NPO法人さなぎ達ブログ

横浜市寿地区や近隣地域を中心に社会的生きづらさを抱えている人々を対象としながら活動を行っているNPO法人です。

「さなぎ達」とは

日本三大寄せ場の一つである、横浜市寿地区、寿周辺地区を中心に、路上生活者及び路上生活に至るおそれのある人々が、自ら自立に向かいやすい環境を整える「自立自援」を主な目的とし、メンタルを一番大切にしながら「医・衣・職・食・住」の各方面で活動しているNPO法人です。

寿町の七夕

2013年07月25日 | ぽん
7月3日(水)寿町の小さな公園(寿児童公園)にて毎年恒例の「七夕まつり」が地域主催にて開催されました。寿町のおじさん達、寿福祉センター保育所の子供たち、他の施設の方々、勿論「さなぎの家」「てふてふ」も参加させていただき、利用者さん、ボランティアさん、職員、用意した竹へ各々の願望、夢、希望を書いた短冊を児童公園の柵へ・・「酒をやめたい」「家族を持ちたい」「夏休みが一ヶ月欲しい」「彼氏ができますように」「痩せたい」etc・・一方保育園の子供たちの純粋な夢に満ちた短冊と共に、そっと飾らせていただきました。

振り返れば一年前、「さなぎの家」の利用者?いやいや主人公!であった「F君」の「早くさなぎの作業所ができますように・・」と力のこもった字で書かれた短冊を思い出し、そういえば「F君」は本人の希望もあり、「てふてふ(就労支援B型作業所)」の第一番目の利用者のはずだったよなぁ・・作業所が出来たら一緒にやろう!と強く約束を交わしたよなぁ・・彼は知的障害、精神障害、てんかん、聴力も障害があって、パニックは激しいし、暴れるし、家族とも縁遠く、入れる施設も無くて「寿町」しか居場所が無くなって、不慮の事故であっけないほどに若くして天国へ行ってしまった。

純粋な「F君」の書いた短冊と「子供たち」の短冊がオーバーラップして、なんとなく感慨にふけってしまいました。

まぁ・・せっかくなので記念写真を撮ってもらい、夏の暑さに負けぬように・・願いが届きますように・・。そして「F君」の屈託の無い笑顔を思い出しながら・・。



講演会に参加して

2013年07月04日 | さなぎ達理事長 山中 修
7月2日、仕事帰りに寿町勤労者診療所の越智先生の講演を聴きに行った。
最近、薬屋さん主催の勉強会や講演会はあまり行かないのだが・・。
今回のは寿地区の「ろばと野草の会」主催。
講師の越智先生は私よりも10歳ぐらいお若い、元気な精神科医。
ということで、興味深く出かけた。
長~いタイトル「ここ15年の寿町における精神障がい者の変遷。あるいは、社会情勢や精神科医療福祉のや支援者の変遷」。

開港記念館に200人くらい満席!
熱気を帯びたお話。
サマリ-は講演タイトルに集約されている。
○ここ15年の寿町における精神障がい者の変遷
 いわゆる寿のの名物人間が減った。 昔の寿には荒くれ者も多く、広いスペクトラムで、いろんな変わり者が居た。 「精神疾患の豊かさ」みたいな、患者さんから苦痛も楽しさももらえた、みたいな。
最近は他の地域から役所事情で送りこまれて来る人達が多い。

〇社会情勢や精神科医療福祉の変遷
世界の精神科医療自体も大きく変わった。グローバリズム、ネットによる情報のスピード化は「標準化」を招き、標準からわずかにはずれれば「異常」と診断されがちな診断基準で人の“正常性”が評価され、投薬の対象となる。
また、生保バッシングのごとく、ある種の極右化現象は、「自立化」や「社会適応」のかけ声の号令下に社会全体が大きくその方向に動いている。この流れの中で、不適応は精神障がいに、発達障がいはその人の一生を通じての縦軸レッテルに、人格障がいは人間関係としてその人の横軸レッテルに。人は縦横、縦横無尽にレッテルを貼られて生きざるをえなくなっている。

〇支援者の変遷
ことぶきで変わらないこと:①あらゆる社会的マイノリティが住める場所②ほどほどの距離感の「自閉的交流」③越冬や人民パトロールや炊き出し④支援者同士は現場で仲が良い。
昔から、寿は仲間同士のつながりがあり、いろんな職種が垣根を越えて、みんなが「よってたかって」「もれなくついてきて」、酒や煙草で心の穴を埋める代わりに人々がその穴を埋める伝統がある。
「当事者と支援者」の力関係、行政からの支援について、いわゆるアメリカ的な合理的・実証効率的支援方法の危うさを感じる。つまり、各人に対して個別の、上から目線の支援対策になりがちではないだろうか?
各人ではなく、まず「人とはなんだ?」から 伴走的支援方法を組み立てる必要性がある。


このような、支援体制をことぶきに関わる人達が意識する必要があろう。

というような、内容でした。

さなぎを始めて、13年、ポーラのクリニックを始めて8.5年。
ある種の疲労とマンネリズムを感じはじめていた小生の頭には、新鮮な響きの基調講演であった。
自分の立ち位置、さなぎの立ち位置、を改めて感じ、帰路についた次第である。

ことぶきに関わらない方々には分かりづらい内容で恐縮ですが、こんな変遷のご紹介もたまには必要と思って投稿しました。

おいでいただくと実感としておわかりになると思います。
社会勉強のためにもなります。
ぜひ、寿に来て下さい。見てください。自分らしく生きるためのヒント、社会に自分の居場所を見つけるための糸口が見つけやすい町です。