5月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2515
ナイス数:633
一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」 (文春文庫)一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」 (文春文庫)の感想
筆者は坪内祐三でまとまったものは初読。雑誌のコラムなどで好印象は持っていた。因みに小生より二歳年下でほぼ同じ。という訳で坪内の紹介する膨大な「1972年周辺の出来事」が気持ちがいいほど頭に入ってくる。主だったところで連合赤軍・浅間山荘、ロックバンド来日、アイドル、日本のロックとフォーク、ぴあ創刊、横井さんの発見と帰国、などなど。こうしたトピックスを挙げながら筆者は注意深く、1972年が「ある区切りであった」と主張する。執筆が21世紀の初頭なので若干古いともいえるが 続く
読了日:05月06日 著者:坪内 祐三
ジャーニー・ボーイジャーニー・ボーイの感想
イザベラ・バードの日本旅行記は読了済。高橋克彦は初読。資料、題材と小説の関係を考えずにはいられなかった。小生としては活劇が出て来たのは意外であった。大倉喜三郎と外務省が岸田吟香を通じて探し出した通訳兼ガイドがイトーだったと云う設定で「腕が立つしっかり者」だという。なるほど小説の主筋がガードとなればこう云う人物像でなければならないわけだ。バード女史の言動が47才に感じられないのは「護られる乙女」の役を振られた所以か。自分の草稿をイトウに見せて意見を求めるなんて小娘臭い。小説だからいいのだろうが。
読了日:05月10日 著者:高橋克彦
イトウの恋 (講談社文庫)イトウの恋 (講談社文庫)の感想
久しぶりに小説を読んだって満足感を得た。昨今ではラノベ、エンタメ、ホラー、時代小説、社会派とか、単なる小説では許してくれない状況なのであるが、そんな事では無くて、文学が受け持って来たと言われる「人間の研究」とも言える領域を垣間見せてくれたから。大上段過ぎて自分でも恥ずかしくなっているのだが、本書が憂き世の窮屈で月並みな環境から自分を解放してくれたのは事実。作者の創造した「イトウ」の手記が圧巻。資料を読み込んで、バード女史の人となりを研究した上で、イトウに語らせる物語は此れだけでも充分なくらいだが 続く
読了日:05月16日 著者:中島 京子
あかんやつら 東映京都撮影所血風録 (文春文庫)あかんやつら 東映京都撮影所血風録 (文春文庫)の感想
生まれた頃は所謂日本映画全盛期ではなかった、しかし全盛期を支えた大人達はすぐそばにいた。何よりも生まれた田舎町に映画館があったと云う事実で充分であろう。近くの市に行くと複数館あった。どう云う系列なんて当時は分からなかったが、東映映画が多かったようである。でも初期のゴジラ、ガメラも見た記憶がある。本書は太秦で知られた東映映画撮影所の物語。沢山のインタビューをしたであろうことは脱線の多さでも分かる。映画作りって、したことがないのだが、面白くないわけが無い、ってことは想像できる。続く
読了日:05月19日 著者:春日 太一
女流―林芙美子と有吉佐和子 (集英社文庫)女流―林芙美子と有吉佐和子 (集英社文庫)の感想
面白かった、関川夏央は初読。独特の論の立て方と進み方に最初は戸惑ったが、読み終わるとストンと腑に落ちている不思議さ。有吉佐和子の評伝を読みたくって購入したのだが、結果他の収穫もあったのは読書の功徳なのだろう。有吉佐和子を勧めてくれたのは母親で当時の有吉佐和子の活躍を眩しく目ていたのかも知れない。「恍惚の人」って言葉に感心して、よく口にしていた。関川夏央によると物語作家としては「出雲の阿国」あたりが最盛期でその後の中共傾斜、環境汚染、老人問題などは作品として低調であるとしている。続く
読了日:05月21日 著者:関川 夏央
週刊誌風雲録 (ちくま文庫)週刊誌風雲録 (ちくま文庫)の感想
大正に創刊されたと云う週刊朝日とサンデー毎日。週刊雑誌は戦後に相次いで創刊され、小生達はマンガも含めて週刊誌の申し子だった。自分のことを振り返ると、読書中の本をカバン、尻ポッケに忍ばせつつ、キオスクでは週刊誌とタバコを買うって生活がかなり長い間続いていた気がする。週刊誌の中にはぴあとかナンバーなども含まれていたのであるが。そう云う病いの様なものが、スマートフォンを所持した途端に消えて無くなった。要は面白い雑誌が少なくなっていたってことなのだが、紙媒体の後退を我が身で実践していたことになる。続く
読了日:05月25日 著者:高橋 呉郎
女二人のニューギニア (朝日文庫)女二人のニューギニア (朝日文庫)の感想
あんまり面白過ぎて、この手のルポ、ノンフィクションを他の作家が書いたらどうなるのかなぁ?なんてことを考えてしまった。関川夏央によると本作は文化人類学者畑中幸子を描いたノンフィクション風小説と捉えている。作者の見たままって形式だが、明らかに自分を戯画化している。作者の体験はどう考えても災難と呼んだ方が良いくらいで、招待した畑中女史も結構ヒドイ。災難と言える理由を上げると、電気無し、水道無し、道路無し、低地のネイティヴでも文明に触れたのが10年程前!、続く
読了日:05月29日 著者:有吉 佐和子
読書メーター
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ナイス数:633
一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」 (文春文庫)一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」 (文春文庫)の感想
筆者は坪内祐三でまとまったものは初読。雑誌のコラムなどで好印象は持っていた。因みに小生より二歳年下でほぼ同じ。という訳で坪内の紹介する膨大な「1972年周辺の出来事」が気持ちがいいほど頭に入ってくる。主だったところで連合赤軍・浅間山荘、ロックバンド来日、アイドル、日本のロックとフォーク、ぴあ創刊、横井さんの発見と帰国、などなど。こうしたトピックスを挙げながら筆者は注意深く、1972年が「ある区切りであった」と主張する。執筆が21世紀の初頭なので若干古いともいえるが 続く
読了日:05月06日 著者:坪内 祐三
ジャーニー・ボーイジャーニー・ボーイの感想
イザベラ・バードの日本旅行記は読了済。高橋克彦は初読。資料、題材と小説の関係を考えずにはいられなかった。小生としては活劇が出て来たのは意外であった。大倉喜三郎と外務省が岸田吟香を通じて探し出した通訳兼ガイドがイトーだったと云う設定で「腕が立つしっかり者」だという。なるほど小説の主筋がガードとなればこう云う人物像でなければならないわけだ。バード女史の言動が47才に感じられないのは「護られる乙女」の役を振られた所以か。自分の草稿をイトウに見せて意見を求めるなんて小娘臭い。小説だからいいのだろうが。
読了日:05月10日 著者:高橋克彦
イトウの恋 (講談社文庫)イトウの恋 (講談社文庫)の感想
久しぶりに小説を読んだって満足感を得た。昨今ではラノベ、エンタメ、ホラー、時代小説、社会派とか、単なる小説では許してくれない状況なのであるが、そんな事では無くて、文学が受け持って来たと言われる「人間の研究」とも言える領域を垣間見せてくれたから。大上段過ぎて自分でも恥ずかしくなっているのだが、本書が憂き世の窮屈で月並みな環境から自分を解放してくれたのは事実。作者の創造した「イトウ」の手記が圧巻。資料を読み込んで、バード女史の人となりを研究した上で、イトウに語らせる物語は此れだけでも充分なくらいだが 続く
読了日:05月16日 著者:中島 京子
あかんやつら 東映京都撮影所血風録 (文春文庫)あかんやつら 東映京都撮影所血風録 (文春文庫)の感想
生まれた頃は所謂日本映画全盛期ではなかった、しかし全盛期を支えた大人達はすぐそばにいた。何よりも生まれた田舎町に映画館があったと云う事実で充分であろう。近くの市に行くと複数館あった。どう云う系列なんて当時は分からなかったが、東映映画が多かったようである。でも初期のゴジラ、ガメラも見た記憶がある。本書は太秦で知られた東映映画撮影所の物語。沢山のインタビューをしたであろうことは脱線の多さでも分かる。映画作りって、したことがないのだが、面白くないわけが無い、ってことは想像できる。続く
読了日:05月19日 著者:春日 太一
女流―林芙美子と有吉佐和子 (集英社文庫)女流―林芙美子と有吉佐和子 (集英社文庫)の感想
面白かった、関川夏央は初読。独特の論の立て方と進み方に最初は戸惑ったが、読み終わるとストンと腑に落ちている不思議さ。有吉佐和子の評伝を読みたくって購入したのだが、結果他の収穫もあったのは読書の功徳なのだろう。有吉佐和子を勧めてくれたのは母親で当時の有吉佐和子の活躍を眩しく目ていたのかも知れない。「恍惚の人」って言葉に感心して、よく口にしていた。関川夏央によると物語作家としては「出雲の阿国」あたりが最盛期でその後の中共傾斜、環境汚染、老人問題などは作品として低調であるとしている。続く
読了日:05月21日 著者:関川 夏央
週刊誌風雲録 (ちくま文庫)週刊誌風雲録 (ちくま文庫)の感想
大正に創刊されたと云う週刊朝日とサンデー毎日。週刊雑誌は戦後に相次いで創刊され、小生達はマンガも含めて週刊誌の申し子だった。自分のことを振り返ると、読書中の本をカバン、尻ポッケに忍ばせつつ、キオスクでは週刊誌とタバコを買うって生活がかなり長い間続いていた気がする。週刊誌の中にはぴあとかナンバーなども含まれていたのであるが。そう云う病いの様なものが、スマートフォンを所持した途端に消えて無くなった。要は面白い雑誌が少なくなっていたってことなのだが、紙媒体の後退を我が身で実践していたことになる。続く
読了日:05月25日 著者:高橋 呉郎
女二人のニューギニア (朝日文庫)女二人のニューギニア (朝日文庫)の感想
あんまり面白過ぎて、この手のルポ、ノンフィクションを他の作家が書いたらどうなるのかなぁ?なんてことを考えてしまった。関川夏央によると本作は文化人類学者畑中幸子を描いたノンフィクション風小説と捉えている。作者の見たままって形式だが、明らかに自分を戯画化している。作者の体験はどう考えても災難と呼んだ方が良いくらいで、招待した畑中女史も結構ヒドイ。災難と言える理由を上げると、電気無し、水道無し、道路無し、低地のネイティヴでも文明に触れたのが10年程前!、続く
読了日:05月29日 著者:有吉 佐和子
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