NPO法人さなぎ達ブログ

横浜市寿地区や近隣地域を中心に社会的生きづらさを抱えている人々を対象としながら活動を行っているNPO法人です。

神様と文通(byふらここ)

2012年04月27日 | ふらここ
 「さなぎの家」でお茶を飲んでたら、
五十がらみの眼光鋭いおじさんが前に座った。

 「ねえさん、このへんに住んでるのか?」

 私はねえさんどころか、ばあさんと呼ばれても
仕方のない歳なのだが、ここの男達は女性に対する
礼儀を心得ているらしい。

 「うん、ここから歩いて20分くらいのとこ」
 「そうか。なんか仕事してんの?」
 「まあ、少々」
 「どんな仕事?」
 「机に座って、ちょっと文章を書いたりとか……」
 「簿記か?」
 「……そんなものかな」
 「そうか……。なあ、ねえさん、俺と文通しないか}
 「文通って……どんな手紙書いてくれるの?」
 「おれはずっとカジノで働いてきたんだ。
 トランプの“手”が透けて見えるんだよ。
 じつは神様なんだ」
 「神様……」
 「それをちゃんと書き残しておきたいと思ってさ」
 「おにいさんの仕事は、ギャンブル? パチンコとか
競馬とか競輪もやるの?」
 「いや、カジノのカードだよ、俺は。
 競馬とか競輪は、ノミ屋の胴元もやったけど、
おれはやっぱり神様だからな、カードだよ。
 新宿の歌舞伎町で生まれて、それからずっと。
 フィリピンなんかも行ったけどな。
 敗けたことないから」

 神様は勝っても貯金なんかしなかったらしい。

 「ねえさん、読んでくれるか、俺の手紙」
 「はい、読ませてもらいましょう」
 「感想、くれよ」
 「はい、必ず」

 というわけで、「さなぎの家」経由で文通することになり、
 彼と私はお互いの名前を書いた紙を交換した。
 彼の名前の上には、しっかり「神様」と肩書きがついていた。
 私はこの文通によって、カード賭博の神髄を知ることになるらしい。

 
 ああ、海が見たいなあ……。

 

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