツは現代日本とも共通する事が当然あって、便利さと基弱さを改めて思い知らされる。困った、総統が立派な人になってしまうではないか。後書きと注釈で中和される。読後には考える材料が沢山。この手法は現代を相対化する上でとても有効なのではないか、だとするとやはり良書。毒素も含めて。圧巻は矢張り演説シーンで比べちゃいけないけど、我が国の人と比べてしまう。静まり返った聴衆と第一声、コレが凡人には出来ない。