お店の名前も覚えていません。料理の写真も有りません・・広島の夜です。
娘夫婦が転勤で広島に来たのは1年前・・社宅から自分達のマンションに引っ越して僅かな期間しか経っていません・・
市内に有る支社へ毎日通う日々の暮らしの中で、気に入った飲み屋さんを見つけるのは中々難しいと思っていましたが・・そんな中では良いお店なのかも知れません・・
岡山から駆け付けたご両親とは私達も久々の対面です。
初めてと言っていい程、何十年ぶりかの広島の夜です。
二家族6人のお酒の入った居酒屋の宴は賑やかに始まり、2時間余り賑やかに終わりました。
唯一私のデジカメに入っていた映像です。何でも地元?の利き酒3種の試し飲みだそうですが、ビールを飲んでいた私にも「試して・・」と言われて「いや私は何を飲んでも解らないと思いますよ」と初めから弱腰に・・「それでも・・」と言われて飲んで・・恐る恐る変わる替わるチビっとお酒に唇をつけたのだけど結論は・・「ヤッパリ全然解らない」で降参いたしました。
後で娘から、お店で「広島牡蠣も用意致しますが・・」と申し出が有ったが「前日牡蠣は宮島で充分戴きましたので・・」と断ったそうですが・・一言私に言って呉れれば「マダマダ牡蠣が食べたいよ」と・・私も残念・・お店も残念・・食いしん坊、悔い辛抱です・・
解散してホテルへ戻った私達ですが・・妻の携帯に電話が・・「お父さん忘れ物したでしょう・・」「エッ?何?・・」「袋に入った・・アレ・・変なおつまみみたいよ」
宴会をした居酒屋で私が傍らに置いた儘、忘れて来たらしい・・まあおつまみで良かった、忘れ物出て来て良かった・・
旨いです、目の前に有ると、妻の目の無い所で、つい一つ口に放り込んで、、暫らくしがんでいます。以前噛んだガムより味が有ります・・噛めば噛むほどに・・は間違いなかった・・
旅行に行く時に家に忘れて出て来る、旅先で大事なものを忘れる・・今回の旅行で唯一の忘れ物がこのお土産のせんじ揚げ・・今、食いしん坊はホッとしています。
ところで、若い頃の話、記憶では40代頃の事です。
広島へ仕事できて数日、取引先の宿舎のようなところへ一人で滞在したことがありました。
夜は何処かで一杯やって帰るのですが、当時はスマホも無く(今も持っていませんが)初めての事で中々市内に好みのお店も無く、最終日・・偶然入ったお店が正弁丹吾と言うお店でした。
初めてのお店だったので何を注文したら良いか解らずに店内をキョロキョロ見回していたのですが、幸いその日お勧めのお魚が壁に張り出されていたので、中から瀬戸内海の方へ来たら一度は食べたいと思っていた魚「オコゼを下さい・・」と・・
ビールを持って来た女将さんが「オコゼでしたらお刺身が良いです・・頭と骨は唐揚げが良いと思いますが・・」「それで、お任せします・・」
やがて出て来たお刺身も美味しかった(昔の事で刺身の味は覚えて無い)のですが、ビールで喉を潤す内に、揚がって来たオコゼの唐揚げ・・大きさも手の平位のサイズで・・
これが絶品、箸で、黄金色に揚がったオコゼの頭を、バリバリと突き乍ら手頃な大きさに砕いた奴を、小皿のポン酢に浸し・・やおら口に放り込めば、舌の上でオコゼのこの上なき香ばしさと共に歯応え充分に砕け散り、ビールとの相性もバッチリで次いで身の付いた中骨、最後は尻尾と次ぎ次に平らげて・・骨、ビール、骨、ビールと遂に二本目のビールを注文・・その勢いで三本目をと、空のグラスを目の高さに・・振り向いて・・そこへ近づく女将「お客さん、ビールはその辺で・・」とやんわり嗜める・・私にとって初めてのお店、正弁丹吾にとっても初めての客・・若かった私がブレーキを掛けられて・・やんわりと「調子に乗りなさんな」と言われて「そうですね・・解りました・・」優しそうな女将の顔が微笑んでいました。
お勘定を済まして、女将さん「又今度、いらっしゃって・・」と自家製のポン酢を一本持たして呉れました。思わぬお土産を戴いて気分よく、私は夜遅く広島の繁華街を後にしました。
妻は今でも、その時私が持ち帰ったポン酢の味を覚えているようで、広島、正弁丹吾、ポン酢と連想するようです。私は広島、正弁丹吾、オコゼです。
広島商店街散歩の途中で、娘にスマホで検索を頼んだら正弁丹吾は直ぐに出て来たようですが、その場所からは、少々遠いらしく今回は行くのは諦めました・・でも今はスマホでも直ぐに出て来る広島の有名店らしいのです。新鮮な瀬戸内の魚料理、勿論オコゼの文字も乗っていました。
又いつか機会が有れば広島へ、正弁丹吾に、女将に、そしてオコゼに会いたい私です。
「食べないの、焼けたわよ」と今夜は焼肉と言っても、割引で150円位の豚小間切れ1パック、料理名人の手で見事に変身していました。「もやしが合うね~」と妻も満更でもない様で・・
ゴチソウサマ