随縁記

つれづれなるままに、ものの歴史や、社会に対して思いつくことどもを記す

持株会社による経営統合

2005-10-14 11:59:38 | 経済
最近、持株会社という会社名をよく耳にするようになった。
話題の村上ファンドが、阪神電鉄の株を40%近くも買い占め、阪神タイガースの上場提案をしたことで、阪神タイガースファンやら野球ファンから大ブーイングが起きて、マスコミをにぎわしている。
そこで、村上ファンドは、阪神球団を直接上場せずに、持株会社を設立して阪神球団を傘下におさめ、持株会社を上場させるという提案に切り替えている。

昨日(2005年10月13日)楽天がTBSの株を15%強取得して、突然共同で持株会社を設立して経営統合を持ちかけた。この話しと直接リンクしているのかどうか、村上ファンドも同時に7%程度保有しているという。

楽天の三木谷社長は、「メディアとネットの融合について昨年から検討してきた」と、TBSとの以前から提案の話し合いをしてきたことを強調している。
一方、TBSの井上社長は
「何の事前連絡もなく短期間に、大量に弊社株式を取得したことに、唐突な印象を受けている。少々心外だ」と述べている。
つまりは、話し合いは有ったが、TBSの状況認識が甘すぎたと言えるだろう。 

この「メディアとネットの融合」問題では、ニッポン放送株の大量取得によるフジテレビ支配を狙ったライブドアの先例がある。
楽天の三木谷社長は、「TBSを買収するのではないし、ファンドとも違う。友好的な経営統合を提案したい」と言っている。
しかし、手法の根本は、先例のライブドアと同じである。資本の論理であり、株式を公開している企業は、つねにこういう敵対的買収を想定しておく事が当然である。
TBSは買収などに対するもろさを以前から指摘されていた。TBSの大株主上位6社の合計でも、持ち株数は16.76%に過ぎない。最大株主の日本生命で僅かに4.12%である。
このような状況で、楽天は15%強取得している。さらには、村上ファンドが7%も保有している。

ニッポン放送の時のフジテレビの対応を見てきたはずなのに、TBSはなにをしてきたか。
さらにはネット事業者が急成長しており、いずれもが世界トップのタイムワーナという巨大なネットと放送メディアの統合を目指していることを認識できなかったのか。

楽天と話し合いをしながらも、世界のメディアの状況認識が不足し、従って真剣さがたりず、適当に処理しようと考えていた結果が、このような状況を招いたと思われる。
「株の大量取得について、何の事前連絡もなく唐突な印象を受けている、少々心外だ」と述べているのは、経営者として無能をさらけ出していると言える。

株式公開している以上、いちいち企業側に株の取得を打診する必要が無いことは自明のことではないか。
経営の独自性を貫きたいのであれば、安定株主を50%以上確保しておかねば不可能である。
大株主の経営者でない限り、つねに資本の論理で突然株の買い占めに合うことは避けられない。経営者の能力や努力が不足すれば、追い出されるのは当たり前の時代になっている。

今後も、このような株式の大量取得による経営統合戦略(M&A)が繰り広げられるだろう。
そして、その手法としての「持株会社を設立」が多用されるだろう。
現在進行している銀行の大型統合合併も、この持株会社(ホールディングカンパニー)を設立し、統合予定の銀行をその傘下に治めるという仕組みである。 

持株会社(もちかぶがいしゃ)とは、他の株式会社の株式を保有し、支配する事を目的とする会社である。ホールディングカンパニーとも呼ぶ。
本業を行う一方で、他の会社を支配するのを事業持株会社、他の会社の支配を本業とするものを純粋持株会社と呼ぶ。
一般に持株会社と云う場合、後者を指す。事業持株会社の場合は、持株会社とは呼ばず「親会社」と呼ばれることが多い。
また、持株会社の下で似通った事業を行う子会社を束ねる中間持株会社と呼ばれる形態もある(ソフトバンク株式会社がこれを採用している)。

日本にでは、戦前の財閥本社が純粋持株会社の形態を採っていたが、戦後の独禁法によって、純粋持株会社の設立は禁止された。
1997年の改正によって持株会社が解禁された。上場企業では、1999年に大和証券株式会社が商号を変更して、株式会社大和証券グループ本社が純粋持株会社となった第1号である。

近年は、2社以上の経営統合時にいったん共同で持株会社を設立して、その子会社となり、それから合併・再編する、という方法が取られることが多い。 


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