山田風太郎「斬奸状は馬車に乗って」小学館文庫。読書メーターと重複。
短篇集。半分は既読。「陰萎大将軍」って、まあ何と言うか、筒井康隆ではないか(笑)。中身も他の奴とチョット違う。確かに家斉、家慶、家定と続く三代中祖父、父が異常に子供が多いのに、この人だけ、実子無し。(ウィキペディアで確認)この事実が作者の構想の発端だったのでは無いか。そして慶喜嫌いの理由もその父の多産に置く。この告白には思わず唸り、感嘆。これぞ小説の醍醐味。本当はどうだった?なんて実はどうでも良いのだ。最後の「暗黒星」も星享の暗殺者が剣客伊庭家の跡取りだったと云う史実から構想されたに違いない。その膨らまし方が心地よい。結果、人間の業とか情念が浮き上がって来る。それにしても、山田風太郎作品には見事な位「幸福」とか「満足」と云う概念が出てこない。幸福、満足以外の目標を設定出来ない現代社会(小生はそう思う)において、これは大事な視点なのでは無いか。
短篇集。半分は既読。「陰萎大将軍」って、まあ何と言うか、筒井康隆ではないか(笑)。中身も他の奴とチョット違う。確かに家斉、家慶、家定と続く三代中祖父、父が異常に子供が多いのに、この人だけ、実子無し。(ウィキペディアで確認)この事実が作者の構想の発端だったのでは無いか。そして慶喜嫌いの理由もその父の多産に置く。この告白には思わず唸り、感嘆。これぞ小説の醍醐味。本当はどうだった?なんて実はどうでも良いのだ。最後の「暗黒星」も星享の暗殺者が剣客伊庭家の跡取りだったと云う史実から構想されたに違いない。その膨らまし方が心地よい。結果、人間の業とか情念が浮き上がって来る。それにしても、山田風太郎作品には見事な位「幸福」とか「満足」と云う概念が出てこない。幸福、満足以外の目標を設定出来ない現代社会(小生はそう思う)において、これは大事な視点なのでは無いか。