とはずがたり

論文の紹介や日々感じたことをつづります

腸内細菌における遺伝子操作が可能になった

2020-03-13 16:50:15 | 免疫・リウマチ
近年の腸内細菌叢研究の進歩は著しく、腸内細菌叢が正常な生体機能調節を担っているのみならず、様々な疾患の原因にもなることが次々と明らかになっています。このような腸内細菌叢の役割は、当然それぞれの腸内細菌が作り出す分子の作用が基礎となっているわけですが、実は個々の腸内細菌と、腸内細菌叢が産生する分子との関係性は必ずしも明らかになっているわけではありません。このような研究が難しい理由の1つは、腸内細菌における遺伝子操作が難しいことにあります。特に嫌気性菌であるClostridiumおよびその関連であるFirmicutes門の嫌気性細菌では遺伝子操作が殊に難しいことが知られています。この論文で著者らはCRISPR-Cas9システムを用いて10の分子(trimethylamine, 5-aminovalerate, tryptamine, indole propionate, isovalerate, 2-methylbutryate, isobutyrate, isocaproate, propionate, and butyrate)の産生を特異的に欠損したClostridium sporogenesの作成に成功し、実際、遺伝子変異型細菌をgerm-freeマウスの腸内に移植した際に特定の分子が欠損していることを示しました。この研究結果は腸内細菌叢の生体制御機構の解明に役立つのみならず、個々の分子の生理的・病的役割を明らかにするために極めて有用であると考えられます。 
Science. 2019 Dec 13;366(6471). pii: eaav1282. doi: 10.1126/science.aav1282.
Depletion of microbiome-derived molecules in the host using Clostridium genetics.


最新の画像もっと見る

コメントを投稿