歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

[2013英国旅:2-3] The Case ~事件~

2014年08月02日 | 英国 -england-
英国2日目・ロンドン。午後早々。

数えあげれば大小トラブル続きだったこの旅の中で、最もショッキングな大事件は、

わずか2日目にして起きてしまいました。




Sloane Squareの駅から、徒歩にて。

表参道チックな、明るく瀟洒な大通り(その名も「King's Road」)を、てくてく。

さっき駅の売店で買ったサンドイッチを食べながら、
片手に『地球の歩き方』を、筒状に丸めて握って居りました。

目的地まで、徒歩10分か15分、そんなもんくらいかと思われました。


で、

角を曲がったら、急に人気の無くなった道に入りました。

片側はずーっと、なにやら広い敷地(Burton Court)の外塀が伸びています。

まっすぐ伸びる車道沿いには、高層アパートが連なって立っています。その足元には、
路上駐車の車がずらーっと停まってました。

そして、人の気配が、ほとんど無い。

私は『地球の歩き方』の地図を見ながら、もぐもぐ。てくてく。


と、そこへ。

前からふらふらっと、アラブっぽい顔立ちの、ちょっと背の低めの青年が近づいてきました。

で、

「○○○○(←なんつったのかわかんない)に行きたいんだけど、知ってる?」

って聞いてきた。

で、なんつったのかわかんなかったので、

「What?」だか「Pardon?」だか「Excuse me?」だかって言った私。

で、from スペインだって言う。

で、どこそこ知ってるか?って言われたけど、わかるわけなくって、

「わからないから、この地図見てみようか」みたいなこと言ったら、
その地球の歩き方をつかみ取ろうとしたから「いやおいおい、ちょ、待てよ」みたいな、

と、そこに!


「ヘイ・ユー!」

と、二人組みの警官が現れました。背後から。(歩いてきた方向から)

自分と同じくらいの背の、ひげ生えたダンディなおじさん(60くらい?)と、
自分よりずっと背が高くてがっちりしたブロンドの兄さん(30後半くらい?)。

白い制服着て、制帽かぶってた。

で、

後ろと横をがっちり挟まれた感じに。

ポリス曰く「コカイン持ってないか!?調べさせろ!」


「What!? What?」とか言ってるアラブ顔のスペイン青年。

「NO NO!」とか言ってるひょろけたジャパニーズ青年。

で、ポリス、まずスペインボーイが首から提げてたポーチみたいなやつを、ガッて開いて、中を調べる。くんくんとか嗅いだりしたりも。
パスポート見せろっつって、彼のパスポート見て、
「OK, Go!!あっち行け!」

って言って、スペインボーイを追い払う。(自分が来た、大通りの方に)

で、今度は自分。

若いでかい方が、

「パスポート見せろ!」っつって、首から提げてたパスポートバッグから
パスポート取り出させられて、見られて、
で、そこに入れてたお金とか「チェック」された。

次は
「バッグあけろ!」っつって、ショルダーバッグ開けさせられて、

中見せろっつって、見せさせられて、

パスポート取られて、「ジャパニーズ?」「イエス!アイム・ジャパニーズ・ガーデナァー!!」とか言う
やりとりがあり、

財布見せろってなって、財布取られて、中ばーって見られて、
バッグにぐいっと戻されて、

さらに
「それはなんだ!」って、茶封筒指差されて、「それ出せ!」ってなって、

オーマイガー、ユースホステルにおいてくればよかった、ポンド換金済みのきれいな現金・一式!

全部入った封筒を開けられて、ばーって見られて、ぐしゃって、バッグに突っ込み返された。


この時はもう全然、検分してそのまま戻したように見えてた。抜き取られたように見えてなかった。


で、

「モア・マネー?(もっと金あるか?)」とか言うから、

え~~?ってすげー困った顔してたら、年取ってるひげの方が「オッケーもういい」みたいに取り成して、


で、

ポリス「ここらへんはコカイン持ってるやつがいるから危ないんだ気をつけろ」みたいなこと言うわけ、で、

自分「あー、オーケーオーケー!ところで僕、チェルシーフィジックガーデンに行きたいんですけど」

ポリス「ああ?」

自分「こっちまっすぐで良いんですよね!?」(わたしは無実の善良なガーデナーですから、っていうテイで、平常心平常心)

「ああそうだ!ゴー・ストレイト!(まっすぐ行け!)振り返るな、ゴー!ゴー!」


ああ、はい、さようなら!


(ここまででたぶん数分の出来事)

たかたか早足で歩きながら、

ひや~~~


なんだったのもー、びっくりしたわーーー


ってどきどきヒヤヒヤしたまま、すぐそこまで(残り徒歩3分とか)来てたチェルシー・フィジック・ガーデンにたどり着きまして、




「あ~、着いた。ほっ」

として、バッグを開けて、チケット買おうと
財布をあけたら


「・・・・・!!!!」


マネーが、ノーー!!!!!!







慌てて財布全開、まじで無い!「帰りの交通費に」って入れておいた日本円も無い!

クレジットカードとかはある。(少しほっ。でもそれを上回る戦慄でガクブル蒼白止まらない)

茶封筒は?

くしゃくしゃ、中身は、、、空っぽ・・!ギャーーーー!!!

今回持ってきた全マネーじゃなかったかしら・・・今日出がけに、全部こっちに入れたんじゃ、、、

いや、ちょっと待て、たしかこっちに、、、と、手帳に挟んであったもうひとつの封筒を見ると、

ああ、こっちはあった。綺麗に残ってる。。。。けど、、、半分くらいに分けちゃったよね、、、。。。


今回この旅のためにこつこつ貯めてきた旅資金。その額、ウン十万円、、、、、

ごっそり持っていかれてしまったのでした。


たぶん、たしか、30万円以上分、、、


 ・・・にせポリスに!!!!



くらくら、来た。白目剥いてた。





チケットを買って入っていく穏やかなお客様たちに続いて、よろよろ、と。


チケット売り場の兄さん(しゅっとした美しい黒人の方)に、蒼白な悲痛な面持ちで(そう演じなくても自動的にそうなってたと思うけど)

「すみません、、、今すぐそこでお金盗まれたんです、、、ヘルプ・ミー、、、」

って、助けを乞うた。


えっ!ていう顔して、とりあえずこっち座ってて、っつて、ジョンを呼んでくれた。

ジョンだったっけ。ジョージだったか。

ここの偉い方。

太目のやさしいおじさん。


で、ジョン(たぶん)が、「本物の」ポリスを呼んでくれた。


「ポリスが来るまで、中を見物してきてごらん。」って言ってくれたから、

今のこの心境で見てもなんも入ってこねーだろーってくらい力なくへろへろ、だったけど、

見物させてもらいました。

「ポリスが着いたら、電話するから」って、ジョン。

いや、やっぱりジョージだったかしらん。




というわけで、

暗澹たる絶望感と悲壮感を引きずりながら巡った Chelsea Physic Garden(薬草園)は、

とても学びの多い、よく出来てるガーデンでして、、、本気でバイタリティある状態で見物できたらと思うと、余計に悲しいったら。









光が燦燦と美しいのが、また辛い。




影もまた、美しい。



あー、勉強になるわー(空虚)。



あー、これもなるほどだわー(空虚)。




細やかに見たら、楽しすぎて嬉しすぎて爆発しそうな、ネタ満載のガーデンだった。



あれとか、



これとか、



こんなのとか


(生きてる柳を、生えたままゲートに仕立ててる)



いろいろ、知恵技があるのねえ。


て、感心しきり。


ああ、




事件に遭ってなければ、どんなにか・・。




そこらでくつろいでる皆さんがもう幸せそうで。



同じ光の下に居るのに、自分はどよ~んと黒い影の傘の下にいる気分。

「同じようにここを目指して来たのに、この人たちは何も盗まれたりせずに無事に来られて、良かったですね・・だのに俺は。。。。」みたいな卑屈な気持ちまで沸いてしまうし。

やりきれなくて早足で周ったので、時間が余って、
テーブルつきのベンチに腰掛けて、
ハーア、とか、ため息ついて、呆然としてた。


そしたら、
向かいに同席して、黙ってくつろいでたおじさんが、「その格好を見るに、君は庭師かい?」みたいなこと聞いてきた。

力なく「イエ~ス、アイム・ジャパニーズ・ガーデンデザイナ~。。」とか言って、ちょっとだけ会話した。今ホリデイだとか、そんなこと。


そしたら、君の写真撮ってあげるよっつって。

あーーーありがたいけど、いま、全然明るい表情できないよ。I'm sadなの。

って言って撮ってもらった写真が、



力ない微笑。

この写真が、実は
この旅で唯一、自分の写ってる写真だった。
よりにもよって。

切ない。




ポリスが到着。本物の。

明るいおばさんと、若くて寡黙な坊主頭のイケメン兄やん(マイケル)。


あんまり人が来ない、スタッフゾーンみたいなところの丸テーブルに座って、
調書をとられる。


素敵な木陰。ぴよぴよ。ぴよぴよ。素敵な午後の昼下がり・・・。



人生初・調書。人生初・警察沙汰。まさかここLondonでデビューするとは。

ことこまかく、説明していく。もちろん英語で。

おばさんの方が、独特のなまりがあって、ちょっと聞き取りづらい。
私はスコットランドの方の出身だって言ってたような。

で、

「あなた、それは、にせ警官(Pseudo Police)よ!」だって。

私「スード・ポリース!!? オーマイ、ガー・・・」

で、

「そのスペイン人と名乗った青年も、グルだわ!きっと!」

ちくしょー、あいつもかーー!!





本物は、制服も違う。(本物は重いネイビーカラー。にせものが着てたのは白シャツで、交通整理員が着てるやつだったぽい。)

まだ来て2日目だよー。警察の服装なんてわかんないよ~。


で、本物は必ず手帳を見せるんだって。
警察手帳には、本物の紋章がついてて、所属と顔写真が入ってる。
おばさんの方には、あらかわいい、小さな娘さんとの写真が。「オウ、キュート!」「サンキュー*」ほのぼの~*

イギリスの警察の手帳見せる手順とか、知らないよ~。


とにかく、一生懸命、説明する。というか、細かく聞かれるので、答える。
自分が何言ったとか、相手がどう言ったとか、かばんは向こうが開けたのか?とか、
「I said, なんたらかんたら、and then,He said, なんたらかんたら!」

みたいな。臨場感あふれる感じで。




最近は便利な世の中。現場を、Google Mapで見てみましょう!

ここらへんです!>>☆☆☆

久々に見たら、思い出すわ~この道・・・。食べかけのサンドイッチ・・。丸めた地球の歩き方・・。


・・・くっそーーー!!!






ウン十万円くらい盗まれたっぽい、ってことを言ったら、「ヒャー~~~!!」って、おばさんポリス息呑んでまじ驚愕してて、

なんでそんなに現金持ち歩いとんねん!みたいな。犯人たちもびっくりしたろうね~、みたいな。

ほんまやね。ユースホステルに置いとくのが心配だったとか、間違ってたね。

素直にカギを買って、施錠しとけばよかったのに、カギ代ケチったのがいけなかったね。


まあ、命が無事だったのは幸いだったし、
パスポートもクレジットカードも無事だったのも、幸いだった。

学び。これは学び。神様が「気をつけなさいよ」ってメッセージくれたのかも。


しかし、

ちょっと痛すぎ・・・。



で、

調書つくるのに、一時間以上かかった。


Victim(被害者)カードをもらった。



ほんものポリスは、いい人たちだった。


そして、昼下がり。






ジョージ「この先、じゅうぶん気をつけるんだよ」

ミー「イェア~、もちろんさ、超テイクケアだぜ、ジョージ(力ない無理矢理微笑)」

ジョージ「良い旅を!(ウインク)」

ミー「サンキュー、ソーマッチ!」



チケットオフィスの美黒人スタッフさんも、帰り際、にこっとウィンクをギブミー。

と、

そんな感じで、素敵なChelsea Physic Gardenを後にしました。





「あ~~~、この先、、、どうしよう、、、」


ショルダーバッグを、ぎゅーっと前面で握り締め。

旅のプラン立て直さなきゃ・・・

暗鬱たる気持ちで、とりあえず向かったのは、




サーペンタイン・ギャラリーの夏季限定パビリオン。

2013年は日本の藤本壮介デザイン。



遅すぎた。もう閉められちゃってた。



普通なら、中がカフェ仕様。

まあいいか、、お金無いし(リアルに)。

力なく、



植物見るのは、タダだものね・・・。



いい香りがしてた。アメリカキササゲ、かな。


それから、公園をてくてく。



嗚呼。

もう黄昏時。



黄昏が、まじやばい。

いつもの20倍沁みる。



のどかなボートの民。

やばい。別世界の住人すぎる。




渋い逆光モニュメント。

なんだろうあれ。遠すぎて近づく元気が無い。




不思議オブジェ。

なんだろうこれ。石?



石か~。

なんのオブジェか。

どこかに書いてあるのかな。近づいて調べる元気が無い。


公園を出る。



駅への大きな通り。

なんか高級感バリバリ。


そして



舞い戻ってきました、ユースホステル。

疲れた。

色々ありすぎた。



確か夕飯も食べずに、そのままばったり。






翌朝からは、

心機一転!くよくよしてる場合じゃない!




レンタカーを借りて、イギリスじゅうを駆け巡ります!

まずはコッツウォルズ地方へ!!


早朝、雨とか雷とか、すごかったけど!

出かけるときはさらっと晴れてくれました。


もう恐い、もー、ロンドンやだ、都会やだ、もー。早く田舎に行きたい、もー。



超警戒態勢でメトロに乗り。



ヒースロー空港に行き。

空港そばのレンタカー屋で、カーをレント。


いざ、
愉しい旅の、リ・スタートです!!

まさかこの時借りたレンタカーが、ネットで事前に予約したやつから「より良いやつ」に変更されてて、最後に3倍の値段を請求されることになるとは、この時は露ほども気づいていなかったのでした。






 >>続く。>>

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