歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

姫沙参夜叉五倍子岨菜蛍袋

2009年07月23日 | 徒然 -tzure-zure-
この前お茶のお稽古に行った時 
 (→その時のブログ:「お茶再会」の巻

床の間に生けてあった茶花の中で、
ひとつ、
分からなかった(忘れちゃった)ものがありましたが



この ムラサキの花。


ブログに載せたのは とっても見にくい写真だったのに、
「それは○○では?」と ご意見を何個も頂き、

ようやっと、
調べがつきました。


正解は、



 姫沙参(ヒメシャジン)

でした。

  Adenophora nikoensis
  キキョウ科ツリガネニンジン属
  沙参(シャジン)とは、ツリガネニンジン(釣鐘人参)の漢名。
  姫(ヒメ)がつくのは、ちっちゃいから。

(写真の出典:oNLINE植物アルバムより)


どうやら、これでしょう。

、、たぶん。




実は

先生に花の名をお尋ねした時、

「それは○○よ!」と仰言った
(たぶん「ヒメシャジン」と仰言った)
のを、
パッ と訊いた印象で、


 「ヤシャブシン」


と、
記憶してしまっていたのです。


語感が似てるでしょ。


そして まんまと「ヤシャブシン」で調べたら、
そんなもの
そもそも 無かったのでした。


ただ、

「ヤシャブシ」

それならば、存在します。もちろん植物です。
(多分、この名前を脳裏にうっすら覚えていて、つなげちゃったんでしょう。)


でも 当の「ヤシャブシ」は、
「ハンノキ」の一種。花はいわゆる「毛虫花」。


  (写真の出典:wikiより)

 ヤシャブシ(夜叉五倍子)

  Alnus firma
  シラカバ科ハンノキ属  落葉高木
  英名:Japanese green alder

「五倍子」(フシ)って、
フツウなら絶対読めない謎漢字ですが、

「ヌルデの若芽や若葉などに ヌルデシロアブラムシが寄生してできる 虫こぶのこと」
で、
タンニンを多く含んでいます。
  黒色のインク(顔料)・染料、皮なめしの材料に用いられ、昔はお歯黒に用いられたそうです。
  染め物では

  「空五倍子色」(うつふしいろ)

  という色を作り出していたそうな。(なんて綺麗な名前!)
  その色は、こちら→空五倍子色(うつふしいろ)

ちなみにヌルデ(白膠木:Rhus javanica)は ウルシ科。
なので、まれにかぶれる人も居るらしい。要注意。




で、(戻って戻って;)

「ヤシャブシ」は 何でそんな名前なのか  というと、


「五倍子」は:
果穂に 同じく”タンニン”を多く含み、「五倍子」の代用として使われたことに
  その名をちなむ のだそうです。(by wiki

なるほどね。


さらに
「夜叉(ヤシャ)」:
これも、ある種 日常的な用語ではない、謎ワード。宗教用語です。

wikiでは:
「熟した果穂が夜叉にも似ていることから」と、サラリと書いてあります。

kotobankの「デジタル大辞泉」によると:
 《(梵)yakṣa(ヤクシャ)の音写》
  顔かたちが恐ろしく、性質が猛悪なインドの鬼神。
  仏教に取り入れられて仏法を守護する鬼神となり、毘沙門天の眷族(けんぞく)とされる。

だそうです。

、、夜叉に似てるって、言われても。。。




って、

wikiやら語源やらを辿っていると 話がずんずん逸れて行きます!が、


「夜叉五倍子」と 例のムラサキの茶花と

どうふんぞり返って見ても、

全然 別モノなのでした。


 *

では 何か?
ということで

候補に挙がったのが


  (写真の出典:wikiより)

  ソバナ(岨菜)

   Adenophora remotiflora
   キキョウ科ツリガネニンジン属
   

これは、「姫沙参」そっくりです。なにしろ属名が ”Adenophora" 、一緒ですもの。
というか、
むしろ、こっちのほうが、生けてあったやつに似てる、、、。

でも「ソバナ」ではなく「ヒメシャジン」と仰言ったのは、たぶん確実。(なにせ「ヤシャブシン」と語感が似ているもの。)


、、んーーー?


どっち?





ちなみに 「ツリガネニンジン」属(ゾク)の頭(カシラ)、
「ツリガネニンジン」御大は



これ。

  ツリガネニンジン(釣鐘人参)

   Adenophora triphylla var. japonica
   キキョウ科ツリガネニンジン属  多年草
   英名:Ladybells


 *


こうして見て来ると、やたらと「ヒメシャジン」周辺にだけは、詳しくなったような、
混沌として、わけのわからぬ 夜叉五倍子的地獄に落ちたような。

少なくとも
「ツリガネニンジン属」には、だいぶ愛着が湧いて来ました。
ついでに「ヤシャブシ」にも。




ツリガネニンジンは、、




ホタルブクロにも似ている。


  ホタルブクロ(蛍袋)

   Campanula punctata Lam.
   キキョウ科ホタルブクロ属
   英名:Bellflower  

 これは属名が「カンパニュラ」だから、「ツリガネニンジン」グループではないわけです。

でも


 (東京・仙川の森のテラスのそばで見つけたホタルブクロ。2007.6.10)

ちょこちょこ、似てる。


 *

そうして、


あれよあれよと言う間に、

どんどん繋がっていって、

果てしなくなってしまう。

ザ・植物連鎖。



さて、

結局あの花は、「姫沙参」だったのか、はたまた、「岨菜」なのか。


、、、エンドレス。



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2 Comments

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Unknown (baboo)
2009-07-24 23:46:10
ソバナに一票
つぼみの感じとか、葉っぱの感じとか。
写真で見る限りは。
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Unknown (ngch)
2009-07-25 01:00:34
清き一票を ありがとうございます

茶花って、よーく見るとちょっと違う園芸品種でも、
伝統的な綺麗な和名を使うような、習慣が、あるのでしょうか。そんな気がします。

ということで、「ほんとはソバナ」説が有力。
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